⑧ 星崎さんの想い ~せいらの語り~
ベンチの上にさっきかみやんに貢がせたお土産袋がどっさり。
あたし、せいらはそれを一つ一つ取り出しては眺めるふりして、星崎さんとかみやんの会話にしっかり聞き耳をたてたの。
かみやんがトロピカルスムージーを買ってきてくれて、あたしに渡してくれる。
「先輩も、やきもち覚ましにどうぞ」
「悪いね」
ここで、二人の間に何か重要な会話が繰り広げられる――。
乙女の勘がそう、告げてるの。
少し声を低くして、かみやんが切り出す。
「せいらから事情はだいたい訊いてます」
星崎さんがかみやんを見た。
「心配ですね。夢未ちゃん」
星崎さんがそっと頷く。
「とはいえ、さっきのは多少過保護すぎって気もしましたけど」
星崎さんは軽く息を吐いて、認めた。
「そうだね。でも、どこで夢ちゃんの両親がまた、彼女に近づくかわからないと思うとつい慎重になるんだ」
「どうしてそこまで? もともとは仕事場の本屋で知り合った女の子のことを」
ちらと星崎さんの視線を感じて、あたしはあわてて、手の中にあるネックレスに見惚れてるふりをする。
「……夢ちゃんに好きだって言われたとき」
かみやんが驚いたようにベンチに座り直す。
あたしもついネックレスを落としそうになる。
いきなり核心!?
ここは夢っちのため。
耳をダンボにしなきゃ。
「あれはあの子が心身ともものすごく弱っているときで。
とにかくその傷をどうにか和らげてあげないとって必死だったんだけど。
そう言われた瞬間、電気ショックでも浴びせられたみたいに動揺してさ。
小さな女の子が心細さのさなか言ったことに何を狼狽えてるんだって話なんだけど」
……これは。
夢っちにも、かなり望みがあるんじゃ?
いけない。ネックレスが手に絡まっちゃった。
「あの子を大人としてなだめなきゃならないオレの方が泣きたくなったんだ。
それがどうしてなのか、あの衝動がなんだったのかはわからない。
でもそのショックがひいた時にはもう決めてたんだ。
この子をひきとろう。
せめてもう少しその傷が癒えて、大人になって、ほんとうに守ってくれる誰かを見つけるまでは、この子の砦になろうって」
難しい話だけど、なんだか、すてきだわ……。
夢っちに、知らせたい。
そう思って、だめとあたしの中で声がした。
これは星崎さんのなかでまだ片がついてない気持ちだから。
でも、あたしまで、嬉しい……あったかな気持ち。
ちらとかみやんを見ると。
すごく、穏やかに笑って、一言言ったの。
「わかる気が、します」
夏のさわやかな心地いい海風が、あたしたちを包んで、通り抜けていった。




