第9.5話 ノラの噂ー暴動ー
「明日になったらミランダさんに会えるよな」
冒険者のノラはそう呟き、静かに眠りについた。
翌朝、ノラは冒険者ギルドへ向かった。
ギルドの前に着くと、深呼吸したあと、大きくドアを開けた。
「ミランダさん!!」
ノラがドアを開けると、受付から眩しい光が差していた。
「おう! おはようさん!」
受付にいたのはガドーだった。
ノラは状況が飲み込めず、ぽかんとしていた。
「どうした? 依頼ならわんさかあるぞ! 好きなの選んでけよ!」
ガドーがニッと笑うと、ノラは我に返ったように焦り始めた。
(待て待て待て!! ガドーさんが受付だって!? まさかミランダさんはまだ帰ってきていないのか!?)
ノラがギルド内を見渡すと、すでに来ていたノラ達は全員しょんぼりと落ち込んでいた。
(ギルドの雰囲気は最悪だ……それに気にしてなさそうなガドーさん! ドアを開けた時から俺の目を潰そうとしてきたあの頭……くそっ! なんて腹立たしいんだ!!)
ノラはなんとか怒りを抑えようと、ぐっと拳を握り、歯を食いしばった。
しかし、とうとう抑えきれなくなった。
「ガドーさん! ミランダさんはどこなんです!?」
ノラは受付の机をドンッと叩き、今にも殴りかかりそうな拳を必死に抑えていた。
その大きな音に周りのノラ達は驚き、一斉に視線を向けた。
「おいおい! どうしたってんだ!? ミランダならまだ王城だぞ?」
ガドーは少し驚きながらも、冷静に答えた。
「僕は……僕はもう耐えられませんよ!! 王城に行って、ミランダさんを返してもらってきます!!」
「ま、まぁ、落ち着けって……」
ガドーがなんとか収めようとしたが、怒りが伝染するかのように、周りのノラ達も騒ぎ始めた。
その様子は、まるで怒った猫のように毛が逆立っているかのようだった。
「……騒がしい」
ギルドの奥からライデンが受付へやって来ると、ノラ達の怒りの視線は一斉にライデンへ向けられた。
「ライデンさんがいながらも、どうしてこうなっているんですか! ミランダさん一人も守れないんですか!!?」
ノラがそう言った瞬間、ライデンはノラの首を掴み、壁へと投げ飛ばした。
ノラは一瞬で吹き飛び、強い衝撃とともに壁へ叩きつけられた。
壁にぶつかったノラは血を吐き、その場にぐったりと倒れ込んだ。
ギルドの壁にはひびが入り、近くにあった物も衝撃で壊れていた。
「おい! ライデン! やりすぎだ!!」
ガドーは慌ててノラに駆け寄り、声をかけた。
「……他に言うことはあるか」
ライデンが倒れているノラに問いかけると、ノラは苦しそうに口を開いた。
「ゴホッ……! ……失礼な……ことを……言って、すみま……せん……でした」
(ははっ……こんなに強いライデンさんが守れないわけない。僕は取り乱して情けないな……)
先ほどまでの怒りはすっかり収まり、自分の情けなさに呆れ笑いを浮かべていた。
「……おい、治してやれ」
「は、はい!」
その場にいた聖職者のノラが慌てて駆け寄り、治癒魔法をかけた。
魔法の光に包まれると、ノラの傷はみるみるうちに癒えていった。
「……文句のある奴はかかってこい。相手をしてやる」
ライデンが周りを見渡すと、ノラ達はすっかり怯えていた。
(……死んじまうよ)
(手加減してあれだろ……? 俺が勝てるわけねぇ……)
(こ、こぇ~~~!!)
(……逃げたい……今この場からすぐに……)
ライデンはため息をつくと、ぽつりと話し出した。
「……今から迎えに行く。お前達は依頼を受けろ」
ライデンがそう言ってギルドを出ようとすると、治療を受けたノラが慌てて声を上げた。
「ま、待ってください! 僕たちは今日依頼を受けません! ミランダさんが帰るまでここで待ちます! それだけは! 譲れません!」
周りのノラ達も頷いているのを見て、ライデンは呆れた顔をしていた。
「……勝手にしろ」
そう言うと、ライデンはギルドを出ていった。
ライデンはギルドを出ると、先ほどのノラの言葉を思い出し、少しだけ微笑んだ。
ギルドに残されたノラ達の間には、しばらく静かな空気が流れていた。
すると、一人のノラが口を開いた。
「お、おい! お前! よく言った!」
「勇気あるよ! 俺たちの代わりに言いたいことを言ってくれてありがとう!」
周りのノラ達は、先ほどまで治療を受けていたノラを褒めていた。
「ヒヤヒヤしたぜ……お前ら、とんでもねぇよ」
ガドーはようやく安心したのか、ため息をついた。
「ライデンさんが迎えに行くってことは、今から帰ってくるんだろ!?」
「やっと解放される……俺たちの平和な日常……」
「外で待ってようぜ!!」
ノラ達はミランダの帰りが待ち遠しくなっていた。
「おい! お前ら! とりあえずここ直すの手伝え!」
ガドーが壊れた場所を指さして言った。
((ああ……そうだった))
ノラ達は手分けして、壊れた場所を直し始めた。




