022 準備と霄狐
剣が撃ち合わさる。天界の演練場。そこで彼女達は戦っていた。それぞれがそれぞれ、思い思いに故郷の衣装を改造し、纏っている。
「はぁぁっ」
「っまだです、よっ」
命たちが天界に来てから2年半が経過した。期限まであと7年。レイエル、というか柑は天界軍をも巻き込んで3人の戦闘訓練としていた。
「これ、でっ」
「っ」
剣が弾かれる。それはコラキエルの剣。成した命は肩で息を吐いていた。
「……流石に、ちょっと凹みます」
「頑張れコラキエル。お前さんもよくやってる方だって」
「いや、レイエル様、こう、たおやかな女性に負けたとあれば」
「命、一番力ないもんね」
「コラキエルさんっまだ私等残ってるんだからねっ」
「わかっています。とにかく柑様、命さん合格です」
「はいよくできました。じゃあ後は術関連ですね」
「な~んか柑には様付いて俺には何も無しって不服」
「必要か?アスディル」
「必要なし。久しぶりにやろうぜコラキエルっ」
コラキエルとアスディルの対戦が始まる。そんな光景を深皇は廊下から見ていた。レイエルがその視線に振り返る。
「入ってくれば良いのに」
「なんとなくね。ちょっと良いかな?」
「あぁ。相棒!あと頼んだ」
「えぇ、お任せを」
向かったのは執務室。広げられたのはビアへエルからの報告書。
「……やっぱり、見当たらない、か」
「うん……」
彼女達を連れて来た理由、天界の質量の変化はある程度戻った。だが理想値には少しだけ足りない。ならばと同じ領域に達している人物を探せど探せど居ない。これは目下の大問題だった。
「レイエル。どう思う?」
「……質量は課題だな。ビアへエルには引き続き人間界の見張りを。そういやレームス半島とフェーヤ帝国どうなった?」
「……それが、ですね?レームス半島には魔族、主に淫魔だったけど、根付かなかったんですよ。フェーヤ帝国の方、ガッツリ根付いてほぼ皇帝陛下傀儡」
「おぉぅ……」
「……女性陣には内緒で」
「任せろ」
「アスディルが言っていたと思うんだけれども、帝都、年齢によって住む場所も決められ交流の場所も1ヶ所だと」
「言ってたな。外の町の奴等は変だなで済んだようだが」
「……その、一定年齢以上が住める街では淫行が横行している。それも王城ぐるみで酷い状態だ」
「……淫魔との相性は良さそうだな」
「うん……反逆一族見せしめの凌辱台って言うのが一番ひどかった。具体的に言わないけれども視たビアへエルが吐いた。消化機能殆ど無いのに」
「相当だな……で?そんな淫行甚だしい皇帝陛下が淫魔の傀儡に?」
まだ梓翠は11歳の筈。だが彼の皇帝は9歳の梓翠を求めた男。進軍が早まるのを危惧した。
「うん。今は国内に魔族、やっぱり淫魔だね。その栄養源に成りそうな、王都に入れる貴族領を中心に侵攻を強めている。何をしたいかは判らないが、帝国の掌握にはまだ時間が掛かるんじゃないかな」
「そうか……何かあったら、知らせてほしい」
「うん。わかった」
そう言えば、とドアの所に立つ。聞いてきていいのに、聞き出す方法もあるのに、深皇は自分に聞いてこない。
「?どうかしたかな?」
「……聞かないのか?俺の、望みの事」
「聞きたいけれどもね、聞かないことにしているんです」
「理由は?」
「……その場所に、僕も連れて行ってほしいから」
「………………は?」
「レイエルが望みをかなえる場所、きっとレームス半島のどこかだろう?その、望みを叶える場所に、僕も連れて行ってほしい。それが、清晃様の代わりに僕が出来る、唯一の事だから。一番知りたがっているの、清晃様だろうし……あ、でも先々代殿も知りたがるかも……だから多分魔族差し向けているわけだし……」
大親友の名を出されたなら、完敗だった。これはもう少し女子組とアスディルを鍛え上げて、自分も鍛えねばと思う所だった。
「……ん。そう言う理由なら、連れて行ってやらんことはない」
「やったっなので、そう言う時だけ連絡お願いしますっ」
「おう、まぁ、足手纏いにだけはなるなよ?」
