【狐狗狸さん】第二部完結編:少女
少女は一人、放課後の誰もいない教室の隅で机を見つめていた。
机の上には五十音と数字、鳥居などが書かれた紙。
それと、十円玉が置かれている。
「コックリさん、コックリさん、おいでください。コックリさん、コックリさん、おいでください。」
開け放たれた窓から一陣の風が吹き込み、少女の黒髪を揺らした。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
少女は自分の指が勝手に動くのを確認した。
「……成功…」
「こっくりさん、こっくりさん。パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?」
少女は悪戯っぽく微笑んだ。
十円玉が動いた。
………「ふ」「ら」「い」「ぱ」「ん」………
「ふふ…いい霊ね…。それじゃあ、もう一つ訊くね…。あなた…昨日、深雪さんたちのグループに何かした?」
十円玉が紙上を素早く走った。その勢いに少女の指が危うく置いて行かれそうになる。
十円玉は「はい」の上で止まり。まるで嬉しそうに「はい」の上でグルグルと円を描いた。
「そう…。やっぱり、悪い霊」
少女は眼鏡を左手で外し、机の上に置いた。
少女は椅子から立ち上がり、机上の指先に力を込めた。
人差し指が光り始めた。
十円玉は少女の指から逃れようと暴れ始めたが、少女はそれを赦さなかった。
「業果の歯車・起動【怨】」
十円玉がみるみる反り返った。
それはまるで地獄の業火に苦しむ罪人のようであった。
「あなた…ちょっといたずらが過ぎたようね。最期にもう一つだけ訊かせて。50年前、この学校で暴れた悪霊はあなたなの?」
十円玉は這いずるようにゆっくりと動き、「いいえ」を差した。
少女はそれを見とどけた後、輝きを増す右手人差し指に左手人差し指を重ね、十字を作った。
「輪廻を断ち切り滅しなさい!」
十円玉は青白い煙を上げながら暴れ、そして間もなく動かなくなった。
ただの反り返った十円玉を見つめ、少女は落胆したように呟いた。
「また…違った…」
少女の眼には狐狗狸さんを憎む、仄暗い光が宿っていた。
「おじいちゃんを呪った悪霊…。いつか私の手で、いや…私の指で、必ず…」
―最愛の祖父を狐狗狸さんに奪われたことを知った少女は、祖母から【対狐狗狸用戦闘術 「業果の歯車」】を継承した。この物語は、狐狗狸さんに運命の歯車を狂わされた少女の、数奇な戦いの記録である―
「視ていておじいちゃん!私たちの戦いはこれからよ!」
―END―




