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受付嬢のうたた寝  作者: 雲丹猫
第1期
26/33

第8.5話 ノラの噂ー不機嫌なギルドー

ミランダとグレイはギルドから出ていった。


(おいおい……! 国王がミランダさんを呼び出し!? 大丈夫なのか!?)


(…………ミランダ…………)


(何かしたらただじゃおかないぞ……!!)


ギルドにいたノラ達は、出ていったミランダ達の姿を思い浮かべているのか、ドアをじっと眺めていた。


ふと我に返ったノラ達は、今の状況に背筋が凍った。


ドカッとライデンが受付に座ると、いつものギルドとは明らかに違う雰囲気が漂い始めた。


(……待ってくれ。ライデンさんが受付をするのか!?)


(生きて帰れるのか……わからなくなったぞ……)


(……気配を消して逃げるか……)


ノラ達がライデンの方を見ると、ライデンは険しい顔をしており、殺気を放っていた。


((……明らかに不機嫌……!!!))


ノラ達が固まっていると、ライデンが口を開いた。


「……お前達、今日の依頼は無しだ」


(……え? 本当に!?)


(窮地を逃れた……!!)


ノラ達はほっとしていた。


「ライデンさん、じゃあまた明日……」


一人のノラがそう言い出すと、ライデンは立ち上がった。


「……待て。依頼は無しと言ったが、帰っていいとは言っていない」


「……はい?」


ノラはポカンとしている。


「……全員、腕立て、上体起こし、素振りをそれぞれ10回。それを10セット繰り返せ」


(…………はい??)


「え、えっと……な、何故でしょうか……」


ノラが恐る恐るライデンに聞くと、今まで見たことがないほど恐ろしい殺気に、思わず心臓が止まりそうになる。


「……出来ないのか?」


「……デキマス」


ノラは咄嗟に答えてしまっていた。


((……こ、こぇ〜〜〜……!!!))


ギルドの受付周辺では、邪魔な物が退けられ、それぞれが筋トレを始めていた。


(……ふっ、俺は隠密が得意なんだ……今のうちに逃げるぞ!)


「……どこへ行く」


ライデンは逃げ出そうとしていたノラの首根っこを掴み、持ち上げた。


「……シュミマセン……」


「……100回追加だ」


逃げ出そうとしていたノラは、しくしくと泣きながら筋トレを始めた。


(……馬鹿だろ……あいつ)


(……逃げられるわけがないだろ!)


(大人しく従っていればいいものを……)


ノラ達は哀れみの目でそのノラを見ていた。


(……なんとかこの地獄の雰囲気を変えられないのか……)


雰囲気を変えたいと思ったノラがライデンを見ると、珍しいものが目に入った。


「ライデンさん。指輪なんて前からしてましたっけ? 綺麗ですね」


ノラがそう言うと、ライデンは指輪に目を落とした。


(……お? ……おお!???)


ライデンは指輪を眺め、何かを考えているようだったが、次第に殺気が強くなっていった。


「……100回追加だ」


(えええーーーー!? なんで!?)


ノラ達が苦しみながら筋トレをしていると、誰かがやって来た。


「よう! なにしてんだ?? お前ら!!」


笑顔のガドーだった。


(……助かったか)


ノラ達の目に希望の光が宿った。


「筋トレか! 筋トレってのはな! 軽くやっても意味がねぇんだ! こうだ! ほら! 真似してみろ!!」


ガドーがノラ達に指導し始めた。


(……鬼だ……)


(指導はいいからライデンさんをどうにかしてくれよ!!)


(もうだめだ……今日で俺は空に行くかもしれない……)


ノラ達は文句と諦めの気持ちでいっぱいになっていた。


そんなことを思っていると、ギルドのドアが開いた。


「あら〜♡ 何してるのかしら〜?♡」


ニコニコとしたローザがギルドにやって来た。


「ふふっ♡ 汗くさいわね〜♡ ここにミランダが戻ってきたら大変だわぁ♡ はいはい! あんた達! さっさと銭湯に入ってきなさい♡」


ローザがそう言うと、ノラ達の目からは自然と涙が溢れていた。


(……神はこっちだったか……)


(ローザさん……大好きです……)


解放されたことに安堵したノラ達は、ワラワラと銭湯へ向かっていった。


「ったく! 今いい所だったのによぉ!!」


ガドーは名残惜しそうにしていた。


「あんたは馬鹿ね〜♡」


ローザはくすくすと笑っていた。


銭湯では、ノラ達が湯船に浸かり、疲れを癒していた。


「……なんで急に筋トレなんか……」


ノラはぼやいていた。


「ははは! 遠回しでわからねぇよな! ギルドマスターは!」


古参のノラが笑っていた。


「わかるんですか?」


「まぁ、なんとなくな。要は力をつけろってことだな!!」


古参のノラは何かを察しているようだった。


「……だが、あんなに殺気があると、さすがの俺でも背筋が凍ったぜ……」


「……僕、死んじゃうかと思いましたよ!!」


二人はライデンの殺気を思い出し、ぞわっとしていた。


「なぁ。知ってるか? ギルドマスターは騎士団長より強いんだぜ」


「え!? そうなんですか!? ……でも今日の迫力を見たら納得できますね……」


ノラは初めて聞く事実に驚いたが、妙に納得していた。


「ニャオーン国随一の剣士だからなぁ。そんな人に指導してもらえるなら、ありがてぇもんよ……」


「ライデンさん……すごいですね……僕、冒険者になって本当によかった」


二人のノラはしみじみとしていた。

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