第9話 番外編ー2人の距離ー
二人は王城からギルドへ帰る途中だった。
「マスター! 迎えに来てくれてありがとう!」
ミランダの笑顔を見たライデンは、安心した様子で彼女を見ていた。
「……ああ」
「たった一日だけだったけど、こんなに違うんだね……」
ミランダにとって、いつもと違う一日は思いのほかこたえていた。
「……ノラ達が騒がしくしている」
「そっか……そうだよね。皆も心配してくれてたんだね」
嬉しさと申し訳なさが入り混じり、ミランダはしゅんと落ち込んでいた。
「……皆に会いたい……」
ミランダがぽつりと言うと、ライデンは今朝のことを思い出したように話し始めた。
「……朝からノラ達が集まっていた。ミラが戻ってくるまでギルドで待つと言っていた」
それを聞いたミランダは驚いた顔をした後、嬉しそうに微笑んだ。
やがて、その瞳から涙がこぼれ、頬を伝っていった。
「ふふっ。ノラさん達はしょうがないんだから!」
笑顔を浮かべるミランダの頬には、嬉し涙が流れていた。
ライデンは指でそっと涙を拭うと、真剣な眼差しでミランダを見つめた。
「……こんな顔ではあいつらが心配して、また騒ぎを起こすだろう」
そう言うと、ライデンはミランダの腕を引き、人影の少ない場所へ移動して抱き寄せた。
「……ま、マスター……?」
抱き寄せられたミランダがライデンの顔を見ようと上を向くと、ライデンはミランダの頭をそっと撫でた。
「……今は誰もいない」
その言葉を聞いた途端、今まで堪えていた涙が、ミランダの瞳からぽろぽろとこぼれ落ちた。
泣き終わるまで、ライデンはミランダを安心させるように静かに見守っていた。
「……ぐすん。マスター……私ね……私は大丈夫って思ってた。でも違ったみたい。強がってただけだった。皆とご飯を食べたり、他愛のない話をしたり……当たり前のことが当たり前じゃなくなるのが、こんなにも怖い……」
ミランダは泣きながら、今の気持ちをライデンに伝えた。
「……そうか。なら俺のそばにいろ。そうすればミラの願いは叶う」
ライデンの言葉に安心したミランダは、涙を拭いながら小さく頷いた。
「マスター……帰ろっか」
ミランダがそう言うと、二人はギルドへ向かって歩き出した。
ギルドに近づくにつれ、遠くに冒険者のノラ達の姿が見えてきた。
「おーい! ミランダさーん!」
「ミランダさん! おかえりー!」
冒険者ギルドの外では、ノラ達が笑顔でミランダに手を振っていた。
「みんな!! ただいまー!!」
ミランダはノラ達の方へ走り出した。
その姿を見て、ライデンは少しだけ微笑んだ。
(……ミラがいないと駄目なのは俺の方だろう……)
ライデンの心はミランダより欲深かった。




