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受付嬢のうたた寝  作者: 雲丹猫
第1期
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第2.5話 ノラの噂ー暗黙のルールー

「今回は長旅だったなぁ……」


疲れた足取りで街を歩いているのは、ニャオーン国の中級冒険者のノラだった。


「ギルドに報告して早く休もう……」


(ミランダさんにも会いたいし、今の冒険者ギルド、癒されるんだよなぁ……)


いつの間にか、冒険者ギルドは彼にとって実家のように安心できる場所になっていた。


ギルドの扉を開けると、そこにはいつもと変わらない、居心地のよい空気が流れていた。


「ノラさん、おかえりなさい!」


(ああ……ミランダさん……癒される……)


「ただいま帰りました!」


嬉しくなったノラは、挨拶を返して受付へ向かった。


(……ん? なんだ……?)


ミランダはノラの姿を上から下まで見つめると、どこか引きつった笑顔を浮かべた。


「今日はお疲れでしょうから、ゆっくり休んで、また明日報告してください」


口元には笑みを浮かべているものの、その表情はどこかぎこちなかった。


「わ、わかりました……」


明日でいいと言われたノラは、少し肩を落として出口へ向かった。


(この違和感……なんだろう……僕は悪いことでもしたのか……?)


ふと周囲を見渡すと、ほかの冒険者たちまで厳しい目でこちらを見ている。


「あいつは馬鹿だ」


一人の冒険者が、聞こえるか聞こえないかという声でつぶやいた。


「聞こえましたよ!! なんなんです!?」


長旅の疲れもあって、ノラは思わず声を荒らげた。


すると、冒険者たちはため息をつき、呆れた様子で顔を見合わせた。


「ちょっとこい」


そう言われたノラは、冒険者たちにギルドの外へ連れ出された。


「お前、わからないのか? 今ギルドは神聖な場所になりつつあんだよ!」


「みんなギルドを大事にしてるんだ! 特にミランダさんをな!!」


しかし、ノラには何を責められているのか、さっぱりわからなかった。


「えっと……」


冒険者たちの迫力に圧倒され、何を言えばいいのかわからず、言葉を詰まらせる。


「……クサイ……」


そのとき、小柄な女性冒険者が静かに口を開いた。


その一言に、ノラは自分の身体へ目を向けた。


(そういえば、長旅で風呂に入っていない……!)


「ミランダはいい子なんだ……。だから言わない」


先ほど臭いを指摘した小柄な女性冒険者は、淡々とそう告げた。


「ご、ごめんなさい!」


ようやく事情を理解したノラは、頭を下げた。自分の配慮の足りなさが恥ずかしくなり、顔を上げられなかった。


「みんな風呂に入ってからギルドに行くんだ。ミランダさんに迷惑かけないようにな!」


「日帰りの依頼が少ないのは……わかるだろう?」


冒険者ギルドでは、ミランダに会いたい冒険者たちの間で、日帰りの依頼が争奪戦になっていた。


日帰りなら長旅で何日も風呂に入れないということもなく、身なりを整えてからギルドへ向かえるからだ。


「そうだったんですね……」


事情を知ったノラは、すっかり肩を落としてしまった。


「まぁ、長期の依頼は誰も行きたがらねぇからな。ご苦労さんだったな。メシぐらい奢ってやる!」


周囲の冒険者たちも、その言葉に頷いた。


厳しく叱られたばかりだったノラは、思いがけない仲間たちの温かさに胸がいっぱいになり、目に涙を浮かべた。


「ありがとう……ございます」


一人の冒険者が、今にも泣きそうなノラの肩に手を置いた。


こうして、ニャオーン国の冒険者たちの絆は、少しずつ強くなっていくのだった。

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