第9話「スタイル」
はじめまして「D-NEY」と申します♪
気ままに更新いたしますが、目に留めていただいた際はぜひ楽しんでいってください( 'ч' )!
「よぉやった!せやけどこっからが勝負やで。正直お前にはあのゴブリンを倒すにはまだ早い」
たしかに、魔法を使えて浮かれていたけど、さっきからあのゴブリンは様子見といった感じで何もしてこない。
まして僕の魔法を見てニタァっと余裕の表情を浮かべているようにも見える。
それに、犬型の魔獣を倒せたけど僕はどうやって倒したんだろう。
この魔法の炎を使ってどう戦えばいいんだ……
「ええか、魔法は想像力や、感情を乗せながらどんな魔法にしたいかをイメージして具現化する。それが魔法や」
想像力……
今の僕が闘うならこのスタイル、そうガンマみたいな戦い方の方がいい。
想像しろ……、炎を腕や脚に纏わせるイメージ。
そうだ、いいぞ。もっともっと熱くなれ。
あの巨体にダメージを与えらるような、もっともっと熱く、大きく。
『炎体術』
「なかなか格好は決まってるやないか!まぁどうなるか知らんけど、やったらんかい!」
まだゴブリンは油断しきってる。
決めるなら今しかない。
渾身の力を、感情を込めろ。
お前を倒してアイツを引き摺り出さないといけないんだ。
そしてみんなを僕が助ける!!
ノーガード、腹はガラ空き。
もらった……!!
『炎体術・炎拳』
手応えアリ、もらった……
「危ない!ガードや!」
クロミンの声を遮るように、身体の中からミシミシッと音がした。
そのまま大きく吹っ飛ばされて強烈な痛みが左脇腹を襲った。
……くっ
息ができない。
骨をやられた。
立ちあがろうにも、痛みが強すぎて。
やばい、意識が……
「なかなか派手にやられてしもたなぁ、まぁもういっぺんやってみいや」
『癒しの風』
クロ…ミン……??
スゥッと風が身体の中をすり抜けるような感覚だった。
あんなに激しかった痛みが、風とともにスルスルと抜けていくのがわかった。
息もすっとできるようになっている。
おそらく粉々になっていたであろう骨も、次の瞬間には元通りになっていた。
「やっぱあかんかったか。魔法は近距離だけやないで、むしろ近距離の方が珍しいんや、もっと工夫してやらんと負けるで」
確かにさっきのパンチ、モロに入ったはずなのにゴブリンには全然効いてない。
確実に敵であるとわかってるはずなのに、何もしてこないのがその証拠だ。
僕にはやられないと確信している。
パンチでダメならどうすればゴブリンに勝てるんだ……
「魔法はお前の想像力次第でどんな使い方もできる。お前の得意な分野で考えてみぃ」
僕にできること。近距離じゃダメなんだ。
遠くからゴブリンを狙えるもの……
そうだ!今までヤマ爺に教わったことを魔法でやってみよう。
遠くの獲物を狙うときは、そう、やっぱりあれしかない。
持ち手はこんな感じ、そう。
弦は細く、しっかりと張るように。
矢先は鋭く尖らせて、ゴブリンに深く突き刺さるように。
洗練しろ、洗練しろ。
どんな本物よりも僕に合った弓・矢となれ。
『炎狙撃術』
狙いを定めろ、限界まで弦を張れ。
今度こそ、仕留める!!
『炎狙撃術・炎矢』
炎の矢は周りの空気を吸い取りながらグングン大きくなっていく。
軌道も完璧、速さも十分。
そのままゴブリンに突っ込め!
ドーンッ
放った矢はゴブリンに直撃して、
やったか……??