「善処します」
執務室を出て、レイエルは演練場に戻る。やらねばならないことが、増えたのだから。
魔界、魔王の城。史真は執務室で書類仕事に勤しんでいた。何せやらねば怒られる。だが退屈になってきたので逃げようとそっと窓の方に足を向けた。
「空気の入れ替えですか?書類飛びますよ?史真様」
「シンザ……お前は私の書類に関してだけ未来視が使えるのか?」
「未来視など無くても、そろそろだなぁと思って来たのならば逃しはしませんよ」
「…………ならば何か退屈でない話を置いて行け」
「では、愉快な話と、不愉快な話を2つ」
仕方なし、書類仕事に戻る史真。幽界から清晃を連れてこられないかなと考えているとシンザは扉を閉めた。
「まず、不愉快な話。シュネの事です」
「確かに私は邪魔だと思う者を上げろと命じた。だが、邪魔は邪魔でも上澄みの邪魔だった、という話だったな」
「えぇ。そして、サイルを排除しようとしている傾向が見受けられます」
「……サイルを?」
「淫魔の泉5倍事件、お耳に入っていると思いましたが」
「あぁ、そもそもあれだけの光を魔界で目にすることも無いからな」
「えぇ。その時、真っ先にサイルに話しかけたのはシュネだったそうなのですが、後ろ手に短刀を持っていたという証言があります」
「……流石に、サイルを害されると、私のやる気に繋がるな」
「それ目当て、かと」
サイルは史真に付き従うと決めている一番の部下。それは何が合っても変らない。そんな彼が害され、消されたなら。清晃の時よりも哀しむという感情に支配されるだろう。
「続いて、ユクロの事なのですが」
「……あれは……流石に私も初めて観測する感情に名付けることは叶わないのだが」
「なんと言うか……どちらかと言えば信仰の部類に入る感情なんですよね。手元に置きたいとか犯したいとかそう言う感情ではなくもう立っているだけでそれだけで応援したいという感情。正直、手元に置きたいという感情ならば、さっさと叶えれば問題無いのですが……」
「応援、あるいは信仰という感情ならば厄介か……注視してくれ」
「承知いたしました」
この件に関して言えば淫魔主力組全員の悩みの種だった。誰が何を言っても聞かず動かず顧みず。その最強とうたわれた精神を、『彼女』を推すことにすべて費やしていた。
「で、面白い情報、サイルの事です」
「それだけで面白いという感情に至る事は確約だな。何をやった?」
「試しに食魔の木、夢魔の竪穴に連れて行き、曲作って歌わせたところ5倍効果現れました。と言っても相変わらず夢魔も食魔も弱いのでそのままで、泉で3曲ぐらい作って歌えとアマダス辺りにぺちぺちやられている所です」
「そうか」
その光景は容易に想像がついて、史真ですら愉快な心持になる。相変わらず表情はないが。
「そう言えば、史真様はご存じでしたか?サイルの歌の能力に」
「能力には気付いていなかった。だが、アレは天界の神殿に存在する楽隊に所属していたのだが、あまりの技巧の高さから合唱から外されていてな」
「……1人だけ、超絶技巧の持ち主だった、と」
「あぁ。それで1人練習している所を聞きに行っていたのがレイエルでな。レイエルが興味を持つという状態が初めてだったので私の補佐に招き入れた。特級天使になっても何度か歌っているのを聞いたことがある」
「ふむ……天界の力は至る所に満ちている、方や淫魔の泉、食魔の木、夢魔の竪穴、それ等にしか力のない魔界……魔力濃度の違い……いやでも天界時代も力があった可能性もあるのか……」
「色々考察出来そうで何よりだ」
「これは失礼。では、俺はぺちぺちがベちべちにならない内に戻ります。なのでっ」
「わかっている。飽きないよう努力しよう」
「努力じゃなくて、飽きないでくださいっ」
ドアが閉められる。書類をやってくれていた補佐の大切さを感じながら、史真は書類仕事に戻っていった。
その頃、淫魔の泉にて。
「……振ったらあと5曲ぐらい出そうじゃない?アイツ」
「流石に振っても出ません~っ出てもあと1曲~」
「出るのかよ」
