第27話 魔術事情
「ヘイ、ツーベースヒットだ」
俺は金属バットを回転させて、軌道上にあったナースの頭部を破壊した。
潰れたイソギンチャクが壁にへばりつく。
掠れた鳴き声を上げているものの、動くだけの元気はないようだ。
こいつの正体は寄生型のモンスターであった。
宿主に憑りついている間はタフだが、こうして引き剥がしてやると途端に弱くなる。
俺はそこに金属バットを突き込む。
壁が凹むほどの勢いを前に、イソギンチャクは潰れて即死した。
弾けた粘液が壁を汚す。
俺は軸の歪んだ金属バットを肩に載せると、テーブルに座って室内を見回した。
白い床のあちこちに異形ナースの死体が転がっている。
イソギンチャクタイプや甲殻類タイプ、大量の髪の毛タイプなど多種多様だ。
どいつも揃って不気味である。
個人的には髪の毛のタイプがきつかった。
最初に奥の扉からはみ出ていた奴だ。
音もなく這い寄ってくると、伸ばした髪で絞め殺そうとしてきたのである。
とにかくビジュアルが気持ち悪い。
例えるなら、日本のホラー映画に出てくるような霊だろうか。
俺はああいったのが苦手なのだ。
別に怖いわけではないものの、好んで観たいとも思わなかった。
そんな存在が現実の脅威となって襲いかかってきた。
否応なしに気が滅入ってしまう。
とは言え、メンタル的なダメージを除けば大した危険はなかった。
ミアナと協力することで、大した損害もなく全滅できたのだ。
もっとも、魔術的なサポートがなければ苦戦していただろう。
最悪、この部屋での物資調達を諦めていたと思う。
異世界のモンスターを殺すには、異世界の能力が最適なのだ。
やはり銃だけでは面倒なことがある。
こうなってくると俺も魔術が使いたい。
そう思って興味本位でミアナに相談したところ、それは困難だと言われた。
まず魔術行使には、体内を循環する魔力を燃料にするらしい。
ところが、この世界の人間は魔力を持っていないというのだ。
燃料がないと魔術は使えない。
外部から魔力をチャージすれば不可能ではないそうだが、魔術を使いこなすには年単位での鍛練が必須だそうだ。
どのみち現実的ではなかった。
残念だが仕方ない。
この状況で悠長に修行なんてしている暇はなかった。
魔術的な方面はミアナに任せるのが一番ということだ。
俺にも培ってきた技術がある。
そいつを信頼してやっていくしかない。




