不敵な微笑み
「この前撮った写真を見直してたんだけどさ…」
そう言って友人がスマホを見せてきた。
『この前撮った』というのは数日前に友人ら数人でキャンプに行った際に立ち寄ったという心霊スポットとして有名な吊り橋で撮った写真だ。
私は行っていないため、写真を見るのは初めてだった。
吊り橋からの絶景を背にして見慣れた顔の友人たちが写っている。撮影者は今スマホを見せている友人だ。友人たちは各々アホみたいなポーズや変顔、漫画のキャラの立ち方やポーズでキメている。
その友人たちの後方には、サラリーマン風の男性が写っていた。
「この男、本当はいなかったんだよ」
「まさか。気付かなかっただけだろ」
「いや、ほんとうに。だって、こいつらの後ろに立ってたらこんな風に写らないだろ」
たしかに、もし後ろに居たとしたら友人たちに隠れてしまうか、見えたとしても頭だけになるような位置どりだった。だからここに写っているように腰のあたりまで見えているのは、言われてみればあり得ない構図だった。
「それでさ、実はこのおっさん、最初に見たときは後ろ向きだったんだよ。橋から飛び降りるみたいに橋の外を見てたんだよ。それが、見る度にだんだん振り返ってきてるんだよ…。絶対ヤバイヤツだよな…」
今スマホの画面に写っている、半分以上こちらを向いている男の目つきは鋭く、口角が上がった口元は不敵な笑みを浮かべているかのようだった。
完全にこちらに振り向いたときに何かが起きるんじゃないかと友人は心配している。とりあえず友人をなだめて、様子を見ることにした。
一週間後、友人がやってきた。
写真の男が完全に振り向いたという。
こちらを見据える写真の男は挑むような鋭い目つきで不敵に微笑み……口角を上げ…。
下アゴを突き出し、両手を構え、アントニオ猪木のモノマネをしていた。
友人たちの輪に、何ら違和感なく写っていた。