「出るみたいじゃね」
アマダスのぺちぺちにより3曲作り上げたサイル。泉だけで言うならばあと1曲が限界だなと思いながら威力20倍増しの泉を見た。自分にこんな力があったこと、未だに実感がわかない。
「……レイエル……」
「薄紫の君が如何したって?」
「シンザ。戻ってたのか。史真様のご様子は?」
「机に縛り付けて置いた」
「不敬」
「で、薄紫の君がどうしたって?」
「ん~……昔さ、1人で練習してる時、レイエルが良く聞きに来てたんだ。なんか聞いてると元気出るって言って。それとこれとは流石に関係ないよなぁっと」
「意外とあるかもよ?」
「へ!?」
「と、言う訳で、サフィロ~っサイルで実験しよう~っ」
「良いわよ~?」
「良く無いが!?」
シンザとサフィロに連行されるサイル。実験コンビに捕まったが最後と主力組は手を合わせる。その後ろでシュネが若干苦々しい顔をしているのを見たのは、シンザだけだった。
天界、上級街の市場で女子3人組は真剣に屋台の1つを見ていた。そこは装飾品を売るお店。
「……駄目だ、あの顔が良い男、何つけても似合いそうで」
「わかる」
「あはは……でもわかっちゃう」
楓は貴族の姫君特有の長い髪を腰までの長さに切っている。今、楓の長い髪と命の楓ほどではないが長い髪を纏めている髪飾りはレイエルの物。アスディルが地上から持ってきたものと聞き、本人はまだあるからと答えたが、普段の礼に叩き付けねば気が済まなかった。レイエルが長かった時の少し長い筒状の髪飾りを借りている楓は東の装飾を気に入っていた。
「う~ん……あ、逆に、自分が付けたい物選んでみるとか」
「自分が」
「付けたい」
ふむと3人は店に目を戻す。そしておもむろに三者三様の髪飾りを手に取った。
「これ、だね」
「えぇ」
「うん、お兄さんこれ下さいっ」
「あいよっ」
アスディルにも装飾品ではないが似たような品を見繕い帰宅の途につく。なおお礼に関しては柑には先手を打たれ、丁重に断られていた。
「ただいま」
「おかえり」
図書館の手伝い当番は交代制。開ける日、司書のレイエルは常駐で、後は交代。今日は男性陣が手伝いだった。
そして図書館の閉館の時間。中級天使たちもすっかり髪の短いレイエルに慣れ、帰っていく。
「レイエル」
「なんだ?」
「とりあえず黙ってこれを受け取りなさいこの馬鹿」
「……お、おう」
並んでいたのは黒の装飾が施された髪飾り、白の彫り模様に透かしが入った髪飾り、緑の石がはめ込まれた髪飾りの3種だった。
「一応名目上は日ごろのお礼」
「……おう……でも良いのか?お前等使わなくて。俺今髪短いし」
「良いの。何時かこうなんかの理由で伸びた時にでも使ってよ」
「まぁ天使ならありうるだろうし。その時にでも」
「うんっほら、私達コレ貰っちゃってるし」
「……わか……った」
「あとアスディル。コレ」
「ポーチ?」
「気付いて居ないだろうけど、その主に使ってる奴、ボロボロよ?」
「ほら、故郷から持ってきたポーチ、大事にしなきゃってことで」
「無くしたり壊したりする前にと思って」
「……ありがとう……え、柑には?」
「僕は先んじてお礼は不要と」
「あ、ずるっ」
「抜け目ないな相棒殿……」
「ふふっ」
カランと髪飾り同士が鳴る。またこの髪が長くなることがあるかどうかは置いておいて、コレはコレで、嬉しかった。
「くそぅいつか柑にもお礼の何かをぶつけたい」
「お礼ってぶつける物だっけ?」
「わからんが、まぁ、そう言う事なんだろうよ」
そしてレイエルの髪飾り入れに新しい髪飾りが並び、アスディルのポーチは新しいものとなった。勿論アスディルの前のポーチは大事に自室の机の上に保管されている。
楓、命、ティリアの3人が来てから5年の月日が経過した。相変わらず質量を戻すための人材は見つからず、魔族はフェーヤ帝国を掌握するので忙しい。そんな、ある日の事だった。
レイエル達は全員揃って現在の状況把握について呼ばれ、最高神の間に居た。
「以上です。質問は?」
「特にないが……?」
