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迷宮探索紀行 ~世界一の高層ビルが鬼畜ダンジョンになったらカオスすぎた~  作者: 結城 からく


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第58話 魔物の歓迎

 俺達は何事もなく機械室を抜ける。

 階段を下った先に続くのは貸し倉庫だ。

 数フロアを独占しており、各所に段ボールに入った物資が放置されている。

 運搬用のフォークリフトが何台か停められている。


 このフロアは既に探索済みだ。

 基本的には不要な物ばかりが散乱しており、有用な物資は回収している。

 ちなみに俺の義体の強化パーツが手に入ったのはこのフロアであった。

 誰かが違法に保管していたらしい。

 まだ生きているのかは知らないがありがたい話だ。


 貸し倉庫にはたまに死体が落ちている。

 ここで死んだ人間やモンスターだ。

 生存者グループの犠牲者も少なくなかった。

 現在はモンスターを一掃したので平穏な状態となっている。


 幸いにも死体はゾンビになっていない。

 他のフロアでは変異していた気がするが、ここにはゾンビ化の能力を持つモンスターがいないらしい。

 余計な手間が省けた点についてはラッキーと言えよう。


 時折、前方から誰かが呻く声がした。

 死体を目撃した生存者が吐くのを我慢しているようだ。

 彼らは死体を見慣れていない。

 グループの大半が一般人で耐性がないのである。


 異世界人はさすがに平気そうだった。

 もちろん俺も大丈夫だ。

 これくらいで顔色を変えていては、戦場で生き抜けない。


 グロい死体が転がっているものの、道のり自体は安全である。

 不気味な沈黙を保ちながら、生存者達は粛々と進んでいく。


(これがどこまで続くかだな)


 俺はマシンガンを弄びながら考える。

 この迷宮はどこまでも悪質だ。

 人間を虐殺し、絶望に陥らせる様々なギミックを搭載している。


 ニュースで見た他の迷宮も同様だ。

 確かに異世界の人々が封印したがるのも頷ける仕様であった。

 そのせいで俺達の世界が迷惑を被っているわけだが、怒ったところで意味がない。

 この状況を受け入れて、冷静に脱出を目指すのが賢いだろう。


 個人的な見解を言うならば、そろそろモンスター達が仕掛けてきそうな予感がする。

 これだけ大人数の人間が集団行動を取っているのだ。

 さらにカジノフロアの拠点とは異なり、脆弱な結界トンネルに頼って地道に動いている。

 まさしく格好の獲物だろう。


 そうやって不吉なことを考えていたせいだろうか。

 直後に別の班から叫び声が聞こえてきた。


「結界が破損している! 皆、気を付けろっ!」


 どうやらトラブル発生らしい。

 リラックスしていられるのは、ここまでのようだった。

 俺は缶ビールを捨てて周囲に視線を巡らせる。


 その時、室内の一端で轟音が響き渡った。

 鉄扉を突き破って無数の人影がフロアに侵入してくる。


 現れたのは全身鎧の集団だ。

 正気を失った異世界人かと思いきや、隙間から蔦が鬱蒼と生えている。

 端々からは花を咲かせていた。


 騎士共は大剣や槍、弓矢といった様々な武器を装備している。

 中には銃火器を持つ者もいた。

 総勢二十人前後といったところで、決して無視できる規模ではない。


 口笛を鳴らした俺はミアナに尋ねる。


「連中とは友達になれそうかね」


「……不可能だ」


 辟易とした顔のミアナは、両手に魔法陣を浮かばせながら答えた。

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