【狐狗狸さん】第一部:少年
「コックリさん、コックリさん、おいでください。コックリさん、コックリさん、おいでください。」
少年たち四人は放課後の教室の隅で机を囲んでいた。
窓の外には暗く重い雲が空を覆っていた。
「こっくりさん、こっくりさん、どうぞおいでください。もしおいでになられましたら『はい』へお進みください」
開け放たれた窓から一陣の風が吹き込み、カーテンを揺らした。
三本の人差し指を乗せた十円硬貨は…ズズ…ズズズ…と緩やかに動き始め、『はい』の上で静止した。
三人が机を囲んだ椅子に座る傍らで、一人は立ってその様子を見守っていた。
「おお…動いた」
「本当だ、すごいな」
「誰もわざと動かしてない?」
「自然に動いた感じがあったな。成功だ」
四人が感嘆の声を上げた。
「コックリさん、コックリさん。山口百恵の生年月日を教えて下さい」
またしても十円玉が動いた。
……1…9…5…9…ね…ん………1…が…つ………1…7…に……ち
「よし、すぐに調べて」
立っている少年は手にした『週刊明星』に載っている山口百恵のプロフィールを確認する。
「…1959年…1月…17日。合ってるよ!」
全員が一斉に歓喜の声を上げた。
「本物だ!本物のコックリさんだ」
「じゃあ次が本番だ。いくぞ」
少年の言葉に他の三人は頷いた。
「いくぞ……コックリさん、コックリさん。パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?」
十円玉が動き始めようとしたその瞬間。
一人の少年が合図を出した。
「今だ!やれ!」
「ハイっ!」
傍らに立っていた少年は、五十音が書かれた紙の端を両手で摘み、テーブルクロス引きの要領でサッと引き抜いた。
すると、五十音が書かれていた紙の下からもう一枚、アラビア文字が書かれた紙が現れた。
コックリさんの宿った十円はアラビア語アルファベット一覧表の上を右往左往した後、何処へも動けずただ小刻みに震えるばかりであった。
このことと関係があるかどうかは不明だが、その日の晩、少年たちは四人とも謎の高熱で苦しんだ。




