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受付嬢のうたた寝  作者: 雲丹猫
第1期
28/33

第8話 番外編ー2人の距離ー

ライデンは一人、考え込んでいた。


(……ミラを守る為の手は尽くせている。……が、手段は多い方がいいか……)


しばらく考えた後、ライデンは立ち上がり、ある場所へと向かった。


向かった先は魔法具店だった。


ライデンが店に入ると、気さくな店主が出迎えた。


「いらっしゃいませ。おや、ギルドマスターではありませんか。何をお探しですか?」


店主が尋ねると、ライデンは迷わず答えた。


「……通信の取れる魔法具だ」


「ああ。以前お作りさせていただいた、ギルドの水晶ですか?」


店主は、ギルドを閉めている時に使う水晶のことを指していた。


「……いや、あれは壊れていない。別のものはあるか」


「ええ、もちろん。水晶以外ですと、アクセサリーになりますね」


店主はライデンの前に、ネックレスと指輪を出して見せた。


「ネックレスと指輪がございます。ネックレスの方は、身につけている全ての人と通信が取れるようになっています。指輪は特定の人物とのみ通信が可能ですが、危険な時などに信号を送れるようになっています。ただ、少々値は張りますが……」


店主がそう言うと、ライデンは迷うことなく答えた。


「……こっちだ」


ライデンは指輪を指していた。


「かしこまりました。サイズなどはお分かりですか?」


店主に尋ねられ、ライデンは少し考え込んだ。


「お分かりにならないのでしたら、魔法でサイズを変えられるように致しましょうか?」


困っている様子のライデンを見て、店主は気を利かせて提案した。


「……ああ。頼む」


「指輪にはめる宝石はどう致しましょうか? お好きな色の宝石をはめることが出来ますよ」


「……何でも構わん」


ライデンは店主に任せることにした。


「でしたら、ギルドマスターの瞳と同じ黄色の宝石に致しましょう。夕方には出来上がりますので、また取りに来ていただけますか?」


「……ああ」


ライデンは店を後にし、夕刻まで仕事をしていた。


(……そろそろ取りに行くか)


仕事を終わらせると、再び魔法具店へ向かった。


ライデンが店の扉を開けると、店主がすぐに気づいた。


「お待ちしておりました、ギルドマスター。出来上がっておりますよ」


店主はライデンの前に、完成した二つの指輪を並べた。


ライデンは指輪を手に取り、じっと確認した。


「……ああ。問題ない。感謝する」


「よかったです。二つでニャ金貨10枚になります」


店主がそう言うと、ライデンは何事もなかったかのようにニャ金貨10枚を置いた。


「あっ……ええ。毎度ありがとうございます」


(……大抵はここで金額が高いと渋るお客様が多いのだが……さすがギルドマスターだ)


店主は少し驚き、ライデンの顔をちらりと見た。


「……何だ」


「い、いえ! 何でもございません!」


ライデンは二つの指輪を胸のポケットにしまった。


(誰に使うんだろうか……おっと、これ以上はお客様を詮索してはいけない!)


「またお待ちしております」


店主が笑顔で見送ると、ライデンは店を後にした。


――それからというもの、ライデンは度々、指輪のことを思い出していた。


「マスター! 私、依頼を受けたいです!」


ミランダが依頼を受けて外へ行きたいと言った時、ライデンは一緒に行くことにした。


(……傍にいるなら、必要ないな)


ライデンはそっと胸のポケットに手を添えた。


――また別の日。


ギルドの皆で夕食を取っていた時のこと。


「今日ね、グレイに騎士団を見学しに来ないかって言われたの」


ミランダが少し困った様子で言った。


「あんな堅苦しい所に行ってみたいの?♡」


ローザは騎士団のような堅苦しい場所が苦手のようだ。


「……少しだけ見てみたい。国を守ってる騎士団がどんなところなのか! そういえば、そこまで堅苦しくないって言ってたよ?」


「どうかしらねぇ?」


ローザは少し呆れた様子で答えた。


(……行くなら、渡しておくか。いや、俺が一緒に行けばいい)


ライデンは胸のポケットに目を落とし、少し考えた後、黙ってミランダを見ていた。


――そして、その時はある日突然訪れた。


「陛下からの呼び出しだ。だから借りていくよ」


グレイは、国の存亡に関わる事態にミランダが必要だと告げ、王城へ連れていこうとしていた。


(……国の存亡か。何故、危険な場所にミラを連れていく必要がある。こいつは信用しているが……)


ライデンが悶々と考えていると、支度を終えたミランダが戻ってきた。


不安そうな顔をしているミランダを見て、ライデンは胸騒ぎを覚えた。


(……準備していて正解だったな)


ライデンは胸のポケットから指輪を取り出すと、ミランダの手を取り、人差し指にはめた。


「……マスター? これは……?」


「……通信の取れる魔法具だ。些細なことでも構わない」


「マスターありがとう。私、これがあれば無敵だよ!」


ライデンはミランダの安心した顔を見て、胸騒ぎが収まっていくのを感じた。


ミランダを見送ると、ライデンはそっと自分の指にも指輪をはめた。


――その夜。


ライデンとローザは話をしていた。


「浮かない顔ね。もう帰ってきてもいい時間だけれどねぇ♡」


ライデンがため息をつくと、ローザはくすくすと笑った。


「……頼めるか」


「あらぁ?♡ 久しぶりにやるのね?♡」


ローザはニヤニヤしながら、ライデンに向かって指で呪文を描いた。


ポンッ!


すると、ライデンは猫の姿に変わった。


「ふふふ♡ 可愛いわね♡」


「……黙れ」


猫の姿になったライデンは、ローザを睨んでいた。


「一時間よ♡ 早めに戻ってくることね♡」


「……ああ」


ライデンは走り出し、王城へ向かった。


王城に着くと、呆気なく中へ入り込むことが出来た。


(……警備が緩い)


呆れながら城内をうろうろしていると、グレイとミランダが歩いているのを見つけた。


(……表情は明るい……か。問題なかったようだな)


その姿を見て安心したライデンは、ギルドへ帰っていった。


ギルドに戻ったライデンは人間の姿に戻り、先ほど見た光景を思い出していた。


(……俺が傍にいてやれないとはな……)


グレイとミランダが楽しそうにしていた姿を思い出すと、苛立ちが込み上げてきた。


自分の感情を上手くコントロール出来なくなっていたライデンは、冷静になろうとため息をついた。


(……そうか。俺はお前の事が……)


ライデンは窓の外、どこか遠くを眺めていた。

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