第4話 番外編ー2人の距離ー
(毎日、冒険者さん達頑張ってるなぁ……そういえば私、街から出たことがないなぁ……)
ミランダは戦うことができないため、これまで危険な場所には行かないようにしていた。
(冒険者さん達がどんな風に依頼をこなしてるのか、気になるなぁ。よし! 私も依頼を受けてみよう!)
コンコン……と、ミランダはライデンの部屋をノックした。
「……何だ?」
「マスター! 私、依頼を受けてもいいですか?」
「……駄目だ」
やっぱり? と言いたげな顔で、ミランダがライデンを見る。
「街の外も見てみたいし、冒険者さん達がどんな風に依頼をしてるのか、自分でも知りたいんです」
そう言うと、ライデンは小さくため息をついた。
「……同行する。いいな?」
「はい……!!」
ミランダは嬉しそうに部屋へ戻り、すぐに準備を始めた。
しばらくして――
「準備万端!!」
動きやすい服に着替えたミランダは、ライデンと一緒に街の外へ向かった。
「うわぁ〜! こんなに広いんだ……!」
街を出ると、目の前には広い草原が広がっていた。
初めて見る景色に、ミランダは目を輝かせる。
「……あまり離れるな」
ライデンはそんなミランダを心配そうに見ていた。
「はぁい!」
依頼書に書かれていた薬草が生えている場所へ向かい、ミランダはさっそく辺りを探し始めた。
「う〜〜ん……それっぽい薬草、ないなぁ……」
草むらをガサガサと探していると、何かがぴょこんと飛び出した。
「……ん? 何この子! かわいい!」
ウサギのような可愛らしい生き物を、ミランダは嬉しそうに持ち上げる。
その様子を見たライデンは近づくと、ミランダが抱えているそれの首根っこを摘み上げ、そのままぽいっと草むらへ投げた。
「……あれは魔物だ」
「え! そうなんだ……!」
どうやら可愛らしい見た目をした魔物だったらしい。
(……危なっかしいな……)
ライデンは、ますますミランダから目を離せなくなった。
それからしばらく薬草を探し続け――
「あったー!」
ようやく依頼書に載っていた薬草を見つけた。
「マスター! あったよー!」
採った薬草を高く掲げながら、ミランダが嬉しそうにライデンの方へ駆け寄る。
その時――
ミランダの後ろに、ゴブリンの姿が見えた。
ライデンはすぐさま剣を抜き、ミランダへ近づこうとしていたゴブリンを斬った。
「えっ……」
何が起きたのか分からず、ミランダはその場に立ち尽くす。
「……帰るぞ」
「……」
倒れているゴブリンを見た途端、ミランダの顔から血の気が引いた。
(……あれ、私……)
足元がふらつく。
「……ミラ!」
倒れそうになったミランダを、ライデンが咄嗟に支えた。
「……マスター……」
そのままミランダは気を失ってしまった。
ライデンはミランダを抱きかかえると、その場を離れ、街へ戻ることにした。
帰る途中――
ライデンの腕の中で、ミランダがゆっくりと目を開けた。
「……マスター……」
「……何だ」
「ありがとう」
「……ああ」
それ以上、二人は何も言わなかった。
ミランダはそのままライデンに抱かれ、ギルドへと帰っていく。
(……マスターに抱かれてると安心する……ちょっと恥ずかしいけど……)
ギルドへ戻った二人は、今日の出来事を話していた。
「……怖かったぁ。あんな所にゴブリンがいたなんて……マスターがいてくれてよかった……」
「……あそこに出るのはかなり珍しい」
どうやら今回の薬草採取は、普段なら人を襲うような魔物がほとんど現れない場所で行う依頼だったらしい。
「……もう行くな」
「うん……もう行かない」
ミランダはしょんぼりと俯いた。
少しして、もう一度ライデンを見る。
「マスター、本当にありがとう。でね、あのね……」
何か言いたそうに、ミランダがもごもごとしている。
ライデンはそんなミランダをしばらく見つめた。
「……構わん」
ミランダはぱっと顔を上げると、嬉しそうに笑った。
また二人の距離が、少しずつ近づいていくのであった。




