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薄紫の君と若草の王女様~君の為の30年~  作者: 颯待彗
04 一緒に駆け抜けて
26/29

026 桜色の姫

 ウェーリア王国はレームス半島の中心部に存在する大国だった。西に大山脈、東に閉鎖国家のウェール王国の深き闇の森を抱えていて、南北の境目と言っても過言では無かった。


 大山脈の麓に村があった。その村の外れ、大山脈にかかる森林地帯の中にひっそりと塔は建っている。その塔の下に人が3人到着した。


「大丈夫?お兄ちゃん」

「問題ないが……おいロトス。お前もうちょい持つとか労われ」

「お断りしま~すっと」


 わいわいと彼らは塔に入る。その喧騒を塔の主は本を読みながら、ゆっくりと聞いていた。階段を駆け上がる音が近付いてくる。


「おはようございますフィオ様。今ご飯作りますね」

「おはようございますウィータ。いつもありがとうございます。レイエルさんとロトスさんも大変でしょう?村から荷物を運ぶのは」

「そこまでは。と言うと横のがさらにサボりそうなので自重しておきます」

「おやおや」


 薄いピンクの髪を揺らし、ウェーリア王国第1王女、フィオ・ホロスコープは笑う。王城で育てられること7年、麓の村で育てられること3年、塔に幽閉されること7年。フィオは長らくこの塔で暮らしていた。


「あぁ、フィオ様。コレ、ご用命の本」

「まぁっ早かったですわねっ」

「まぁ伝手で」

「ありがとうございます」


 本を大事に受け取るフィオ。彼女の娯楽は本と、食料を運んできてくれる村人の取り留めもない話。その担当が2週間前に彼らに代わってから話題は劇的に増えた。何せレイエル・ラージレットと言う2週間前に村に文献を求めてやってきたという青年は大体の事を知っていた。父王の手によって廃れて久しい自然魔術の本など要らないのではないかと思うぐらい、彼は何でも知っていた。それはレイエルの同行者、妹のウィータ・ラージレットと相方だというロトス・スマラグティも同じこと。出身はレームス半島より西の方という話だったがもっと遠い気がしていた。


「はいフィオ様。熱いので気を付けて」

「ありがとうございますウィータ」


 和気藹々と女性陣が食事をとり始めたその瞬間、レイエルが弾かれたかのように窓辺に寄った。


「誰か来ている」

「付けられた気配はありませんでしたが」

「自力で来たって事だろうな……行ってくる。ウィータは此処に」

「わかった」


 一本道の階段を降り、レイエルとロトスはギィと開く扉の音に足を止める。入ってきたのは青年だった。片方の目を赤銅色の髪で隠し、見えている目は夜を映したような紺色。剣には手をかけておらず、それ所か両手を上げた。


「アンタ達が最近姫様の世話役に入ったって言う馬鹿みたいに強い2人組で間違いない?」

「……その評をするってことはアスディルとリガスに会ったな?」

「あぁ。村人は王家の徽章なんて見た事無いから通じなかったところで助かったよ」

「……徽章?」


 胸元から出されたのはウェーリア王国の紋章が入った徽章。訝し気に青年を見るレイエルに、青年は笑った。


「レッド・ディスロード。こう見えて傭兵で、見ての通り王命を受けてここに来ている」

「傭兵なのは納得しよう。かなりの手練れであることもな」

「おや、わかるとはすごいね」

「見ればな。だが王命とは?」

「フィオ・ホロスコープ姫を王城にお連れする事。国を横断することになるから2週間はかかるけどね。俺は馬使ったから1週間で何とか来られたけれども」

「……どう思う?ロトス」

「徽章をお持ちなのは事実。ならば僕らが護衛してフィオ姫をお送りすれば良いだけの話では?」

「それもそうか。そろそろアスディル達に頼んでいた文献の写本も終わるだろうさ」

「まぁ、俺も道中お姫様を守る手は多い方が良いと思う人間なのでそれはありがたい」

「良いだろう。姫も、それで良いですね?」


 トンっとフィオが降りてくる。ウィータもフィオを守れる場所に立っていて、そのフィオは徽章を見ると笑った。


「呪われた髪色の子、お父様はついに処断する決意が付きまして?」

「一応、そう言う訳では無いと仰せつかっている。ただ役割を果たしてほしいとの事だ」

「役割、ですか……わかりました。条件は、レイエルご一行を連れていくこと。それでよろしいですね?」

「あぁ。俺の認識では5人だったが」

「間違いない」

「んじゃ、7人という大所帯になりますが揃って王都トローンへ」


 そこからはあわただしく旅支度に入る。まず塔の中の荷物を持ち出し村で必要なモノを仕分ける。カバンに詰め、育ててくれた村長夫婦に別れを告げ、村で文献を写す作業を完遂したアスディルとリガスと合流。辻馬車で一路トローンへの長い馬車旅が始まった。




