これは何かの罰なのでしょうか⁈
『お前が⁈』
『本当に?ぜんぜん似てないじゃない。』
『でも、お母様が言ってたのよ!『妖精姫』と親戚だって!』
『僕も聞いたけど、こんなに可愛く無いとは思わなかったよ。あ〜あ、楽しみにしてたのにガッカリだ。』
『ホント!顔中そばかすだらけだし、鼻もブーだしどっこも似てないよな。』
『ほら、イグウェイってアレでしょう?』
『あっ!そうそう、みんな言ってるよね。』
『それ聞いたことがあるわ。』
王宮で行われたガーデンパーティで集められた貴族の子供達。
『魔物のように大きくてとっても怖いお顔だって。』
『目が合うと大きな声で怒ってくるって。』
『持ってる剣を振り回して暴れるって。』
根も葉も無いことで騒ぐ周りの男の子達ーーー紳士でも無いお子様達を令息と呼ぶにはまだ時期尚早ですわよね。
ええ、このときの私はとても、物凄く、我慢いたしましたわ。
拳をつくった両の手がプルプル震えるぐらいには頑張りましたもの。
でもね、人間限界を超えますと思いもしない展開へとなることを私はこのとき身をもって知りましたわ。
そう、全てやらかしてしまった後に。
この日のために買った可愛いピンクの靴を咄嗟に掴んで投げていましたの。
デタラメばかりを口にする子供達に向かって。
それが飛び石のように頭にポンポンポンと面白いほどあたりましたの。
『私は自分が可愛く無いと思ったことはないわ。だって、大好きなお父様に似ているってお母様がギュッてしてくれるもの。なのにどうして知らないあなた達からそんなこと言われなくちゃいけないの?知らないでしょう?私のことも、お父様のことも。それに曾お祖父様のことも。誰の真似して言ってるのか知らないけど、そんなウソ言ってると髪がもげるわよ。ーーー違った、お口がもげるのだわ!』
そうですわね、物語の中であればここでの表現は正しく『鼻息荒く』だと思いますわ。
若気の至り?そんな生優しいものではありませんのよ。
あのとき頭の中でプチンと何かが弾ける音がして、気が付けば周りは大惨事。
泣き叫ぶ子や大声で怒鳴る子、頭を押さえて真っ青になって座り込む子。
それはもう酷い状況で、気付いた大人達が慌てて駆け寄って来ましたわ。
その後、強制送還(自宅)されて一カ月の謹慎の身となり、半年のおやつ抜き。それから一日八時間のお勉強と言う罰が下されましたの。
私がしでかしてしまったことでお父様やお母様には大変なご迷惑をおかけしたと、そこは本当に申し訳なく思っております。
でも、お父様や曾お祖父様を侮辱した愚かな子供達には爪の先ほども悪いとは思っておりません。
ええ、今も。
そうでしょう?私の大事な人達が知らぬ間に悪く言われているんですもの。怒って当然!なんですから。
ーーーなどと、幼い頃に致してしまった成敗………ではなく少々行き過ぎた反撃?などなど、そんなこともありましたわねぇと、鈍い色したお空を見上げて思い返しております。
正直に申しますと、所謂現実逃避でございます。
まるで私の気持ちが反映しているようなお空は今にも雨粒が落ちてきそうなんですの。
「だいたいですね、お嬢様がいらっしゃる学園からどれ程離れているのかわかりますか?いえわかりますよね、一日かかるんですから。」
ーーー現実逃避したくもなりますわ。
馬車に乗ってからもうずぅーーーっとワケのわからないお説教を聞かされておりますもの。
「隠居の身であってもそこそこ忙しいんですよ。あれで結構人望がありますからその調整も大変なんです。まぁ、フィルマール様がどれぐらい理解しているのか、いや理解されていないからこそバカみたいに送ってくる手紙に誘い文句なんか平気で書いているのでしょうね。ほんとうに迷惑千万!ナニ様ですか?」
ーーー曾お爺様の(曾)孫でしてよ。
「本当でしたら今頃はこことは真逆の【ゾグラ】に行って商談を纏めた後に全身マッサージを受けていたはずだったのに。どれだけの人間と馬が犠牲になっているのか書面にして現実見ないと理解できないでしょうね。」
曾お爺様の侍従であろうとも、私に対してここまで好き勝手に言います?
ーーーそもそもですわ。
何故この侍従を私の元に寄越そうと思われたのでしょうか?曾お爺様?
今ここでドラゴンの奇襲に遭ったとしても、力を合わせて共に戦おう!などと決して思えないのですが!
えぇ、神に誓っても良くってよ!全ての神様に!
「立派な淑女になると仰るのであれば、この機会に曾祖父離れされたらどうです?いつまでもくっついていられないでしょう。早々に次を見つけないと【ソウファ】(絶海の孤島にある修道院)行きで決まっちゃいますよ?」
一体全体どなたが教育しましたの?この侍従。
曾お爺様はどうして好き勝手させておりますの!
まかりなりにも主人である曾お爺様の身内なんですのよ、私は!
だと言うのにこの偉そうな物言い!
まっったくもって理解できませんけど!
それに、そんなことは言われなくとも重々承知しておりますもの。
お父様もお母様もお嫁に行かなくてもいいと仰ってますが、現実問題そんなことは絶対に許されないことだとわかっておりますもの。
貴族の娘として生まれたからには、政略的婚姻は当たり前ですから。
「先に釘を刺しておきますが、閣下には泣きつかないでくださいね!そんなことされた暁には自分が一生面倒見るなんて惚けたこと言い出しますから。」
どうしても私のことを悪く言いたいようですわ。
侍従の分際で!
今日は曾お爺様とお会いできると思ってとっても、すっごく楽しみにしておりましたのに。
迎えに来たのはこの侍従。
ーーー以前にも似たようなことがありましたわね。
「ところで、曾お爺様は何処でお待ちですの?」
「やっと言葉を発したと思えば反論では無くソレですか。相変わらず人の話は聞いていないと。」
大袈裟に息を吐いて額を抑えて首を振る仕草がシャクに触りますが乗せられてはあげませんことよ!
反論?するわけがないでしょう。
私がそのまま言葉にすれば、何倍で返ってくるのかわからないと言うのに?
お腹真っ黒侍従の嬉しそうなお顔など見たくも無い!
ええっ!思い通りなんてなりませんわ。
「ーーーまぁ多少は考える頭があると言うことですかね?でもですね、フィルマール様が目指す淑女としてはどうなんでしょう。ここは上手い言葉で華麗に躱すのが正解では?それに眉間に皺を寄せて睨みを効かせてはねぇ。目指す高みの遠いこと遠いこと。」
全くもって大っ嫌いなんですけど!
侍従が上から目線でいいんですの⁈ 私は伯爵家の娘であなたの主人の(曾)孫なんですのよ!何度も言いますけど!
「そんなふうにドレスを握るとシワになりますよ。」
お黙りなさい‼︎




