23 二つの目
23 二つの目
王都 ダード公爵家 書斎
ダンッ!
「一体なんなんだ?!!
大臣の私に対するあの態度は!」
国王の弟にして王位継承権2位の
ダート公爵は自身の机に
怒りをぶつけていた。
しかし、氷のように冷たい目で
公爵を見つめる老年の執事が
「確かに、失礼でしたな!
ですが、それも後少し!」
公爵はその執事を睨むように
「ホントに帝国は
あの件だけで、俺を国王に
できるんだろうな!?」
と威嚇するように聞くが
執事は冷静に
「ご安心ください!
もう試験的な魔物が
活動中です!」
とだけ答えた!
「ふんッ!」と
公爵はいまいち
釈然としないながらも
もうすぐ、自分の物に
なるであろう王都を
見下ろした。
エンロー手前の森の中 夕方
カラッパ!カラッパ!(蹄の音)
ガラガラガラ!(車輪の音)
ザ!ザ!ザ!ザ!ザ!
(たくさんの人の足音)
「タダシ様~!
命を救って頂いた上に
商品まで・・・
ありがとうございます~」
とベルさんの奪われた商品を
返してあげたら
「い、いや、ベルさん
・・・当然ですよ!」
と凄い勢いで感謝された。
盗賊を討伐した俺たちはベルさんを
馬車に乗せ、一路目的地を目指して
いた訳だが
「それにしても凄い!
お強いお仲間に!
この揺れない馬車に!
私の知らないポーションの数々!
しかも、あの伝説のトシコ様の
お弟子様とは~!いやぁ~!!
是非、エンローに着きましたら
このベルにすべて、
お任せ下さい。
どんな事でもお引き受け
致します。むふー!!!」
とベルさんは鼻息荒く
俺に近づいてくるが
「だ、大丈夫ですよ!
そ、それに俺は錬金ギルドに
納品に行くんですから!」
と近づくベルさんを抑えるように
俺がなだめていると
馬車の後ろでテンが
「ね~!ご主人様!
こいつら、ホントに
全員連れてくの?
このスピードじゃ、
今夜中には着けないよ!」
と馬車の後に追いてくる
あのキーモを先頭にした
100人近い盗賊達を見て言った。
「「「「・・・・・・・」」」」
(うわ~・・・こいつら
大人しく追いて来いって
言ったから一言もしゃべんないけど
目が凄い睨んでくるな・・・)
と思うが、やはり
ここは日本人!
「で、でも、さっき走らせたら
20キロ位から離れてきただろ?」
と俺が返事をすると
ラムが
「そうよ!奴隷は主人から
勝手に離れると魔法契約違反で
奴隷紋が発動して死ぬのよ!
第一、あいつら高く売れるって
言い出したのってテンじゃん!」
すると、テンは不貞腐れ
「だってさ・・・
そろそろお腹も空いたし・・・」
と片脚をプラプラさせるが
助け舟かのように
「ん~・・・それなら~
ちょっと、計画を変えて~
今夜はこの辺りで~野営して
明日早く出れば~着きそう
ですけどね~」
とモーが悩ましげに
そして、余りにも
ムチムチと言うので
俺はかぶせ気味に
「そうしよう!」
と野営することになった。
「じゃあ、ご主人様!こいつらは
300メートル位先で明日の朝まで
座らせとくよ!
飲み物は
この安っすいポーション飲ませて
食い物は洞窟にあった食料を
食わせていいんだろ?」
「ああッ!頼んだよ!テン!」
と俺は盗賊はテンに
任せて馬車から降りて
食事の支度を始めた。
「あ、あの、タダシ様!
何かお手伝いしましょうか?」
とベルさんが聞いてきて
くれたので
「そうですか?
じゃあ、この野菜を
これで炒めていただけますか?」
と俺は予め切っておいた
キノコと干し肉、
それとキャベツような野菜等を
空間魔法で取り出し
ゴマ油ポーション(キムチ味)
を渡した。
「これで、炒めれば
よろしいんですね?
分かりました。」
じゅ~!
とベルさんは炒め始めた!
(おぉ!
ゴマ油とキムチの
良い匂いがする・・・)
と一人匂いを嗅いでいると
「ご主人様!
もう一品はこの材料でいいの?」
とラムとモーが旅の途中で
狩ったウサギの魔物の肉と
スイカのような甘い大根を
切ろうとしているので、
「ああッ!これで頼む!」
と俺は
オニオンポーション
(ニンニク入り)
を渡し、こっちは
スープにしてもらった。
(この世界のパンは
固いからどうしても
スープがいるんだよね)
とか思っていると
「置いてきたよ~!
あいつらも黙ってメシの支度
してた~!」
とテンが帰って来た。
ふと、先に行った盗賊たちの方を
見ると、煙が上がっている。
「ああッ!ありがとう!
ちょうど、用意が出来たから
夕飯にしよう!」
と俺たちはベルさんも
火を囲んで、普通に食べ
そして、ラム達を外に残し
ベルさんと馬車で寝た!
(さすがに、他人がいて
ヤル気にはなれん!)
だが、事件は深夜に起きた!
「ご主人様!ご主人様!(小声)」
とラムが寝ている俺の体を
揺り起こした!
「・・・んッ・・・どうした?」
「盗賊どものいる方向が
何か様子がおかしいよ!
今、テンが見に行ってる!」
と聞いて
ガバッ!
と俺は慌てて飛び起きた!
まだ、イビキをかいている
ベルさんの横を通り抜け
馬車の前方から目を凝らして
見るが
(真っ暗だ!・・・そうだ!)
とギルマスに言われて作った
眼鏡を取り出した。
タダシメガネ:タダシしか使えない
望遠・赤外線・暗視など
と凄い機能満載だ!
作り方は単純で
フレームを要らない魔鉄で作り
レンズにこれらの効果のある
丸い形のポーションを埋め込んだ
だけだが
(・・・望遠はダメだ・・・
赤外線・・・んッ?
なんか全員で暴れてるな?
殴り合ってる?
・・・しかも人数が
増えてないか・・・)
と思っていると
「ぐあ~・・・」
「ごあ~・・・」
「なあ、ラム!
何かうめき声が聞こえるけど
・・・なんだろうな?」
「うめき声?
あ~確かに聞こえるね!
でも、ご主人様が大人しく静かに
してるよう命令したから
声は出せないはずだけど・・・」
俺はより見やすいように
暗視モードにすると
カーブを曲がって
全速力でこっちに
走ってくるテンの姿が
「テンだ!しかも後ろは
・・・えッ?」
テンの後ろには盗賊たちが
全員こっちに必死な顔で
走ってきている。
「やばい!
盗賊にテンが追われてる?」
だが
「・・・ろ~!」と
テンの声が聞こえてきた。
「待った!テンの声が・・・ろ?」
「ろ?~って何ですかね~?」
さらに近くに来たテンが
「後ろ~!」と叫んでいる!
「後ろ?」と
俺が後ろを振り向いた。
そして、その俺の動きに
吊られるように
毛布に包まったままの
寝ぼけ顔のベルさんも含め
みんなで振り向くと
馬車の中を覗くように
巨大な光る目が二つ
俺たちを睨むように見ていた。
「「「「・・・・・・・・」」」」




