前へ目次 次へ PR 36/39 うたごえ② 路地(ろじ)を歩いていると数メートル先の曲がり角から美しい歌声が聴こえて来た。 セイレーンに導かれるかのように角を曲がると、車椅子(くるまいす)があった。 車椅子には誰も乗っていない。 当然、車椅子を押す人もいない。 車椅子だけが切れかけてチカチカした外灯の灯りに照らされていた。 歌声は、空(から)の車椅子から聴こえている。 車椅子はゆっくりこちらに向かってきて、歌声と共に私の横を通り過ぎて行った。 間奏のラップパートもしっかり歌っていた。