第78話 竜との闘い
焦げた片腕を振りつつ、俺はじっくりとドラゴンを観察する。
接近途中だったドラゴンは再び距離を取っていた。
ヘリポートの端まで退避し、そこで翼を上下させて飛行している。
ゆっくりと旋回しながら俺達を見下ろしていた。
たまに炎を吐こうとするも、俺の猟銃を目にした途端に中断する。
露骨に距離を取っているのは明らかであった。
残った片目は憎々しげに俺を睨んでいる。
さすがのドラゴンでも、片目を潰されるという事態に警戒しているらしい。
迂闊な接近は致命的だと理解したようだ。
(猛獣だが、それなりに知恵は回るようだ)
あの分だとまず近付いてこないだろう。
炎を吐く瞬間を狙われることも察している。
俺としては、痺れを切らして突進してくれるのが理想だった。
両目を破壊すればこちらの独壇場だ。
いくらでも追い打ちができる。
(どうにかして接近を誘うかね)
思案しつつ、俺はミアナに指示を送る。
「あいつの翼を狙ってくれ。牽制になればそれでいい」
「分かった」
頷いたミアナがすぐさま魔術を放った。
追尾式の光弾が高速でドラゴンに迫り、右側の翼へと命中した。
軽い炸裂音が鳴ってドラゴンが僅かに怯む。
その体勢が傾くも、すぐに復帰した。
神経質な咆哮は苛立ちを表しているのだろう。
「ふむ……」
俺は飛行するドラゴンを注視する。
魔術の命中した翼は、鱗が若干剥げていた。
内側の肉も少し焼けて出血している。
魔術の効きは悪いようだが、まったく通用しないわけではないらしい。
何度も同じ個所に当てられれば、それなりの成果を期待できるのではないか。
(片目と翼を破壊するのが妥当だな)
観察を終えた俺はそう結論付ける。
絶望的な相手かと思いきや、意外と勝ち目がありそうだった。
少なくとも殺せるだけの手段は揃っている。
決して万全ではないが、悪くない部類だろう。
過去の仕事では、これより酷いシチュエーションだって経験している。
振り返っても自殺行為に等しい行為を繰り返していた。
それらに比べれば気楽なものである。
飛行能力を持った火噴きトカゲを駆除するだけだ。
幸いにもドラゴンは完全にキレている。
撤退は視野にないようで、ここで俺達を殺し切るつもりなのが見て取れた。
こちらとしては実に好都合である。
下手に逃げられると後が面倒だ。
可能ならさっさと仕留め切りたい。
あいつを倒さなければヘリが手に入らないのだから、気合を入れていこうと思う。




