【狐狗狸さん】第二部前夜:少女たち
放課後の教室の隅で少女たちは机を囲んでいた。
「コックリさん、コックリさん。五月女先輩の好きな人の名前を教えてください」
少女らの指を乗せた十円玉が紙上を動き回る。
その差された文字ひとつひとつに少女たちは一喜一憂した。
「ふう…。もうそろそろ終わりにしよっか。コックリさん、コックリさん、ありがとうございました、鳥居からお帰りください」
十円玉が「いいえ」を差した。
「えっ…うそ…、いつもはこれで帰ってくれるのに…。コックリさん、コックリさん、お帰り下さい。コックリさん、コックリさん、お帰り下さい。」
十円玉は「いいえ」の上から離れようとしない。
少女の一人は指に力を入れ無理にでも十円玉を動かそうとしたが、それでもピクリともしなかった。
「どうしよう…呪われちゃう」
少女たちの目に涙が浮かぶ。
「指が…指が離れないよ」
「もう、嫌。帰りたい」
十円玉は少女たちを嘲笑うかのように、鳥居の上をグルグルと回り始めた。
少女たちがパニックになりかけたそのとき。
「きゃーッ」
少女たちの視線が一点に集中した。
少女たちの足元には茶色い悪魔「G」がいた。
「G」がカサカサと動き一気に距離を詰めてきた。
遠くの霊より近くの「G」。
少女たちはガタガタと椅子を倒しながら立ち上がり、十円玉と紙を超能力の様に指に張り付けたまま教室を飛び出した。
…少女たちは皆、原因不明の高熱で翌日学校を休んだ。
親が熱の原因を訊いても少女たちは誰も理由を話さなかった。
したがって、少女たちに何があったのかは本人以外誰も知らない。
ただ一人、廊下から眺めていた黒髪の少女を除いては…。




