表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮探索紀行 ~世界一の高層ビルが鬼畜ダンジョンになったらカオスすぎた~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/89

第75話 脱出の糸口

 半壊した扉を蹴り開いて、俺達は屋外プールのスペースへ踏み込んだ。

 嗅ぎ慣れた血の臭いが漂う。

 そこに腐臭が混ざり込んで素晴らしいコラボレーションを披露していた。


 もっとも、室内ではないので随分とマシだろう。

 絶えず吹き抜ける風のおかげで、一般人でも辛うじて耐えられそうな臭いとなっている。


 辺り一面に臭いの原因である死体があった。

 スプラッターな残骸がプールの水を赤く染めている。

 それら一つひとつが見事なまでに凄惨な有様を形成していた。


「へぇ、いいロケーションじゃないか。死体がなければ満点だった」


 俺はショットガンを弄びながら言う。

 血と肉片のせいで足元が滑りやすい。

 よく見るとモンスターの死骸も含まれていた。

 原形が判別できないほど破損しているものも少なくない。


(この触手や爪は、イーサンなら俺に移植できるのか?)


 頼み込めばやってくれそうな気もする。

 ただ、さすがにエイリアンみたいな姿になるのは遠慮したい。

 たとえ脱出したとしても、モンスターと誤認されて撃ち殺されてしまいそうだ。


 死体を蹴飛ばしながら歩いていると、背後を進むミアナが警告してきた。


「気を付けろ。アンデッドとして蘇る可能性がある」


「分かっているさ。モンスター共の習性はそれなりに理解している」


 軽口で応じていると、そばの死体が飛びかかってきた。

 上半身だけで跳躍して、首筋に噛み付こうとする。


 俺はその口にショットガンの銃口を突っ込み、引き金を引いて発砲した。

 死体の頭部が爆散して、落下した身体が痙攣を始める。

 それを踏み付けた俺はミアナにウインクした。


「な? 俺だって学習するんだぜ」


「そのようだな」


 苦笑したミアナが魔術を放射する。

 カーブを描いた雷撃が、俺の死角にいたモンスターの腕を焼き飛ばした。

 接近には気付いていたが、先に倒されてしまった。

 さすがは凄腕の魔術師である。


 ミアナの技量を見届けつつ、俺はイーサンに話しかける。


「ドクター、何か分かったかい?」


「死体の何割かは銃殺されている。生存者同士で殺し合ったらしい。脱出手段を前に争いが起きたようだ」


「そいつは災難だな」


 概ね同じ見解であった。

 生存者達は脱出用のヘリに殺到し、搭乗可能な人数の問題からトラブルになったに違いない。

 そこにモンスターが登場し、カオスな状況で戦うことになったのだろう。

 逃げ場のない場所だからさぞグロいことになったと思う。


(ここで奪い合ったとなると、ヘリはもう残っていないかもな)


 最悪、ヘリの残骸でもいい。

 せめて機内にパラシュートがあれば嬉しかった。

 リスキーだが、最終手段として確保するのはありだ。

 スカイダイビングで脱出することも視野に入れておきたい。

 真面目に地上までのフロアを踏破するパターンと比較した場合、意外と馬鹿にできない案だろう。


 俺は鉄柵越しに下を覗き込む。

 明かりの少ない夜の街が広がっていた。

 無数の何かが蠢いているのが見える。

 目を凝らせば、それらがモンスターであるのが分かった。


 付近に警察隊の姿が見えない。

 周辺一帯は既に壊滅状態となったようだ。

 軍はどこかで防衛線を張っているのだろう。

 もしかすると、突入の機会でも窺っているのかもしれない。


(地上も地獄と変わりないな)


 自嘲気味な思考に傾きつつ、俺は淡々と進んでいく。

 時折、モンスターを始末して、使えそうな物資を拾った。

 そして数分後にはヘリポートに到着する。


 ヘリポートには惨殺死体が散乱していた。

 まあ、これはもはや見慣れた光景なのでどうでもいい。

 綺麗な場所の方が違和感を覚えるような状態なのだ。


 肝心のヘリだが、そこには二機ほど残されていた。

 一方は端で横転していた。

 機体が大きく陥没して、白煙を上げて沈黙している。

 故障しているのは一目で分かった。


 もう一機は無事のようだった。

 しっかりと着陸した状態で放置されている。

 若干の返り血が付着しているも許容範囲だろう。

 ちょっとしたペイントと思えばいい。


 苦労の末、俺達は無傷のヘリを見つけた。

 本来ならガッツポーズでも決めたいところだが、実際は素直に喜べない。

 その原因が前方に君臨していた。


「ハハハ、最高だな。ここでボスのお出ましかよ」


 俺の笑う先では、鱗に覆われた巨躯が滞空していた。

 ヘリポートの上を陣取ったそいつは、爬虫類の瞳で俺達を見下ろしている。

 その眼差しに友好的な色は欠片も感じられない。

 今にも襲いかかってきそうな凶暴性を隠そうともしない。


 俺達が対峙したのは赤色の竜――つまりドラゴンであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