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妹の補佐として望まれましたが、帝国では正妃として愛されるそうです  作者: おくら
第三章

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殿下と婚約するようです 2

*********


カイゼル様に返事をしてから2,3日ほど経ち、お父様の執務室に呼び出された。きっと王家からの承諾が得られ、父にも話が伝わったのだろう。


執務室の扉をノックすると、入りなさい、と声が聞こえる。

「――お父様、お呼びになりましたか?」

「…掛けなさい。」

中に入ると、父と母が珍しく揃っている。

2人の向かいに座ると、父は咳ばらいをした。


「…カイゼル殿下から話は聞いた。求婚を快諾したそうだな。」

「…はい。」

「あなたで大丈夫なの?――帝国の王妃だなんて…。ルイ殿下にも愛想を尽かされたというのに…。カイゼル殿下に恥をかかせるなんて、あってはならないのよ?」

母の眉間には深くしわがよっている。

「…カイゼル様は、私に選択する権利を与えてくれました。私が決めればいいと。…私はカイゼル様の隣に居たいと、思っています。」

「帝国からの正式な話となれば、こちらは聞くしかない。帝国でも妃教育を受け、励みなさい、――くれぐれも殿下に恥をかかせることのないよう、我が家の汚点にならぬよう心掛けろ。」

「―――もちろんです。」

父と母の言葉は、じわじわと心を刺すようで手の先が冷え感覚がなくなっていく。私を嫌っているわけではない。私はただ、家の存続のために必要な駒なのだ。きっとそれは、シャーロットもお兄様も。


「これを持っていきなさい。」

父に差し出されたのは、一冊の本だった。

「夫婦の、指南書ですか。」

「こういった勉強はまだしていないだろう。…しっかり学んでおきなさい。」

かなり古い本に見える。きっとこの家に昔からある本なのだろう。ところどころに折り目が付いていて、読み込まれた形跡があった。

「くれぐれも、殿方に恥をかかせてはいけません。教育は大事だけれど、それを殿方の前でひけらかすことは恥です。カイゼル殿下を支えなさい。それが妻の、王妃の務めですからね。」

「―――はい…。」

「持参金が必要ないと聞いているが、輿入れに必要なものは我が家から出す。きちんと用意をしておけ。帝国への出発については、また殿下から連絡があるだろう。」

「かしこまりました。」


執務室を出ると、セレナが心配そうに待っていた。


「エレノア様…?」

ぽろりと、我慢していたものがこぼれる。

「…一言でいいのよ。たった一言で良かったの。」

ぐっと下唇を噛む。

「――…『幸せに』って、言ってほしかったな…。」

ぎゅっとセレナに抱きしめられた。

「幸せに、なりましょうね―――。」

セレナの温かい体温に、冷え切った手に熱が戻っていくのを感じた。


*********


あれからカイゼル様から、自分も公務を終わらせるために少し時間が必要だから、その間に準備を、と手紙がきた。1か月ほどかかってしまうらしく、その間はいつ会えるかわからないのだそうだ。帝国の使節で来ているのだから当然だろう。これまで私の時間に合わせてくれていたのだと気づく。


「あ…」

手紙の最後に「早く君を連れて帰りたい」と走り書きで書いてあり、くすりと笑みが漏れた。


「エレノア様、よろしいですか?」

「なあに?」

「今日は仕立の方を呼んでおりますので、ドレスを作りましょう。何着ほど用意しますか?」

「そうね――何着くらい作っておいたらいいのかしら…。カイゼル様から頂いたドレスと、この間既製品の簡素なものも買ったし…。2着くらいでいいかしら?」


「2着で足りるわけないじゃない!」

セレナの後ろから、シャーロットが声を張り上げながら顔を出した。

「シャーロット?」

「私も同席させてもらうわ。この間帝国の流行も教えたじゃない!おねえさまとセレナだけだったら、無難なドレスを作って終わりそうだわ…。国王陛下への挨拶とかお茶会とか色々あるでしょう?もっと作っておかなきゃ!リリアも連れてきたから、存分に選びましょう!」

リリアはシャーロットの侍女だ。ふんわりとした雰囲気で、ドレスやアクセサリーの流行にも長けているので、シャーロットとの相性が良いようだ。


「リリア、同席するのはいいけれど、あまりエレノア様の負担にならないようにね。」

「わかっておりますよ~。帝国の流行のドレスを仕立てる機会なんて中々ないですから、ぜひぜひシャーロット様にも見ていただきたいのです。エレノア様にお似合いの形も試してみたいですし」


「でもあまりお金を使いすぎるのも良くないでしょう?」

「今までプレゼントで頂いたドレスくらいしかないじゃない。ルイ殿下から頂いたものはもう着れないのだし、チャリティーに出すとして…。それを除いたら私のドレスの5分の1にも満たないのよ?今までドレスの仕立にお金を使っていないのだから、少しくらい多めに使ってもいいのよ。」

そういう問題なのだろうか…。ただ、シャーロットがここまでしてくれる事に嬉しさを感じる。

「…良いのがあれば、仕立てるから…。」

「それじゃあ、こちら流行のドレスの型のパンフレットお渡ししときますね~」

リリアがすっと冊子を差し出し、受け取るがその重さに驚いた。

これ…全て試すわけではないわよね?

冊子のページの数に、今日の拘束時間の長さが想像できてしまい、一抹の不安を感じた――。




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