第57話 進む生存者達
その後、準備を完了した生存者グループはカジノフロアを発った。
脱出を目指してヘリポートへと移動を開始する。
とは言え、これだけの大所帯だ。
そう簡単に移動できるものではない。
事前の話し合いの結果、十人組の班を八つ作ることになった。
全体が列になって動くのではなく、いくつかの班を作るのが良いと判断されたのである。
それなら不測の事態の対応もしやすい。
統率が取れずに全体が一気に破綻するパターンは避けられる。
いくつかのグループは十人に満たないので総勢七十人前後だろう。
互いが視認できる距離を維持しつつ、班ごとに同じルートを進んでいく。
(まあ、しばらくは安全だがね)
缶ビールを飲む俺は最後尾――すなわち八つ目の班として行動していた。
ここのメンバーはきっかり十人だ。
ミアナとイーサンもおり、異世界の騎士や魔術師がほとんどだった。
戦力としてはかなり高めと言えよう。
背後からの強襲を押さえ込む役目があるので、メンバーは厳選されている。
ただし魔術師に関しては、ギリギリまで拠点の維持に注力していたので、現在はそれなりに消耗していた。
歩くことで精一杯といった者もおり、当分は俺達が頑張るしかない。
もっとも、この辺りは事前に探索済みだ。
魔除けの結界をトンネル状に構築しており、俺の目には何も見えないが、モンスターと遭遇しづらくなっている。
このような結界が下のフロアまで続いていた。
構造の変動があるので過信は禁物だが、通常よりは楽に移動ができるとのことだった。
現在進むのは機械室だ。
狭苦しい場所で、一目で判別できるような異変は見られない。
俺も何度か探索で訪れているので間取りは把握していた。
モンスターの気配も無く、平和なものだった。
「おい、もっと気を引き締めろ」
剣呑な声がした。
前を歩く騎士の発言で、その目は俺への批難を示している。
顔面蒼白の騎士は神経質な様子だった。
冷房が利いて涼しいのに、ずっと汗を掻いている。
先ほどから小刻みに震えており、鎧の擦れる音がうるさかった。
まだ若いようなので新人だろう。
この状況に酷く緊張しているようだった。
「固いことを言うなよ。誰にも迷惑をかけちゃいないんだ」
俺はビールを飲みつつ応じる。
騎士はストレスの八つ当たりがしたいらしい。
真面目に付き合うだけ損である。
「安心しろよ。いざという時は、まとめて蜂の巣さ」
俺は片手に携えたマシンガンを見せながら言う。
それだけで騎士は押し黙り、大人しく前を向いて歩き始めた。
出発の三十分ほど前、数人のギャングが俺達のもとを訪ねてきた。
その際、こいつを俺の額に押し付けてきたのだ。
訪問の目的は下らないクレームだった。
俺としては真摯な話し合いがしたかったが、生憎と向こうにその気がなかった。
仕方がないので俺なりの"交渉"をして、このマシンガンを譲ってもらったのである。
持ち主であるギャング達は、人目に付かない場所に捨ててきた。
一部の生存者、誰がやったのか気付いているだろう。
とは言え、元から素行の悪かったギャングに同情する者は少ない。
俺を敵視する他の犯罪組織やエージェント、富豪共への牽制にもなった。
グループの不和の種を排除することもできた。
少々の労力で得られた成果としては上々だろう。




