閑話――副団長のつまみになるお話 2 ――
「殿下、また勝手にデートの約束してくるの辞めてもらっていいですか。しかも街って。お忍びって…。俺、休みなくなっちゃいますよ~。」
「お前に休みは必要ないだろ?」
「…エレノア嬢が聞いたらなんと仰るか…」
先ほどまで甘ったるい顔でエレノアの寝顔を見ていたとは思えないほど、険しい顔だ。
そんな険しい顔で、手元のカフスを取り外すと、大事そうに宝飾品のケースの中へしまい込んだ。
イヴァンは良く知っている。あのケースの中身は、ほとんど――「彼女の色」で一杯になっていることを。
イヴァン自身は生家の領地で宝石が名産であるから、自信も宝飾品を好みいろいろな種類をそろえている。そんなイヴァンが見ても、最高級品のエメラルドで作られたカフス達。もっと目立つものでも良いのでは?と思うのだが、そこはカイゼルなりのこだわりがあるのだろう。
「ほんとーに…執着がすごい。」
「あの、俺また副団長の酒に付き合うために呼ばれました?」
「もちろん!殿下とエレノア嬢の話の流れを分かっていて、俺の頼みを断れないのはルチアーノくらいしか居ないでしょう…。」
この滞在中、使節団は王城へ身を寄せているため、自宅へ帰っているルチアーノはイヴァンに呼ばれる度に登城する羽目になっている。今日はエレノアを自宅へ送った際にそのまま馬車に乗せられてここへ来た。
今日は少し度数が高めのブランデーである。
「エレノア嬢が馬車で殿下の肩を借りたまま寝ちゃってさ。馬車の扉開けた瞬間の殿下の顔、見せたかったな…。デレデレだった…。まあ多分あんまり変化ないから俺にしかわからなかったとは思うけど。うれしかったんだろうね…。」
「エレノアが人の肩を借りて寝てしまうこともびっくりですけど。」
「良い感じだったんだよ!結局似た者同士なんだろうね。エレノア嬢も少しは殿下を意識してるみたいだし…。先日送った髪飾り、つけてくれててね。もう早く連れて帰りたい…。休みが欲しい…。」
少し飲みすぎなようで、ルチアーノは水を勧めたがイヴァンは酒のボトルに手を伸ばす。
「エレノアも自分の気持ちに鈍感なところがありますから…。時間はかかりそうですけどね。」
「それ…ほんとそれ…。」
パーティーの時はあんなに楽し気に殿下の話をしていたというのに、巻き込まれる割に進行が遅いので業を煮やしているのだろう。やけ酒とも思えるような飲み方である。
「俺はこれでも側近だからさぁ…副団長だし…いろいろ仕事があるわけですよ。殿下が1日休暇をデートに使っても、俺はその護衛に1日使うから休暇なんてないのよ…。」
「…お察しします…。今度、うちの領地で新酒がとれるので、持ってきますね。」
「…美味しいなら喜んで頂くよ…。」
普段あまり見られない姿に、ルチアーノはイヴァンの内臓の心配をしてしまうのだった――。




