素直になってもいいようです 2
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「まぁ、美味しそう。」
「フロランタンと…これは何?きれいな色ね。」
シャーロットが興味深そうに指さしたのは、丸みを帯びた優しい色のマシュマロのようなお菓子だった。
「マカロンっていうらしい。帝国で流行り出して、最近街に出来た店でも売り出してるんだ」
「最近…あ、私も聞いたことがあるわ。」
「そうなの。有名なのね?」
柔らかいお菓子かと思えば、サクサクとしていて、間にクリームが挟まっている。まろやかな甘さに、ほんのり最後に花の香りが広がる。
「あー…、えっと。土産の菓子も人気だが、令嬢たちの間ではデザートプレートっていうのが人気らしい。いろんなデザートを、一つのお皿で何種類か楽しめるんだそうだ。」
「素敵ね!私も行ってみたいわ!…おねえさま、そういえば今度街に行くんじゃなかった?カイゼル殿下と。」
カチャリ、とティーカップをソーサーにぶつけてしまった。
「あ、そ、そうね。そうなの。…な、何?」
「どうしたの…?おねえさま、やっぱり変よ。」
「…殿下と何かあったのか?」
心配そうに私を覗き込む2人に、顔が赤くなるのを感じる。
「何だ、そんなことか」
「そんなことって…!真剣なのよ、何をしていても思い出してしまって…。」
「思ったより重症だわ…おねえさま、ずっと勉強ばかりしていたから、感情を出しなれていないのね。」
「シャーロットはいささか出し過ぎだとは思うが」
「おにいさま!」
「…でも本当に困ってしまって…。」
「困ることないじゃない。おねえさまはそれだけ楽しかったんでしょう?」
「そうだ、楽しかったことを何度でも思い出せるなんて、幸せじゃないか。」
「なんだか…私だけはしたない気がしない?」
「はしたないって…。いつの時代よ…。」
シャーロットは少し呆れたようにお茶をすすった。
「嬉しかったのなら素直にニコニコしていればいいじゃない?おねえさまは今までたくさん我慢してきたんでしょうから、少しくらい顔や態度に出たってバチは当たらないと思うわ」
そう言ったシャーロットを見て、兄は驚きを隠せないようだった。
「どうした、シャーロット。そんなことが言えるようになったんだな…。でもまあ、シャーロットの言うことももっともだと思う。今のエレノアの気持ちを恥じる必要はないし、大事にすればいいんじゃないか?」
「そう、かな…。」
私ももう少し、自分の気持ちに正直になってもいいのかもしれない。ずっと自分の感情をありのままに出すことが怖かったし、そうしてはいけないと思っていたけれど。
「まじめなんだから…。」
「殿下もエレノアのそういうところも好きなんじゃないか?二人の初めてのデートは王立の植物園だったんだろ?」
「植物園?デートで?…そうね、カイゼル殿下もおねえさまも似た者同士なのかもね…。あ、でもさすがに手くらいは繋いだのではなくて?」
「手を!?そんな、私たちは婚約もしていないのよ?」
まるで顔に火が灯ったようだ。
「…そうだな、俺もそれはまだ早いと思う。」
「もう、二人ともいつの時代を生きてるの…?」
耐えきれないといったようにシャーロットが笑い、そういえば兄妹でこんな時間を過ごしたことはなかったと不思議に思う。今までずっと、家族なのになんとなく距離を感じていたし、シャーロットがこんな風に笑うのを知らなかった。
カイゼル様のおかげで私たちにも新しい風が吹いているような気がした。
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「楽しそうでしたね。」
「…そうなの。私もシャーロットも、お互いにどう接したらいいのか分からなかったんだわ。…きっと私たち、姉妹の時間を取り戻していけるんじゃないかしら。」
「きっとそうですわ!…刺繍も進んでいるようで安心しました。」
セレナはクスリと笑うと、私の手元を見た。
お茶をする前はあんなに落ち着かなかったのに、先ほどから刺繍は随分と進んでいる。
「そうね、カイゼル様のことを考えるといっぱいいっぱいで…。でも、この気持ちも大事にするべきなんだって教えてもらったから。…楽しかった、ドキドキした、って後からたくさん思い出すのはそれだけ素敵な時間を過ごした証拠なのよね。」
「そうですね。そういう時間がこれからもっとたくさん訪れますよ!」
きらりと光る銀糸に、カイゼル様の瞳を思い浮かべた。
早く会ってお礼を言いたい、と次に会う時に何を話そうか、どこかわくわくしている自分がいた。




