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受付嬢のうたた寝  作者: 雲丹猫
第1期
11/33

第4話ー雨の日の出会いー

「今日は雨がすごい……」


外では、ザーザーと激しい雨が降り続いている。


(マスターに言って、今日は早めにギルドを閉めようかな?)


コンコン――


ライデンの部屋のドアをノックする。


「マスター、ミランダです」


「……ああ、何だ」


部屋では、ライデンが書類の処理をしていた。


「マスター、雨がひどいですから、今日はもうギルドを閉めてもいいですか?」


「……ああ。水晶を忘れるなよ」


ライデンが言っている水晶とは、緊急時に使う連絡用の水晶のことだ。


夜など、ギルドを閉めている間は外に置いておき、水晶に手をかざすとライデンと連絡が取れるようになっている。


「はぁい」


ミランダはライデンの部屋を後にし、ギルドを閉める作業を始めた。


(こういう雨の日って、銭湯に行く人が多いのよね! ローザさん、今日は忙しくなるだろうな……)


ゴンゴン!


ガチャ!


ガドーのいる解体屋のドアを叩き、そのまま開ける。


「おう! ミランダ! 飯にしてはちいと早いぞ?」


ガドーが笑っている。


「違うよ! 雨がひどいから、ギルドもう閉めるからね!」


ミランダはムッとしながら答えた。


「おう、そうかそうか!」


ガドーにそう伝えると、ミランダは水晶を外に置きに向かった。


「屋根ができてよかった……!」


建て替え前、ギルドの入り口には屋根が付いていなかったが、ライデンが配慮して付けてくれたのだ。


ミランダは土台に水晶を置いた。


「これでよし! ……ん? なんだろう、これ……?」


そこには、雨に濡れた黒くドロドロした丸いものがあった。


ミランダは恐る恐る近寄り、じっと見つめる。


(本当にこれ、なに……?)


ツンツン……


ミランダが指先でつついてみると、黒いドロドロした丸いものがピクッと動き、小さく震えている。


(これ……生き物だ!! 大変!! このままじゃ死んじゃう……!)


ミランダは慌ててその生き物を抱え、銭湯へ走った。


ガラガラ……!


「いらっしゃ〜〜い♡ ……ん? ミランダじゃなぁい。あらやだ! どうしたの!?」


黒いドロドロを抱えて走ってきたせいで、ミランダの服まで汚れていた。


「ローザ! これ、生き物みたいなの!」


「ふぅん?」


ローザは、ミランダが抱えている生き物をじっと見る。


「大丈夫よ♡」


そして、そっと手をかざした。

淡い光が生き物を包む。


黒いドロドロの生き物の震えが止まった。


「とりあえず、一緒に入っていらっしゃいよ。ちょうど今は誰もいないから、ね?」


「ありがとう!」


ミランダはそのまま風呂場へ向かった。


(ローザが診てくれたし……ひとまず大丈夫そう。よかった……)


ミランダは少し大きめの桶にお湯をため、そっと生き物を入れた。


「にゃー……」


小さな鳴き声が聞こえた。


青い瞳をした猫だった。


「あなた、猫さんだったのね……」


ミランダは優しく、体に付いた汚れを落としていく。


(すごく大人しい……あれ? 黒いドロドロが取れたところ、白くなってる! もしかして白猫かな?)


さらに優しく洗っていく。


「あれ? 顔の黒いのが取れないや……他にもまだ黒いところが……あ! この子、シャム猫なんだ!」


「にゃー!」


少し元気になってきたようだった。


シャム猫は桶のお湯が気持ちいいのか、その中でくつろいでいる。


(気持ちよかったんだ……かわいい)


その間にミランダも汚れた体を洗い、猫と一緒に脱衣所へ向かった。


脱衣所には、ミランダの着替えとタオルが数枚置いてあった。


(ローザが準備してくれたんだ! この子の分もある。さすがだなぁ。後でお礼言わなくちゃ!)


ミランダは体を拭いて着替えると、シャム猫の体もタオルで優しく拭いていく。


「ここで乾かそうね!」


脱衣所には水晶が置かれている。この水晶は、手をかざすと風魔法が発動するものだ。


ミランダが水晶に手をかざす。


ブワッ!!


温かな風が二人を包み、ミランダの髪もシャム猫の毛も、あっという間に乾いていく。


「これ、便利だよね〜!!」


ミランダはシャム猫にニコニコと笑いかけた。


「にゃー」


(前の世界にあったら、最高の一品だよね!)


ミランダとシャム猫は脱衣所を出た。


「ローザ! 服とタオルありがとう!」


ミランダは受付にいるローザに言った。


「いいえ〜♡ あら、その子シャム猫だったのねぇ」


「そうみたい……」


「ともかく、ご飯にしましょ♡ もちろん、その子もね」


ローザがウインクしながら言った。


「うん!」


そう言って、ミランダとローザ、そしてシャム猫はガドーのところへ向かった。


ガチャ……


ドアを開けると、ガドーとライデンとママがいた。


「おう! 出来てるぞ!」


並べられたご飯を見て、ミランダの顔がぱっと明るくなる。


「お前はこれな!」


ガドーがシャム猫の前にご飯を置いた。


スンスン……


匂いを嗅いだあと、シャム猫はガツガツと食べ始めた。


「よく食うな! うまいか? いっぱい食えよ!」


ガドーがニカッと笑う。


「にゃ〜ん」


シャム猫がガドーに返事をするように鳴いた。


「マスター、今晩この子と一緒に寝ていいですか?」


ミランダが恐る恐るライデンに聞いた。


「……好きにしろ」


ライデンがそう言うと、ミランダの顔が明るくなった。


その光景を見て、ローザがクスクスと笑っている。


みんなでご飯を食べ終わり、ミランダとシャム猫は部屋へ戻った。


ミランダがベッドに転がると、シャム猫もぴょんと飛び乗り、そばに寄ってくる。


「かわいい……今日はここで一緒に寝ようね!」


そう言うと、わかったと言うようにシャム猫が、


「にゃー」


と返事をした。


「名前がないと不便だね……ギルドで出会ったし、ギルっていうのはどう?」


ミランダがシャム猫に問いかける。


「にゃー」


ギルはミランダの顔にスリスリと頬を寄せた。


(気に入ってくれたみたい……)


その夜、ミランダとギルは静かに眠った。


それから――


ギルはずっとミランダのそばにいた。


「ギル! ちょっと買い物行ってくるから、受付よろしくね!」


「にゃーん」


わかったと返事をしたように鳴いた。


一緒に過ごしていくうちに、いつしかギルは冒険者ギルドの看板猫になっていた。

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