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薄紫の君と若草の王女様~君の為の30年~  作者: 颯待彗
03 君の為の30年 ‐2‐
21/21

021 どこにもいなかった

 伏士(ふし)の町。それは桜の国で一番立派な山である伏士の山の麓にある武家の町。帯刀した武士が至る所を歩き、商人や農民は息をひそめて暮らすその町に、荷車は入っていった。


「おい、そこに荷車、何を運んでいる」


 武士の1人が声をかける。だが男たちは動揺もしない。何せ自分たちの背後には彼が付いて居るのだから。


(ひいらぎ)家の(みこと)様から頼まれた品です。傷一つ付ける事許されない貴重な品ですが」

「そっそうか、うむ、行っていいぞ、尊様にどうかよしなにと」

「えぇ」


 何事もなかったかのように荷車は町で一番大きな社に入っていく。そして裏口に入ると、掛けていたむしろを外した。そこに居るのは町に入る際、眠らされた(みこと)。運び込まれた先は命の自室。


「んっ……ぁ……ここ」

「命様、お着替えを。お兄様がお待ちでございます」

「ぁ……」

「お早く」


 使用人の手が震えている。自分が早く着替えて向かわねば、この使用人は殺されるだろう。兄の尊はそう言う性格だった。


「……わかりました」


 己も震える手で社に居る時にずっと着ていた巫女服に着替える。嫌がらせを兼ねて千早も着た正装で向かってくれようと思えるようになったのはレイエルとの特訓の日々のお陰。未だに兄は怖いが、それでも、勇気は貰った。


「……参ります。どちらに」

「本殿です」


 いくつもの廊下を経由し、本殿に入る。そこで、お神酒を煽り、座っている5つ上の青年が居た。


「コレはお兄様、お久しゅうございます、お変わりの無いようで何より」

「……お前は変わったなぁ?命」

「そうでしょうか?」

「まぁ良い……命」

「はい」

「しばらく石牢入りを命ずる。次の新月、5日後まで居ろ、良いな」

「……否と、申しましたら?」

「言える立場だと、思っているのか?」


 パリンと、盃が割られる。男の手は命の結わいた髪を引っ張り、そのまま引き倒し、馬乗りになった。


「お前がっ私に何か言える立場か!?矮小で何もない、ただの小娘がっお前はただ僕のいう事を聞いて居ればいいっそれなのに勝手に逃げ出してっ」

「っ」

「あぁ罰も忘れていたな。飯は最小限だ。死なない程度には与えてやるから泣いて感謝するがいいっ」


 尊は命から降り、使用人たちに命を運ばせる。ついに、ついに準備が整った。あの触手生物に命を捧げ、そして魔物にこの町の人間を食らわせ、自分は、未来視の力を、特別な力を、手に入れるのだ。


 一方、石牢に入れられた命。出された粥をどうしようかと考えて、食した。生贄にするのが目的ならば毒など入れてこないだろう。それに、最悪、自分であの触手を倒してしまえばいいのだと命は考え付いた。レイエルに鍛えられること5ヶ月ほど。自信も付いてきた、レイエルからも筋が良いと言われている。それに、噂に名高きとても厳しいらしい相棒はきっとその程度自分で何とかしなさいと言うだろう。儀式の形を取るならば剣ぐらいあるだろう。それで、レイエルの来る時間を稼げば良いだけの事。その為には、少しの食事でも完食して、力を付けておかねばならなかった。


「……でも……」


 桜の国の料理法を貸本屋で見たと言い、何度かレイエルも雑炊を作ってくれたことがある。自分とは違うその優しい味の雑炊が、なんとなく、無性に食べたくなった。




 伏士の町。レイエルが辿り着いたのは命が運ばれてから3日後の事。命が町にある社の出身であることは5ヶ月間一緒に暮らしていて話をしていた為認識できている。居るであろう社を確認し、情報を仕入れるべく、茶屋に入った。団子と茶を出され、一息つくと、丁度良く後ろの客が話をしていた。


