第6話ー黒鉄の髭ー
「冒険者ギルドってどこだっけ……」
彼は上級冒険者パーティのリーダーを務めるノラだ。
上級冒険者になるとパーティに名前が付けられるようになり、その名も「黒鉄の髭」である。
「リーダー、ここだよ」
パーティメンバーのノラがギルドを指さした。
「ええっ! これか! あれ!? 前はもっとボロボロじゃなかったっけ!?」
「建て直したと噂になってたでしょ」
「そ……そっか」
チリンチリン……
ギルドのドアを開けると、中は活気に溢れていた。
「こんなに変わったんだな……」
「すごい綺麗になったね」
ギルドの受付を見ると、猫がいた。
「ギル! これ頼むぜ!」
冒険者ギルドにいたノラが、受付にいるギルに話しかけている。
「にゃ〜ん」
ギルはそう返事をすると動き出し、手続きの紙をくわえた。
「お、おお! 今は猫が受付をするんだな……!?」
黒鉄の髭のリーダーが驚いていた。
「あ! 黒鉄の髭じゃないか! 帰ってきたんだ!」
ギルドにいたノラが話しかけてきた。
黒鉄の髭は、剣士のリーダー、魔法使い、弓使い、聖職者の4人で構成されたパーティだ。
「ミランダはいないの?」
聖職者のノラは、話しかけてきたノラに聞いた。
「いるよ! おーい! ミランダさーん!」
ノラは大きな声でミランダを呼んだ。
「はーい!」
奥の方からミランダが走ってやってくる。
「あ! シアンだぁ! おかえり〜〜!!」
ミランダは聖職者のノラ、シアンに抱きついた。
「ただいま〜! 元気にしてた?」
「元気だったよ! シアンも無事でよかったぁ!」
ミランダは嬉しそうだ。
「相変わらず、仲がいいな……」
黒鉄の髭のリーダーがぼそっと言った。
「あ、客間に案内するよ! マスターに報告するんだよね!」
ミランダはそう言うと、黒鉄の髭を客間へ案内した。
「マスター呼んでくるから、ちょっと待ってて!」
そう言って、ミランダはライデンを呼びに行った。
「ミランダさん……僕たちのこと、ほとんど見てなかったよ」
「シアンにしか興味がないんだろ……」
リーダーと弓使いと魔法使いが、じとーっとシアンを見る。
「名前も覚えてもらえてないでしょうね」
シアンはニッと笑って答えた。
その言葉に、他の3人はずーんと落ち込んだ。
((シアン……いいなぁ……))
シアンを羨ましそうに見ていると、ガチャッとドアが開いた。
「……久しいな」
そう言うと、ライデンが対面の椅子に座った。
「あぁ、ライデンさん。ご無沙汰してます」
「……報告しろ」
黒鉄の髭は、ニャオーン国に新しくできたダンジョンの攻略に行っており、数ヶ月にわたって攻略した内容をライデンに報告した。
「……ご苦労だった」
「大変だったんですよ……!!!」
黒鉄の髭のリーダーが半泣きでライデンに言った。
「……数日後に銀の爪が帰ってくる」
「えっ!?」
「銀の爪」――黒鉄の髭とは別の上級冒険者パーティだ。
ニャオーン国には、この二つの上級冒険者パーティがある。
「……嫌か」
「だって! 僕たちを見下してるんです!」
どうやら、あまり仲が良くないようだ。
黒鉄の髭は補助に優れた安定型のパーティであり、銀の爪は攻撃を重視した戦闘向きのパーティである。
「……ガドーが激励会を……」
「激励会!? パーティーですか!?」
ライデンがぼそっと言うと、リーダーのノラは目をキラキラと輝かせた。
「……ああ」
ノラの食いつきに、ライデンは少し引いた。
「……とにかく、数日ゆっくりしろ」
「やったー!!」
黒鉄の髭のノラたちは喜んだ。
そして客間を後にし、受付へ戻ると、ミランダと騎士団長が話していた。
「あれ? 騎士団長?」
「やぁ、久しぶりだね」
(いつにも増してかっこいいな……)
黒鉄の髭のリーダーは、グレイを見て惚れ惚れとしている。
「こんな所で何してるんです?」
「最近よく来るんだ。ミランダに会いにね」
(えっ……! グレイさん、まさかミランダさんを狙って……!?)
リーダーのノラがミランダへ目を向けると、彼女は少し嫌そうな顔をしていた。
(明らかに嫌がっているじゃないか……)
「そうでしたか……でも珍しいですね? 団長って女性は苦手ではありませんでしたか?」
「ミランダは俺のことを一人の男として見てくれているからな。君はミランダの良さがわからないか?」
「そんな! まさか……! 僕は……」
リーダーのノラは、少し前のことを思い出していた。
少し前――。
「ミランダさん! 僕の名前覚えてくれましたか?」
キラーンと格好つけながら、リーダーのノラがミランダを見ている。
「ええ! もちろん! 黒鉄の髭のリーダーのノラさんだね!」
それを聞いて、リーダーのノラはガクッとして半べそをかいていた。
(名前覚えてくれていない過去を思い出すと、今でも泣けるよ……)
「僕は……ミランダさんは素敵だと思っています」
「だろう?」
グレイがコクコクと頷いている。
「ミランダ、好きな物はなんだ? 今度持ってくるよ」
そうグレイがミランダに尋ねると、ミランダは黒鉄の髭のリーダーの後ろに隠れ、そこからチラッとグレイを睨んだ。
「なにか企んでいるのね……!? 餌付けなんて効かないんだからねっ!」
ミランダがグレイと話をしている中、リーダーのノラは後ろに隠れているミランダが可愛くてドキドキしていた。
(……僕のすぐ後ろにミランダさんが……か、可愛い……この状況、一生続いてほしい……団長ありがとう……)
「なぜ後ろに隠れる?」
「どう考えたって怪しいもん!」
「そういえば、この間、猫の形をした美味しいケーキを見つけたのだが……」
え!? と言わんばかりに、ミランダが嬉しそうな顔をしてグレイに食いついた。
「どこ! どこにあるの!?」
ミランダはキラキラとした目でグレイに尋ねている。
それを見たグレイは笑っている。
「今度連れて行ってあげよう」
「行きたい! やった〜!」
ミランダがはしゃいでいる。
リーダーのノラは、自分の背中から離れていったミランダを惜しそうに見つめていた。
(2人は気付いていないだろうが……冒険者達の顔が怖い……)
周りの冒険者達は、グレイに殺気を飛ばすような視線を送っていた。
(2人は楽しそうだし、いいか……)