爆風が辺りの砂を舞いあげてゴブリンの姿を隠してしまっている。
確かに手応えはあった。
ただ、さっきのパンチに対するあの防御力だ、倒せていなくても不思議じゃない……
「なぁなぁ、どう思う?倒せたおもてる?」
クロミンがぴょんぴょんと僕の後ろで跳ねていた。
明らかにニンマリとした表情で、クロミンは結果を知っているようだった。
そしてこのなんとも煽ってくるこの感じ……
「どうせ倒せてないんでしょ」
「ピャー!なんでそんな自己肯定感ないねん!もっと自信持ったらええのに……」
しょんぼりとするクロミンに少し心が痛んだ。
そうか、クロミンは僕の快勝に純粋に喜んでくれていただけだったんだ。
やがて、砂煙も晴れていき、はっきりと状況を目で確認することができた。
「やった……!」
そこにはゴブリンの姿はなかった。
さっきの爆発でバラバラに消し飛んでしまったのだろう。
僕はほとんど初めて魔法を使って魔獣を倒せたことに感動で手が震えた。
「あー、ごめんね。感動してるとこ悪いけど、足元みてみ」
クロミン、悪いけどもう少し勝ちの余韻に浸らせて欲しいんだ。
さっきはほとんど意識してない状態で魔獣を倒していたから全く自覚を持てなかったけど、やっとこうして自分の力で魔獣を倒せたんだ、少しだけ、少しだけ、喜びを噛み締めさせて欲しいんだ。
それに足元って言っても、砂があるだけじゃないか。
……?
大きな手がある。
「うわああああああああ」
大きな手は砂からニョキっと生えていて、その手は明らかに僕を目掛けて飛びかかって来ていた。
『炎体術!!』
とっさに炎をまとった両腕でガードはできたが、ビリビリと体の芯に響くこの感じ、これは明らかにさっきの衝撃と同じだった。
「まさか、ゴブリンは倒せてなかったのか」
ぐらっ
着地したところが悪かったのか、やたらと足元が不安定だった。
いや、違う。砂に足を取られてしまったんだ。
まばらではあるが、いつの間にか場所によっては砂は膝が隠れるくらいまで積もっていたのか。
まずい、時間が経てば経つほど戦いづらくなる。
対照的にゴブリンは砂の中を泳ぐように移動できるんだから、早くケリをつけないとヤバいぞ……。
「残念やったなぁ!ゴブリンはまだ生きてたみたいや、まぁ知ってたけど〜!」
体が軽いからか全く砂に埋もれる様子のないクロミンはぴょんぴょんと僕の目の前を飛び回る。
にっこりと満面の笑みでぴょんぴょんと飛び跳ねる姿はどう考えても僕を煽っていたし、僕をからかって楽しんでいるようにも見えた。
うざったい、どうしてこの状況で楽しんでいられるんだろう。
正直、絶望的な状況だ。
魔法の量に限界があるのだとしたら、僕はさっきの攻撃でほとんど力を振り絞ってしまった。
どうすればいいんだ。
ゴブリンに勝つこともあいつを引き摺り出す事も、イオ兄たちを救うことも、全てができなくなってしまったんだ。
「お前がダメダメなせいで、イオータたち死んでまうんやなぁ」
……そうだよ。
僕がダメダメなせいで、三人は助からない。
時間を止められなかったのが、僕じゃなければ、僕以外の誰かがこのダンジョンに挑めていたなら、きっと助かっていたんだ。
なにが手応えはあっただ、何が初めて勝てただ。
「何もかもうまくいってないんだよ!!」
悔しくて悔しくてたまらなかった。
涙で視界が滲む。
まるでグニグニに歪んだ世界を見ているみたいだ。
もっと、世界が歪んでくれたらいいのに。
歪んで歪んでこれが夢だったら幸せなのかもしれないな。
そんな思いとは裏腹に、視界は徐々に正しさを取り戻し、
また、体が熱くなっていくのを感じた。
あぁ、悔しくて悔しくて涙が出るくらい悔しいのに、やっぱり涙は流れてくれないんだなあ。
この感覚はきっとあの時と一緒だ。
そんなことを思いながら意識が遠のいていった。




