4月10日
優人のお葬式です。
優人は医者の言っていたよりも、少し長く生きてくれました。
絶対にそっちのほうがいいです。無駄でも何でもない。
「ランドセル買っておけば良かったね」
「ははは……そうだな」
来てくださった親戚の一部の方々は、私たち夫婦が笑っていることを不思議に思ったようです。
りっくんも来てくれました。横にいるりっくんのパパとママには、お見舞いに来てくれた時に、病院で何度か会いました。
「さっきそこで会ったんですよ」
と、りっくんパパが言います。
後ろで申し訳なさそうに立っているのが博士です。
博士は若いころに、奇跡的に発明した便利グッズの特許で生きてきて、今は年金暮らしだそうです。
少し、りっくんとお話をしました。
りっくんは実際、頭のいい子です。でも私が「怖いほど」と感じたのは間違いでした。スマホの使い方を知っていたのも、先に優人から教わっていたからだし、それ以外にも優人から色々聞かされていて、それが、何でも知っているかのようで「不思議な空気を持っている子」と思った原因でした。
りっくんが言うには、優人の方が大人で頭がいいし、優人のロボギガマンの方が強いそうです。
小学1年生が「僕より大人」とか言ってるのが、ちょっと面白くて笑ってしまいました。その辺が子供だなって思いました。
りっくんとのやり取りが、元気なころの優人とのやり取りみたいだなとちょっと思ったり、でもやっぱり違うなと思ったりしました。
りっくんは優人のことを話してくれました。
私たち夫婦が、病院で優人の病気を聞いたその日から、優人は違和感を感じていたそうです。
そして、1か月後にはもう、だいたいのことは知っていたらしいです。
「本当にあった実話だよ」
と、りっくんが言いました。1年半くらい前に、ロボギガマンが優人を守ったという話です。
◇◇◇◇
その日、優人とりっくんはロボギガマンを持って、近所の商店街まで行きました。それはドキドキのはじめての冒険で、実際、道にも迷いました。
その裏路地で、おそらく小学2年生くらいと思われる、3人組と出会います。
小学2年生という圧倒的フィジカル差を思い知らされたというのです。
「ちょっと貸せ」
そう言って、小学2年生という暴力の化身は、優人の拒否権とロボギガマンを奪いました。
バキバキッ
ロボギガマンの足は変な方向に曲がりました。この時壊れた足は、博士に直してもらうまで曲がらなくなっていたそうです。
「やーめーてーよー」
と言って優人は泣きました。
邪悪の権化なるは小学2年生で、当然泣いている優人の言葉などは無視されます。
「ブシューーッ!!」
ロボギガマンも操られています。
小学2年生に、容赦などという言葉があるはずもなく、
「なんだこれ?」
と言って、ロケットパンチのボタンを押してしまいます。
ポーンとロケットパンチは発射され、フェンスの奥に飛んで行ってしまいました。
「スゲーー!飛んで行った!!」
小学2年生がはしゃぎます。
誕生日に買ってもらったロボギガマンのロケットパンチは、フェンスの先に消えました。
「もう一発やろうぜ!!」
りっくんは、怖くて壁に張り付いていたそうです。でも優人は、
「やめろーーー!ママとパパが買ってくれたんだ!!」
そう言って、小学2年生という怪物に立ち向かいます。当然勝てません。
というかその前に、転んで膝をすりむきました。
「はははは、ダッセーー!」
「かえせーー!」
それでも優人は立ち向かったそうです。
小学2年生というタワーは、優人の上空で、ロボギガマンを飛び回らせるのに十分な高さです。
小学2年生たちは遊んでいるんです。
でも優人だけが必死で、壁の上の猫は「うるさいにゃー」という感じであくびをしていたそうです。
「うおーー!」
優人が決死の覚悟で、3人の小学2年生の中でボスらしき一人に頭突きをすると、その小学2年生は、
「うっ」
と言って手を滑らせ、ロボギガマンは放り投げられます。
放り投げられたロボギガマンは、壁によりかかった状態で壊れて放置されている自転車の前かごに入りました。
「痛ってーな!てめー!」
小学2年生はそういって優人の胸ぐらをつかんだそうです。
ピンチです。
怖くて怖くて仕方なかったと思います。でも、
「ロボギガマンと目が合ったんだ」
優人はそう言っていたそうです。
自転車の前かごの中で、ロボギガマンはコロンと倒れて、その拍子に、ロケットパンチのボタンが押されました。
ロケットパンチは壁をすべるように上り、眠っている猫の足に当たります。
びっくりした猫は飛び起きて、立てかけてあったほうきやごみ箱などを倒しながら走っていきました。
その音を聞いた大人が、
「おい!何をやっているんだ!」
と声をかけてきました。
「やべ!逃げろ!」
小学2年生たちは逃げていきました。ピンチは去ったのです。
「大丈夫か君!」
大人が、ケガをしている優人に話しかけました。
優人の目はずっとロボギガマンを見ていたそうです。そして、
「大丈夫」
と言ったそうです。