 さて。話は2週間前に遡る。フィオが居る村の周辺を霄狐(しょうぐ)に探索させ、フィオが現在幽閉中の身であることを改めて確認したレイエル率いる救出班はとりあえず姫がこの村を出ることになるその日まで自然な形で待機することを決めた。村に秘蔵されている自然魔術の書、それを見に来た来訪者として村に入る。年齢層の高い村に現れた姫と同年代の少女という事もあり命(みこと)改めウィータが姫の臨時世話役に抜擢される。世話役の老婦人が腰を痛めていたのもレイエル達にとっては幸いだった。そして村の見張りをアスディルと栖雅(さいが)改めリガスに任せ、レイエルと柑(けん)改めロトスはごく自然な形でフィオと接触、2週間で自分たちの存在を慣らしていた。


『うにうに。よきよき』


 のん気に今回は栖雅のブレスレットの飾りに擬態する霄狐。なのになぜかその声はレイエルの方にも響いていた。


『とりまこの方向で良いと思うに。がんばっていこ~』


 馬車旅で反応できないのを承知で霄狐は暢気にしっぽの部分にだけになった飾りを振り回す。聞こえているレイエルと栖雅はのん気だなと苦笑い。その反応で霄狐の言が分かった柑も苦笑いだった。


「それにしても……結構快適旅」

「あぁ。ここに来るときも思ったんだが、辻馬車網凄いなレームス半島」

「あぁ。辻馬車網は名前の通り網のように張り巡らされていてね、かなり正確な時間で行き来が可能な構造になっている。レームス半島の同盟国すべて……いや半分ぐらい帝国寄りのミニエラとか閉鎖国家のウェール王国も使ってるからほぼ全土か……とにかくその規模で張り巡らされているんだ。同盟国で使ってないのは大山脈の西にある砂漠のクォレーンぐらいじゃないかな?」

「たしか、リースイ様が5年前に提唱なさって、便利さに一気に普及したはずですわね」

「そ。アレストロ王国の第2王女、リースイ・J・アレルイス様はかなりの改革を半島にもたらしているよね」


 知っている、とレイエルは思った。辻馬車網は巻き戻しの前に梓翠(しすい)と、他ならぬ自分の手で完成させた理論なのだから。記憶がもしなくても、梓翠ならば自力で開発できただろう。それでも懐かしい響きにレイエルは乗った。


「俺等、帝国の更に西から来てるんだ。文献求めて色々行って、帝国経由してヴォルペに入って、その辻馬車網でウェーリアへ」

「そうなんだ」

「えぇ。だからすごく物知りで」

「それでもこの半島の事はまだあまり知らないも同義。色々話してくれると……家の妹が喜ぶ」

「是非っ」

「私も、今のレームス半島の情勢はよく判って居ませんから。お話してくださいますと嬉しいですわ」

「そう?まぁ俺は半島中心に動く傭兵だから西はクォレーン、東はアレンシェル自治区、南はヴォルペ、北はアレストロ。全部行ってる自信はあるよ」

「やったっえっじゃあそのリースイ様のお話聞きたいですっ」

「私も、小さい頃一度だけお会いしたことのある程度ですから、お話伺いたいですわ」

「いいよ」


 この様子ならばウィータはリースイ王女の事をほとんど知らないだろう。だからとレッドは基本的な情報から始めることにした。


「アレストロ王国第2王女、リースイ・J・アレルイス。初めての半島への貢献は5歳の頃と言われているね」

「ごさい」

「私がお会いしたのは6歳のリースイ様ですからその1年前ですわね」

「うん。最初の偉業は流通薬草植物の完全管理制度」

「……確かに、レームス半島はアレストロ王国を中心に薬草の一大産地だ。でもそんなの可能なのか?」

「そうなんだ、アスディル君」

「俺も詳しくは知らないが意外と可能だったっぽい。それぞれの市場で厳正に管理され、禁止成分の薬草は処分、他国、主に帝国だな。そこへの輸出量も制限された。貿易大国ヴォルペにはダメージのように思われたけど、何が何だか分からない市場がすっきりしたと女帝様もご満悦だったそうだよ」

