第6.5話 ノラの噂ー激励会ー
冒険者ギルドでは激励会が始まっていた。
「みなさ〜ん! 黒鉄の髭パーティが来たら乾杯しますよ〜!」
ミランダがニコニコと料理を運んでいた。
(今日は楽しくなりそうだ……! 依頼頑張った甲斐があるよ……!)
冒険者のノラがワクワクしていた。
「あいつらいつ来るんだ? こっちは待ちくたびれたぜ」
銀の爪のリーダーは、まだ来ない黒鉄の髭パーティに痺れを切らしていた。
「とっとと始めちまおうぜ!」
「もう! もうちょっとで来るから待っててください!」
ミランダが気の早い銀の爪のリーダーに怒っていた。
「ミランダがそう言うなら待つよ」
銀の爪のリーダーが渋々待っていると――
チリンチリン……とドアが開いた。
「お待たせしました〜」
黒鉄の髭パーティがやってきた。
(これは喧嘩になりそうだ……)
ノラがヒヤヒヤしながら、リーダー達の顔をチラチラと見ていた。
「……おせぇ」
銀の爪のリーダーがぽつりと言った。
「なんだって? 遅れてないぞ……!」
「ふんっ! 行動が遅せぇんだよ。みんな待ってんだぜ?」
銀の爪のリーダーと黒鉄の髭のリーダーが睨み合っていた。
「はいはい、みんな乾杯しよ〜!」
ミランダが間に入り、ニコニコとしていた。
(さすがミランダさん……)
ノラはミランダに尊敬の眼差しを向けていた。
「「「かんぱーい!!」」」
一気にギルド内が騒がしくなった。
シアンがそっと銀の爪のリーダーの横にちょこんと座った。
(……あれ? 今日のシアンさん、いつもと雰囲気が違うような……)
「お久しぶりですね。リーダー?」
「おう、シアンか。元気だったか? 今日も美人だな」
シアンはどこか嬉しそうだ。
「リーダーも元気そうで何よりです。最近はどちらに?」
「ワンワン国だ。集落がいっぱい出来てて、それの討伐だ」
「さすがですね」
「俺らのパーティにもシアンみたいな美人がいたら花が咲くってもんだぜ。どうだ?」
銀の爪のリーダーがシアンを口説いていた。
(銀の爪のリーダー、チャラすぎだよ……)
ノラがちらっと黒鉄の髭のリーダーを見ると、ものすごい形相をしていた。
「おい! シアンはあげないぞ! 僕の大切な仲間だ……! そんな野蛮な所に入れられるわけないだろ!!」
(黒鉄の髭のリーダー、かなり酔ってるな……いつもより威勢がいい……)
「野蛮だと……??」
銀の爪のリーダーの眉がぴくりと動いた。
(始まったよ……これ誰が止めるんだ……)
「てめぇがちんたらやってっから尻拭いをしてやってんのは誰だ? ああん?」
わずか3人で構成された銀の爪パーティは死を恐れず、仕事が早い。依頼の量は黒鉄の髭の倍は受けている。
「ちんたらだって!? みんなが安心して依頼に臨めるようにしているだけだ!!」
怒号が飛び交う中、ノラ達からは「やれやれ!」など、盛り上げるような野次が飛んでいた。
「シアンもシアンだ!! なんで今日はそんなおめかしして色気を出してるんだ!!」
黒鉄の髭のリーダーがシアンを指さした。
(やっぱりそうだよな!? 今日のシアンさん、いつも以上に色気がすごい……!)
「かわいいからいいだろうが!! 女はこういう事も楽しみの一環なんだよ。そんな事もわからないのか?」
銀の爪のリーダーの言葉に、シアンはキュンキュンして照れていた。
「ぐぬぬ……でもなんで! こいつの横に座るんだ!」
「シアンは俺といるほうが楽しいんだろ? なぁ?」
そう銀の爪のリーダーがシアンに視線を向けると、シアンが小さく頷いていた。
「ほらな?」
「なんだと……!!」
(可哀想な黒鉄の髭のリーダー……)
ノラは黒鉄の髭のリーダーに哀れみの顔で手を合わせていた。
今にも泣き出しそうな黒鉄の髭のリーダーの机に、ちょこんと食べ物が置かれた。
「…………美味しいよ…………」
黒鉄の髭のリーダーが横を見ると、いつもギルドにいる小柄な女性冒険者だった。
「うぅ……ありがとう……」
リーダーはお礼を言うと、置かれた食べ物をひと口食べた。
「……美味しい……」




