S.epー小柄な女性冒険者ー
草むらの中で、小柄な女性冒険者が辺りを見回しながら薬草を摘んでいた。
背が低く、どこか幼さの残る容姿をした彼女は、依頼を受けて薬草を集めているノラの一人だった。
「……集まった……」
薬草を集め終えると、ノラは抱えた薬草を落とさないように、ギルドへ向かって走り出した。
街を歩いている途中、ふと菓子店が目に入り、足を止める。
(……お菓子……買っていこう……)
店に入ったノラは、並べられたさまざまな種類のお菓子を眺めていた。
(……ミランダの好きなクッキー……)
目当てのクッキーを見つけると、それを手に取り、店員の前にそっと置いた。
「……あの……これください……」
「は〜い。あら、あなたはこのクッキーをよく買っていくノラさん! いつもありがとうね」
気さくな店員は、何度も店を訪れているノラの顔を覚えていた。
お礼を言われたノラは、恥ずかしそうに視線を落とす。
「……うん」
「よかったら、試作品があるから持ってって! また感想聞かせてちょうだいな」
店員から試作品のお菓子を差し出されると、ノラはかすかに微笑んで受け取った。
「……ありがとう……」
軽く頭を下げて店を出たノラだったが、ほどなくして二人の男に声をかけられた。
「おっと……可愛い子猫ちゃん! お茶でもどうかな?」
目の前に立つ男たちは、にやにやと笑いながらノラを見ていた。
(……野蛮なノラ猫……)
ノラは小さくため息をつくと、次の瞬間、まるで瞬間移動したかのような速さでその場から姿を消した。
「あ……あれ!? さっきまでここにいたのに……! どこいった!?」
慌てて辺りを見回す男たち。
その姿を少し離れた場所から振り返って確認したノラは、何事もなかったように歩き出した。
(……馬鹿なノラ猫……)
そのままギルドへ向かい、扉を開けると、受付にいたミランダがすぐに気づいた。
「ノラちゃん! おかえり!」
満面の笑みで迎えられ、ノラの表情も自然と和らぐ。
「…………ただいま……」
ノラはミランダのいる受付へ近づいた。
カウンターは小柄なノラには少し高く、彼女はミランダを見上げながら声をかける。
「ミランダ……これ……」
背伸びをして、集めた薬草をカウンターの上にそっと置いた。
「まぁ! こんなにいっぱい! すごいね! ノラちゃん!」
ミランダは薬草を見て、ぱっと顔を輝かせた。
「…………うん」
「ありがとう! これ、報酬だよ!」
ミランダから依頼の報酬であるニャ銅貨を数枚受け取ると、ノラは少し照れくさそうに口を開いた。
「ミランダ……お菓子買ってきた……一緒にたべよ……」
先ほど買ったお菓子を取り出し、ミランダに見せる。
「美味しそう! ノラちゃん待ってて! いつものコーヒー牛乳でいい?」
「…………うん」
ノラはミランダの作るコーヒー牛乳が好きで、こうして一緒にお茶をするときには、いつも楽しみにしていた。
やがて二人は、他愛のない話をしながら、ノラが買ってきたクッキーを食べ始めた。
「このお店のクッキー、美味しいのよねぇ」
ミランダはクッキーを美味しそうに頬張ると、ふと別のお菓子に目を留めた。
「あれ、これ見たことないお菓子!」
「……試作品だって……」
ミランダが手に取ったのは、ラスクのような見た目のお菓子だった。
ひと口食べると、その甘さと軽い食感に表情をほころばせる。
「ん! これも甘くてサクサクでおいし〜い!」
「……うん……」
ノラは、美味しそうにお菓子を食べるミランダの姿をじっと見つめていた。
「……また薬草取ってくる……」
「無理だけはしないでね。ノラちゃんとこうしてる時間、結構好きなの」
ミランダは少し心配そうにノラを見つめた。その言葉には、一緒に過ごす穏やかな時間を大切に思う気持ちがにじんでいた。
「…………うん」
ノラは照れくさそうに視線を落とし、コーヒー牛乳をひと口飲んだ。