「しっ大きな声を出すんじゃないよ、兄の尊様に聞かれたらどうするんだい」

「で、でも、妹の命様が、石牢に入れられたって」

「妹の命様、この半年の間伏士の山に修行に行かれていたんだろう?なんだっていきなり石牢なんだよ」

「知らないよ。しかも給仕の者曰く、妹の命様への食事は最小限だって言うんだよ。兄の尊様の命令とあっても不憫で仕方が無いよ……」


 帰還方法も強引だが、いきなり妹を石牢に入れる過激な兄も居たものだとレイエルは認識した。それにしても同じ『みこと』と言う音を兄妹に付けるだろうか。聞きたかったが、通りが騒めいた。


「兄の尊様がお出でだよっ」

「か、隠れなきゃっ」

「そ、そこのお兄さんもっ」

「……え、俺も?」


 何やら流儀があるのならばとレイエルも物陰に身を隠す。そっと様子を見れば、確かに命と同じ薄茶色の髪の青年がお供を連れて歩いている。一行が通り過ぎると茶屋の人々は息を吐いた。


「……何事だ?」

「お兄さん、伏士の町は初めてかい?」

「あぁ」

「アレはこの町を実質治めている柊神社の宮司、柊尊様。私等は兄の尊様と呼ぶがね」

「兄の、という事は」

「そう。妹の命様も居らっしゃる」

「なんで同じ名前を?」

「……町じゃ有名な話なんだけどね、どちらのみこと様も先代宮司に拾われた子だって言うんだよ。偶然同じ音の字を身につけた状態でね……」

「そうなんだ……で、さっきのアレはなんだ?」

「兄の尊様は、それはそれは苛烈な性格でいらっしゃって……自分の歩みを止めたという理由で武士であろうと切って捨てる御仁なのさ」

「……そりゃ物騒だ」


 武家の社会では武士と言う存在を頂点に形成されている社会だった。その頂点を切って捨てるとは、この町の社の力の強さが伺えた。


「妹の命様はとても愛らしくお優しい性格なのに……それに、妹の命様は先視の力を持っていらっしゃるんだ」

「先視……先のことを視る、と」

「あぁ。その力をもって、3年前、この町を襲った病を退けてくれたんだ。もっとも、妹の命様の力を信じなかった先代たちは、その病で亡くなられたがね」

「伏士の町以外にも薬を届けさせようとしたんだけど、信じてもらえなくてね。あの時の妹の命様のお顔は、忘れられないなぁ……」

「……そうか」

「ところでお兄さん、何しに伏士の町に?」

「あぁ。妹を探して桜の国中を旅しているんだ。生き別れた妹」

「そうかい……そうだ、妹の命様が外に出して貰えたのならば視てもらうといい」

「あぁ。そうしてみるよ」


 代金を支払い、店を出る。だいぶ情報は集まった。薬草学に精通していたのはその病を退ける為に方法を視えた年から模索し続けた結果だろう。武芸といい、忙しいなと笑いが零れる。


 夜、レイエルは認識阻害と暗視の術を駆使、そして探査魔法を展開する。親友を探すのに使っていた術式をまた使う日が来るとはと思いながら、レイエルは石牢の裏に辿り着いた。人が居ないことを確認し認識阻害と人避けを3重張りして、薄く削った岩越しではあるが声をかける。


「命」

「おに、じゃないレイエルさん!?」

「静かに」

「あ、はい……辿り着いたんですね……なんと言うか流石です……」

「ま、馬は酷使しすぎて震えてたけどな」

「私を攫った人たちの方が酷いですよ。馬使い潰してここまで着たんですから」

「そっか」


 変わらない命に一旦は安堵する。だが町の人の話によれば命は最小限の食事しか与えられていない。どうしたものかと考えているとコンコンと岩が叩かれた。


「レイエルさん、明日、日が沈むころ、正式に助けに来て貰えますか?」

「いい、けど」

「そうしたら私の本当のやりたいことをお話します。それさえ叶えば私は天界へ参りましょう」

「……わかった、明日の夕方だな?」

「はい、よろしくお願いいたします」


 岩壁からそっと離れた気配を感じ、命はポロリと涙を零した。来てくれた。こんなにも早く。自分でやればいいと思っていても怖かった。だってあんな触手だらけの生き物、見たことがない。蛇型の魔物と聞いて、どれほどの大きさの化け物が出て来るのか、怖くて怖くて。でも、彼は来てくれた。