一瞬の静寂。そこに鈴の音が響き渡る。戦闘態勢に入るが得物は遠くスパスィエルの武器庫で点検中。最悪素手でと思いながら警戒して居ると、視界の端に、銀色の狐が現れた。
「えっ?!」
「えっ狐!?なんで?」
自分以外も、視えている。だが、その色彩にも、そして、狐という存在にも、心当たりがあり過ぎた。
「……霄狐……なのか?」
『……まぁそう言う事だね。『久しぶり』レイエル・ラージレット』
「……『久しぶり』だな……ピソ=霄狐」
一歩前に出る。と、瞬間霄狐は飛び、レイエルの頭の上に乗った。だが、その体重は全く感じられないモノ。重くないとはいえ邪魔だと思いながらレイエルは頭の上から霄狐を落そうと努力する。だがそんなことは歯牙にもかけず霄狐は深皇を見た。
『という訳で改めて自己紹介。原初の神が1柱、ピソ=霄狐だ。お初にお目にかかるよ、深皇=アウィス・プラエタリタ』
「……僕の即位に、何かご不満でも?」
『いいや?清晃殿が願っただろう?原初の神に。今応じてあげられるの僕だけだから、僕が君を最高神に据えた。そう言う事だね』
「や~っぱり。清晃の時のカササギ、お前か」
『まぁ、レイエル君ならばアレで正しい敵を認識してくれるかなと』
「……あの場の敵が先々代殿であったのが正しかった、と?」
『うん。まぁそこは追々。っと、でだ、深皇殿、天界の質量、戻す人間を御所望かい?』
「……えぇ。ですが」
『彼女達のような人材はいない。でも、こういう人材はどうだろう……このピソ=霄狐の力を使いこなせる魂の持ち主、とかね』
「そんな人材が」
『居る』
どうでもいいが頭の上でしゃべるなと思い追い払おうとしても霄狐は器用に除ける。諦めたレイエルは土台に徹した。
『深皇殿、レイエル君はその願いとは別に煌鵲を探すよう、僕から依頼をされているんだ』
「あ、だからさっき、久しぶりって」
「……原初の神を探してますなんて言えないだろ……ちなみに霄狐、命、未来視持ってるが。あと限定的だったがティリアも」
『ふむふむ……う~ん……残念。確かに稀有な能力ではあるが、普通の女の子だ、僕が保証しよう』
「そうか」
『で、だ。煌鵲を探す一番の近道はこの僕の力を使う事。対方位だし、力も対。楽勝なん、だけれども……実はとある術を行使した際、魂3つに分けちゃって、今これ3つの内の1個』
「え」
あの大技の術を行使した対価が3つで済んでよかったとレイエルは考える。最悪10個ぐらいには分裂すると思っていた。それほどの大魔術だったのだから。
「そっち、見つかりそうか?」
『うん、目当ては付いて居る。んでだ、なぜこの局面で僕が出て来たか。それはレイエル君の願いにも関係がある事だ。レイエル君が願いを叶えるのと、僕が3つを1つにするのと、煌鵲が見つかるのは同時が理想的。でも、真ん中、3つを1つにするのはなかなか大変。そこで必要なのは接着剤、糊に当たる、僕の力を使いこなせる魂の持ち主だ。それが居てくれれば僕は何時でも融合できる』
「……なるほど、接着する人材を先に手に入れて欲しいと。そしてその人材は異端が故に天界の質量戻しに役立つ。そう言う訳ですね?」
『そう言う事です。おやおや、玲鵬柑君、何やら不満顔。レイエル君が原初の神を探して居たって言うのを言わなかった理由は真実さっき彼が言った通りだよ?』
「……そもそも、原初の神という存在について、疑問視致します。確かに神力は先々代殿を上回りますが」
「俺だってまともにこいつが原初の神って信じたわけじゃねぇよ」
『信用されないねぇ……ま、レイエル君だし良いんだけれども』
「……まぁ良いでしょう。元の御姿に戻った際は一手手合わせお願いできますでしょうか」
「あ、ズルいっ俺もやるからなっ」
『はいはい。無事にレイエル君が願いを叶え、僕が僕に戻り、そして煌鵲を見つけた暁にはね』
狐はレイエルの頭の上で器用にくつろぐ。問題は、この後だった。
『んでだ、レイエル君の願いが近付いている中、その接着剤君も鍛えたいであろう柑君の為にも早く上げたい』