「へぇ……5歳でそんな事出来るんですね」

「その翌年、私が5歳の時に王城でリースイ様にお会いしていますの。1つ上とは思えないほど凛としていらっしゃって、今でも憧れの方ですわ」

「だろうね。んで、8歳、10年前に行ったのが半島全土に出した毒白粉禁止令。アレでリースイ王女の名前広まったよね」

「どくおしろい」

「化粧品の中で化粧水と仕上げの白粉に人体には毒の成分が含まれていて、実際その化粧品で亡くなる女性も出ていたそうだよ。女性の体調不良の原因はコルセットか化粧品かの2択って言われたぐらいにね。んで、リースイ王女は安価に誰でも作れる肌にも本体にも優しい化粧品を開発して半島全土に普及させた。アレぐらいは帝国に輸出してもいいと思うんだけど……帝国が受け取らないだろうからなぁ……」


 アスディルが見えない位置で頷く。吹き出しそうになりながらもレイエルは前の時に知っていて今回もそうであると調べてある事実を口にした。


「帝国は半島側からの輸出品を殆ど受け取らないからな」

「そ。その癖自国の輸出品は大量に送り込んでくる。迷惑な国だよ」

「フェーヤ帝国……ね……確かに通りかかって滞在もしたが、不思議な国だったよ」

「へぇ……っと、リースイ王女の話だったね。で、あとの有名どころは13歳の時に提唱した、辻馬車網の制定。これは完全に普及して今に至っている」

「凄い王女様も居たものですね……会ってみたいなぁ……」

「私も、大きくなってもう一度会ってみたかったですわね」

「……会えるよ。特にフィオ様は」

「……そうですかね?」

「ん。あぁほら、見えてきた。ヴァルの町だ」


 遠くに町が見えてくる。小さな辻馬車の旅は町に付くことで終わりとなる。


「ロトス、リガス、ウィータ。姫を頼むわ。宿探さにゃならん」

「だね。頼める?」

「えぇ、お任せを」


 命が居るという好条件で男性陣はレイエルとレッドが同室、柑、栖雅、アスディルが同室という形で部屋を取る。鍵を受け取るとレッドはフィオ達を待たせている広場の方に足を向けた。


「じゃあ、姫たち呼んでくるね」

「頼むレッド」


 残ったのはアスディルとレイエル。愛称呼びも一旦封印しての任務の為ちょっとご不満なアスディルだった。


「ぶ~」

「はいはい。どう思う?こっから見たフェーヤ帝国」

「超変な国」

「おう出身者」

「だって事実じゃん。柑と話した時もだけど国内禁止植物を自国で自生していたからって理由で他国に送りつける国だよ??」

「こっちにも入ってそうだけどな。んで5歳のお姫様の敷いた統制網で返り討ちか」

「それはそれで愉快」

「おい出身者」


 やがてレッドに連れられフィオ達がやってくる。その手には市場で売られていたであろう食品があった。ふとレイエルは気付く。直接あの村に降り立った自分たち。食料は自給自足の手伝いをしていただいていたがこの国の通貨は持っていないのではないだろうか。宿代は王城から金を貰っていたレッド持ちだがと考える。そんなレイエルの気配に、柑は笑った。横の栖雅は苦笑い。そして事情は霄狐によって代弁された。


『柑君がね、あの収納魔法に隠してた宝石売っぱらって3年位全員が優雅に過ごせる金捻出してるなり。お姉ちゃんもあの金額はビックリ。あ、レームス半島共通の通貨だってさ』