「……ありがとう、お兄ちゃん」


 もう、命の兄は彼だった。本当は薄紫色の髪で、武芸は強く、何でもこなせる、優しい彼。親愛以上の感情を向けたかった。だが、命の未来視はそこで止めておけと、兄妹という特別に納まることで止めておけと言っていた。ならば、それで良い。妹という特別は、もう、誰にも渡さないのだから。


 落ち着いたことで未来視が戻ってくる。鏡の中の自分は東の人のような服を身に纏ってくるくるしている。茶色の髪の女の人と、黒髪の女性、黒髪の青年が2人覗き込む中、レイエルに頭を撫でられる自分が居る。とても楽しい未来は、命をさらに落ち着かせ、穏やかな眠りへと誘った。




 翌日、夕方。さっさと本日のお粥を飲みこみ、命はレイエルを待った。ガラガラと背後の岩壁が崩れ落ちる。そこに居たのは薄茶色の髪のままの彼。


「レイエルさんっ」

「一旦離れる、それで良いな?」

「はいっ」


 命を連れ出し、レイエルは森の奥に立ち入る。一息吐き、命の言葉を待った。


「レイエルさん、私、嘘を付いて居ました。本当は華国に行きたいんじゃない、行先は正直華国でもアレストロでもどちらでもよかった……ただ、私はお兄様から逃げたかった。魔の者と契約し、私を生贄に捧げ、町の皆を食らおうとする、お兄様から」

「命……」

「だから、だからお願いです……お兄様を、止めてください……儀式を壊して……魔の物を、討伐してください」

「……命、でも」

「いいえ。それは、お兄様は、私が責任をもって、この世から消え去っていただきます。荘官の方もいるこの街で社が一番力を有しているなんて、そもそもおかしなことなのです」

「……ん。じゃあ命が戦いやすくなるように、お兄さん以外の全部俺が薙ぎ払っておくわ」

「よろしくお願いしますっ」


 社と森が騒がしくなる。命の脱走に気付かれたのか、わらわらと人がやってきていた。


「魔の物はどこに」

「えっと、泉、社の裏手です」

「っし、命」

「え」


 小脇に抱えられた命。足場固定の魔法陣は発動し、空を駆ける。その景色に、命は感嘆の声を上げた。


「凄い凄いっなにこれっ」

「家の相棒殿渾身の魔法陣だ。上行ったらその開発者殿から教われるから安心しておきな」

「はいっ」


 空を駆け、泉を目視すると減速魔法でその場に降り立った。


 そこに居たのは魔界に多数いるという触手生物だった。確か種を落し生やし、女性を蹂躙するために作られた淫魔の攻撃手段のひとつと認識していたレイエルは持っていた刀を命に渡した。


