第20話 傭兵と魔術師
俺は素早く部屋の奥へ退避すると、やたらと豪華なソファの陰を陣取る。
そこでショットガンを置いてきたことに気付いた。
「クソ……」
手持ちの武器はナイフと拳銃のみだ。
さすがにあの瞬間に回収するのは不可能だった。
結果的に爆発したのだから、眼帯女から離れるのを最優先したのは正解だったろう。
穴の開いた右腕は故障したままだ。
たまに指が痙攣しており、まともに動かすのは不可能である。
力任せに殴り付けることくらいはできそうだが、この状況で果たして披露するタイミングがあるものか。
眼帯女は自らの魔術で自爆した。
普通なら即死だろう。
たとえ生きていたとしても、瀕死の重傷に違いない。
抵抗もできない状態に陥っているのは必至で、何も警戒することはない。
しかし、奴はきっとまだ生き延びている。
俺の直感が囁くのだ。
あのクレイジーな女が報復を狙ってくる、と。
こういった時こそ、あらゆる可能性を想定して行動すべきだ。
戦場では、勝利を確信して慢心した者から地獄行きとなる。
俺がここまで生き残ってこれたのは、いつでも疑うことを止めず、常にクールな思考を意識してきたからだった。
こうしてソファの裏にいるのもその一環である。
もし眼帯女が死んだのなら、ただの杞憂で終わる。
生きていれば、立派な戦略だ。
もちろん前者を望んでいるものの、現実とはヘビーな展開が好みらしい。
きっと俺の思う通りには動いてくれないだろう。
(ミアナと協力できれば楽なんだがな……)
彼女は別室にいる。
直前の爆発で異変を察知し、臨戦態勢に入っているはずだ。
しかし、きっと不用意には部屋を出ない。
どちらかと言うと慎重な性格なのを知っている。
こんなことになるのなら、互いに連絡を取れるようにしておけばよかった。
持ち主不明のスマートフォンは道中でたくさん発見した。
ミアナに使い方を教えれば、連絡用の端末として活かせたはずだった。
俺は後悔しながらポケットを探る。
すると、画面の割れたスマートフォンが出てきた。
戦闘のゴタゴタで破損したらしい。
どのみち連絡はできなかったようだった。
(ハハ、最高の状況だぜ)
俺は天井を仰ぎながら笑う。
呼吸を整えつつ、左手で拳銃を握り込んだ。
間もなく部屋のドア付近で爆発が起きた。
凄まじい破壊音に紛れて何かが崩れる。
俺はソファの陰からそっと覗き込む。
壁に大穴が開いている。
そこから満身創痍の眼帯女が部屋に侵入するところだった。




