ハッピーアイスクリーム
ソロキャンプを満喫し、日が傾きかけた頃に帰路についた。
しかし先程からカーナビの様子がおかしい。
音声がブツリと途切れてしまったり、ノイズが入ったり。
画面もおかしい。現在地が勝手に移動してしまう。
おかげですっかり道に迷ってしまった。
初めて来た場所で土地勘もない。しかも薄暗い山道だ。困った。
実は、キャンプ場から離れた場所を散策していたときに見てしまったものがある。
太い木の枝から垂れた…先端が輪になった縄。
それも同じ木に二本。
縄の劣化具合はそれぞれ違った。同じタイミングでそうした訳ではなさそうだ。
引き寄せられる何かがあるのだろうか。
私はもう一泊するはずだった予定を切り上げ、このまま帰ることにした。
さすがにそれを見てしまった後に、近くでもう一晩夜を過ごす気にはなれなかった。
カーナビは一向に直る気配がない。ついには画面が消えてしまった。
これではどこにいるのか皆目見当がつかない。
音声は相変わらずぶつ切りの声で、在りもしない道を案内している。
【…ソノ・・・ンゴウヲ・・・ダリデス…】
一体こんな山道のどこに信号があるというのだ。
だんだんと日が沈み、焦りとイライラと不安が混ざる。
【…モクテ・・チニ・・トウチ・・ク・・マシタ…】
全く山から下りられていないうちに、勝手に到着したことにされてしまった。
…周りの景色に見覚えがある。
私は車を降りた。
ここは、あの木の場所じゃないか。
戻って来てしまった。いや、戻らされたのだ。
目の前で二本の縄が風に揺れていた。
焦りと恐怖に追い立てられ、すぐさま車に乗り込む。
【…モクテキチヲ セットシテクダサイ】
今は一刻も早くこの場から離れたい。
目的地設定など後でいい。
【…モクテキチヲ…】
カーナビの音声を遮るように、車内に声が響いた。
【【オあマなエたモもシこネこバでイしイんノでニ】】
…車内に響いた声がカブった。
何て言ったのか分からなかった。
もう一度言ってくださいとは言えず、その場を後にした。
もう声は聞こえてこなかった。
バックミラー越しに見た二本の縄は、バツが悪そうに風に揺れていた。




