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受付嬢のうたた寝  作者: 雲丹猫
第1期
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第2話 番外編ー2人の距離ー

(う〜ん……マスターのこと、もっと知りたいなぁ……)


ミランダは受付の椅子に座り、暇を持て余していた。


依頼に訪れる冒険者もおらず、静かな時間が流れるなか、ふとライデンのことを考える。


(そうだ! 色んな人にマスターのこと聞いてみよ!)


思い立ったミランダは椅子から立ち上がり、解体場へ向かった。


勢いよく扉を開けると、作業をしていたガドーが驚いて振り返った。


「おい! ドアが壊れるだろ!」


「ガドー!」


ミランダはガドーの小言など耳に入っていない様子で、嬉しそうに声をかけた。


「どっ……どうした?」


「ねぇねぇ、マスターってどんな人?」


突然の質問にガドーは目を丸くしたが、期待に満ちたミランダの表情を見ると、作業の手を止めて考え始めた。


「ライデンか? う〜ん、そうだなぁ! 昔から面倒見の良い奴だ!」


「それでそれで!!?」


ミランダは身を乗り出し、続きを催促した。その勢いにガドーは少し驚きながらも、昔のライデンを思い出す。


「ただ、ライデンの浮ついた話は聞いたことがねぇな!」


(ま、ライデンを見たら大体が逃げてくからな!)


ガドーは愉快そうに笑ったが、ミランダの表情は少し曇った。


「……女の人に興味がないってこと……?」


「わからん! あいつは自分の話はあんましねぇからな!」


ガドーはいつもの調子で明るく答えたが、ミランダが求めていた答えとは少し違っていたようだ。


(……ガドーに聞いた私が馬鹿だったわ……)


ミランダは額に手を当て、呆れたように首を振った。


「もう! ガドーじゃマスターのこと全然わからない!」


そう言い残すと、ミランダは解体場を後にした。ガドーは突然やって来て、突然去っていったミランダを、呆気に取られたまま見送った。


次にミランダはママのところへ向かおうと外へ出ると、洗濯物を干しているママの姿を見つけ、駆け寄った。


「ママ!」


「あら、ミランダ。どうしたの?」


ママは手にしていた洗濯物を物干しに掛けると、ミランダへ顔を向けた。


「ねぇ、マスターってどんな人?」


ミランダは期待に満ちた目でママを見上げた。その様子にママは少し不思議そうに首を傾げながらも、穏やかに答えた。


「う〜ん。あの子、昔から無口なのよね。でもね、優しい子よ」


ママは懐かしそうに目を細め、洗濯物のしわを伸ばしながら話を続けた。


「じゃあマスターはお父さんに似てるの?」


「ううん、全然似てないわ。お父さんはね、笑顔でよく喋る人だったの」


「似てないね……」


いつも寡黙なライデンからは、よく喋る父親の姿がなかなか想像できず、ミランダは意外そうに目を見開いた。


「まぁ、お父さんはおちゃらけた人だったから、自分がしっかりしないとってなったのかもしれないわね。うふふ」


ママは楽しそうに笑いながら、次の洗濯物に手を伸ばした。


「そうなんだ!」


ミランダは納得したように頷き、普段のライデンの姿を思い浮かべた。


「ママ! ありがとう!」


満足したミランダはママにお礼を言うと、受付へ戻っていった。


(ミランダ……あの子のことが好きなのね……ふふ)


ママは洗濯物を干す手を止め、遠ざかっていくミランダの背中を優しく見送った。


受付に戻ったミランダは椅子に腰を下ろし、先ほど聞いた話を思い返していた。


(マスターが優しいのは、きっとなにか理由があるよね……)


昔から面倒見がよく、無口だけれど優しい人。ガドーとママの話を思い返すうちに、ミランダの頭には、いつも自分を気に掛けてくれるライデンの姿が浮かんでいた。


そのことを考えていると自然と気持ちが落ち着き、次第に眠気が訪れた。


(なんだか眠たくなってきちゃった……)


ミランダは机に腕を重ね、少しだけ休むつもりで頭を預けると、そのまま眠りに落ちてしまった。


しばらくして、一息ついたライデンが受付の様子を見にやって来た。


「……」


机に伏せて眠るミランダを見つけると、ライデンは足を止め、しばらくその寝顔を見つめてから静かに近づいた。


「……眠いなら自室で休め」


起こさないよう小さくつぶやくと、ライデンはミランダをそっと抱き上げた。


ミランダは目を覚ますことなく、安心しきった様子で眠っている。


(……寝ている間に何かあったらどうする)


危機感のないミランダに少し呆れながらも、ライデンは彼女を自室へ運び、ベッドに寝かせて掛け布団を整えた。


「……マスター……」


部屋を出ようとしたライデンは、不意に名前を呼ばれて足を止めた。


振り返ると、ミランダは気持ちよさそうに眠ったままだった。


(……寝言か)


ライデンはしばらくその顔を見つめていた。


「……ずっと一緒にいたいです……」


「……」


ミランダの言葉に、ライデンはしばらく彼女を見つめていたが、その表情はわずかに和らいでいた。


「……馬鹿だな」


ミランダの頭を、そっと撫でた。


そして何事もなかったかのように、静かに部屋を後にした。

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