「……そりゃ、豪勢な事だ」

「ん?」

「何でもない」


 次の宿代は柑に出させようかと考えるレイエルを他所に、一行は宿に入る。ご飯も頂き、部屋に入る。レイエルとレッドはこれからの旅路を確認していった。


「最短はこの経路だが」

「今この村は使えない。盗賊に襲われて焼かれたそうだ……辻馬車自体は通るけれどもそんな所をフィオ様に見せられないだろう?」

「一理ある。じゃあ荷物多くなるのを覚悟でこの経路か」

「だね……炊事に自信は?」

「ロトスとアスディルが結構。手順教わればウィータとリガス、俺も問題ない」

「そりゃよかった」

「……その口調はアレか、炊事に自信無しと」

「長らく放置した干し肉美味しくないよね~」

「ったく……明日出立する前にロトスとアスディル、あとお前とリガスは姫と一緒に食料や調理器具なんかの買い出し。俺とウィータは炊事準備しておく」

「ありがたい」


 レッドは笑う。だがその笑顔の下ではレイエルに斬りかかる機会を伺っていた。人伝に聞いただけの実力、連れていくかどうか判断したかった。だが、その隙がレイエルには一切無い。しばらく伺っていたが潔く諦めて隠し持っていた短刀から手を離す。


「なんだ、諦めるのか?」

「……隙が無さ過ぎ。俺じゃ無理だよ」

「その判断が出来るだけお前さんは実力がある方だと思うがな」

「それはどうも」


 物騒な攻防もあるがその日は穏やかな夜になる。こうしてレイエル一行とフィオ、レッドの旅路は始まった。




 降り立った直後の話になる。アレストロ王国の首都オリクトにて深皇は何をするにも金銭が要るという事に気が付き楓(かえで)とティリアと深皇(しんおう)は顔を見合わせていた。


「どうするの?アウィス様が王城の方に仕込みをしたとは言え、滞在費とか必要になるわよ?柑が居たのならばあのなんかよく判んない道具入れになっている収納魔法から何か取り出されるだろうけれども」

「う~ん……一応僕も収納魔法あって、でもほとんど何も入っていないんだよねぇ……」

「その辺忘れていた……流石にこのピンチは霄狐さん察知してくれないよね」

「だよね……」


 とりあえずと3人噴水の横に座る。深皇も人間の体になって降り立っているので市場の方から漂ってくる美味しそうな匂いにお腹がぐぅと空腹を訴えた。


「……仕込み早く気付かれて……」

「ホントそれ」


 パタパタと少年が噴水に近付いてくる。カバンには大量の新聞を持ったその少年は端に合った台に乗った。


「新聞だよっ銅貨1枚っ」


 わらわらと少年の元に新聞を求めて人々が集まる。識字率が良いのだなとほとんどの天使たちが字を読める天界から来た深皇は感心する。やがて人が捌け、残った新聞を持った少年は3人を見た。


「……新聞、要る?」

「読みたい気持ちはやまやまなんだけれども」

「私達、オリクトまでたどり着けたのは良いものの旅費使い切っちゃったのよ。しばらくここに滞在しなきゃいけないのに」

「……じゃあ、仕事要る?」

「要る、めっちゃ要る」

「貸本屋のじっちゃんが腰療養したいからお店休みたいんだってさ。あと俺の新聞処、本当は新聞売りを別の人に任せて俺は記事書くのに集中したい」

「……えっコレ君が書いたの!?」

「驚き」

「俺ぐらいの子供でも大人と同じ仕事に就けるのがアレストロ王国だよ。あと母さんの経理手伝ってくれると嬉しい」

「……手分けしよう」

「私経理手伝うわ。まぁなんとかなるでしょう」

「私貸本屋手伝うっ体力勝負の方が性に合ってるっ」

「んじゃ、僕は新聞売りしましょうかね。滞在の理由、目立つことに意味はあるから」

「じゃあよろしく。俺はウラノ」

「アルセよ。よろしく」

「ティリアだよっ」

「アウィス。今日からよろしくねウラノ君」


 新聞社の少年ウラノに拾われた3人。滞在も新聞社と相成った。ティリアは隣の貸本屋で腰の療養を始めた老店主の代わりに営業を続ける。楓ことアルセはウラノの母であるセーラと共に経理を行う。そして、服も何もかもを人間に擬態した深皇は今日も新聞売りに出ていた。