「そうですね……対象はわかっているのですよね?」
『うん、場所は華国。普通の村に住む道士くずれの青年だ。もちろん、仙境に所属したことなど無い。仙境は』
「……25年前、壊滅した。ですね」
『そう言う事。そして、彼はその壊滅事件に関して非常に重要な役割を担うことになる。間接的ではあるけれどもね』
「……柑は、出さない方が?」
『理想、だけれども』
「行きます。ここで見ているより、現場で相対した方が衝撃は少ないでしょうし消し飛ばせば問題無し」
『わぁ脳筋……レイエル君、レイエル君より脳筋が居るよ?』
「でっかいお世話だ霄狐」
コロコロと狐にはあるまじき声帯をもって狐は笑う。ひとしきり笑った後てしてしとレイエルの頭を叩いた。もちろんそこに質量はない。
『あとできればレイエル君も行ってもらいたい。何故なら姿隠しを使って僕も一緒に行くから』
「……了解。襟巻にでも擬態してろ」
『ひどい。で、あともう1人ぐらい欲しい所』
「あ、じゃあ私行きたいですっ」
『柊命ちゃんだね。志願理由は?』
「えっと、純粋に華国行きたかったからですっ」
『簡素な理由だ。よろしい』
「良いのかよ」
またひとしきり笑った後、シャンっと鈴の音がまた鳴った。
『はい、武器持ったね~』
慌てて腕を見ると収納ブレスレットがそこにはあった。作っていないはずの、緑色の命の分のブレスレットも装備されている。
「この中に?」
「手当てて出ろって念じれば出る。詳しくはあの2人参照」
「わかりましたっ」
『よきよき……では、いざ行かん華国に~っ』
ふっと最高神の間から3人が消える。そしてビアへエルが居ないにもかかわらず水鏡が開いた。3人と1匹は竹が生えるどこかの山奥に転移したようで、レイエルは触れないのを承知で霄狐を殴っていた。
「……と、とりあえずビアへエルに。あと、スパスィエルに3人の武器が無いけれども安心してって伝えて」
「わ、わかりました」
「……なに、え、神様ってもっと自由な存在なの??」
「俺も判らん……」
残された3人は深皇の指示通りに動いていく。そんな中、深皇は真剣な眼差しで霄狐が開いた水鏡を見ていた。
フッと、目が開く。そこは25倍増しされた淫魔の泉、そのほとんど中央に彼女は浮いていた。
「……なんじゃ……もう接触するん?せっかち過ぎじゃて……」
じゃぷんと一度大きく浸かる。そして顔を出した。相方が、呼んでいた。
「しゅ~ね~っ」
「今行くエクリちゃんっ」
泳ぎ切り、泉から上がる。もちろんこの泉も服も体も濡れない。それでも気持ち髪を振り、揺らす。
「どうしたに?エクリちゃん」
「なんと聞いて驚けっサイルの歌、傷の治りを早くする効果を手に入れたっ」
「……でジマ??」
「マジマジっ流石に傷をすぐに治すとか、致命傷を治すとかは無理だったけど後衛治療に最高だってシンザ喜んでたよ」
「そっか。じゃあサイル君後方?」
「そこは譲らぬサイル。前衛だって」
「にぃ……ユクロの件があるし、前方にサイル君みたいなの入れておきたくないんじゃが」
「まぁ、仕方ない。頑張って、前衛班班長っ」
「任されぃ」
シュネはエクリと別れ、再び泉の中に入る。頭の中で、組み立てた内容を整理するのにこの泉はうってつけなのだ。
「……あぁ、でもそうじゃね……前衛に居た方が、弾除けで使っても自然じゃね」
彼女には彼女にしかわからない思惑がある。だから、サイルには居なくなってもらった方が良い、そして、出来ればユクロも居なくなってほしい。だから、あの時自分はごく自然な形で彼女を彼に見せた。きっと、とんでもなく気に入るから。それは現実となり、今彼は彼女に夢中。魔王も側近も頭を痛めるほどだった。
「……さてさて……あと5年……長いようで短い年月を、どう過ごすか、考えますかね」
そうしてシュネはぷかぷかと浮かびながら、考え続ける。どうしたら、最高に楽しくなるかを。彼女にとってそれが一番重要な事だった。
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