「新聞ですよ~っ銅貨1枚っ」

「おぉアウィスさん。今日もせいが出るね」

「お仕事として頼まれていますので。これぐらいはね」

「1部お願いしますっ」

「は~いっ」


 最高神が人間の仕事をするなと後で関係各所から怒られそうだなと思いながらも深皇は笑う。目立つことに、意味はあるのだから。


「お、おいアレ」

「若草色……すぐに陛下にご報告を」


 そんな見回りの近衛兵の声に、深皇は笑った。




 トンっと彼はその場所に降り立った。葉も幹も黒い魔界の木、その幹を飲み込む形で塀が生えている。円形に塀は広場を包み、天幕をいくつも設置している姿が見て取れた。


「史真(ししん)様っもう少し後でも大丈夫でしたのに」

「サイル、この顔、書類から逃げたかっただけ」

「……状況は?思ったよりも広くは無いな」

「そ、それはぼくからせつめいさせてほしいに~」

「と、申していますのでシュネから」

「にう。木は見ての通り生やすことが出来たのだけれどもこの土地ほんっとうに魔界の力と相性最悪ちゃんで僕の全力を使ってもこの大きさが限度。シンザでも広げられないと思うなり」

「そうですね。俺じゃ大きい天幕1つが限度かと」

「……狭くとも居住区とするには十分か。いや、ご苦労」

「に~……やっぱやすむ」

「はいはい」


 ふらふらとシュネは己の天幕らしき場所に雪崩れ込む。その姿に手抜きした様子はなく、真実この大きさがこのレームス半島で淫魔組が出せる出力なのだと史真は認識した。


「史真様用の天幕は如何いたしましょうか」

「いや、確か先ほど魔界の木に洞が開いていた。特権でそこを使わせてもらおうか」

「じゃあ綺麗にしてきますっ」

「転ぶなよ~」


 サイルが整えた木の洞に史真は入る。人1人入るにはちょうど良く、体を休めるという行為に対してはちょうど良いと思った次の瞬間、書類が来た。


「逃げられるとお思いですか??」

「……実に惜しいな」

「はいさっさとやるっ侵攻開始しても書類は待ってくれないんですからねっ」


 積まれた書類を粛々と洞の中で片付ける史真。片付けさせているシンザは溜息を吐きながら傍の枝に乗った。


「ひとまず予定通り半年後レームス半島へフェーヤ帝国の侵攻が叶います。今全土に走らせている魔族が情報を持って帰って薄紫の君の動向が分かったのならば」

「し~んざっっと?史真様ここでも書類ちゃん」

「アマダスちゃん、何ごと?」

「シンザの予想通り、薄紫の君、降り立ってるって。でもなんか最高神も居るっぽい」

「え」

「……若草色の」

「天魔大戦の時の映像見てた奴が言っているので間違いないかと。なんかアレストロ王国の首都オリクトで新聞売ってたって。全員で二度見したらしい」

「……そりゃ、二度見するわな……薄紫の君は?」

「ウェーリア王国の王女様が幽閉されている塔の近くの村に入ったって。どうする?」

「ん~……ウェーリア待機班に連絡、薄紫の君が通過したら連絡入れて」

「通過だけで良き?」

「相対したら消し炭になる」

「それはそう」

「最高神の方は如何いたしましょう?新聞売っているとはいえそれ相応の護衛は付けているはず」

「……そうだな……無策でレイエルがアレを放置するとは思えない。アレストロの首都待機の者に継続して見張りをと」

「承知いたしました」

「ではではっ」


 枝を伝ってアマダスが降りていく。シュネとはまた違う元気さにシンザは再び溜息を吐いた。


「……新聞売り……」

「あ、地味にツボに嵌まっていらっしゃった」

「上級天使時代のアレならば想像は容易い。だが最高神にまでなってとはな。これが愉快と言う感情か」

「おそらくそうかと。ちなみに、史真様が日々書類に追われていると知られた場合レイエルさんと最高神殿に愉快と言う感情どころかレイエルさんに至っては爆笑されること間違いなしですが」

「……書類が来るのが悪いとは思わないか?」

「来てしまうので何とも言えませんね。はいさっさと片付けるっ此処で決戦となった時に書類あったら格好がつかないでしょうっ」

「……わかっている」


 新聞売りをする最高神、現場臨場しても書類に追われる魔王。どちらも大差なく、両方愉快というモノ。レイエルの行先、シンザの予想では王都の方角のはず。ならばその先で待ち構えて、相対するのは怖いが、会ってみるのも良いかもしれないと、シンザは今後の予定を立てていった。









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