「これ、は?」

「多分、そのお兄さんに斬られた武家の奴が持ってたモノ。縁起は悪いかもだが」

「いや、これ相当な業物ですよ??お兄様誰斬ったの怖い」

「ん、じゃあ行けそうか?」

「はいっ」

「ずいぶんと余裕だなぁ?」


 森の暗がりから出て来たのは先日見た尊と、耳にイヤカフとピアスを付けた、魔族。


「……まぁ、余裕、だからな。とりあえず名を聞いておこう」

「我が名はロイタ。女を喰らう淫魔なり」

「柊尊、全てを手に入れる、その為に、命が必要だっそれは私の所有物だっ返せぇっ」

「断る……まぁ、だいぶくだらない連中で助かったわ」


 認識阻害が解かれる。夜風に煽られ舞うのは薄紫の短い髪。その色に、その色彩があることに、ロイタは驚愕の表情を浮かべた。


「ば、バカな……なんで、こんな、そんな」

「ろいた、どうした。あんな男、お前ならば幾らでも縊り殺せよう」

「っそうだ、あの魔王が弱かっただけの事、私の方が強い事、今此処に証明してみせようっ」


 なるほど、魔王に反抗する魔族を送り込んだかと、意外と効率重視の現魔王を思いながらレイエルは槍を取り出した。その槍にロイタが怯むが、触手生物が動きを始めた。


「命、その雑魚2体頼んだ」

「はいっ」


 業物と呼ばれた刀で命はロイタと命に斬り込む。その間レイエルは触手生物の触手を片っ端から斬り続けていた。もちろんキリはない。その身から無限に生える触手が触手生物の特徴なのだから。だがこれは時間稼ぎ。何を捧げても触手生物が魔物になる訳がない。


「お、おのれぇっこうなったらっ」


 ロイタは焦り、その2段目の召喚を行う。触手生物を飲み込み現れたのは巨大な蛇型の魔物。


「……命っ雑魚過ぎてつまんねぇからその分人命救助頼む」

「えぇ?!も~わかったっ」


 命は社の建物に入る。社の人間を逃がし、町の人間を逃がす。その役目を命に任せ、レイエルはとぐろを巻く蛇型魔物の横に立つロイタと尊の前に立った。


「ったく……もう少しデカいの期待してたんだが」

「なっなん、なんなんだおまえ……ほ、ほんとうに、薄紫の君は」

「なんだその愉快な異名」

「い、淫魔の主力組が騒いでたから黙っていても聞こえる」

「……なるほど、主力じゃないと」

「っわ、私はっ9番目に居たっだが、だがアイツに、シュネに、力をもっていかれっ」

「ふぅん……淫魔も一枚岩じゃないとは、魔王殿も大変だ」


 槍が舞う。そのひと舞で、ロイタは切り裂かれた。


「ぇ」

「とりあえず、邪魔」


 光の粒がロイタを包む。そして、跡形もなく消えた。


「レイエルさ~んっ」


 声に振り返る。そこに居たのは命。足元を見て驚愕した。それはさっきレイエルが使った足場固定の魔法陣。


「お前それ俺習得するのに1ヶ月掛ったんだぞ!?」

「あはは。見たら大体のモノは覚えられるのでっあ、町の皆さんの避難は完了しました。正面使えます」

「ったく……蛇は誘導する。お前は」

「はい、お任せください」


 レイエルは蛇の頭に乗り、槍を差す。とたん苦しみ出した蛇。その蛇の頭に方向性を持たせ、巨大な躰を正面まで連れて行く。こうして社正面でレイエルと蛇型魔物は対峙する。命の性根を考え、少しだけ不安でもあった。だが、仲間と成すならば、信じるのが筋だった。


「っし、んじゃ、来いよっ」


 声が聞こえているのか判らない。だが巨大な蛇は顎を広げ、レイエルを飲み込もうとする。一旦は避け跳ぶレイエル。その対空状態のレイエルを蛇は狙う。


「っと」


 軽い声が上がるが、蛇の口には槍が挟まっていた。顎を閉じようとしても閉じられない。槍は、折れなかった。


「この槍は家の相棒殿が設計した特別品でね。そう簡単には折れないよっ」


 蛇の口を切裂く。声なき叫びが辺りを震わせる。そして、上空から其の喉を狙った。


「終わりっと」


 喉から腹に掛けて切り裂かれる。尾も切り裂き、魔物は塵となり、消えていった。


「……命」


 レイエルが蛇を制する前、命は尊と戦っていた。両者刀を持ち、方ややたらめったらふりまわし、方や冷静にその刃を捌いていた。


「お兄様っもうお止めくださいっ魔の者は居ない、魔物もレイエルさんが駆逐しているはずですっ」

「死ねぁぁっ」


 会話もままならない。恐慌状態の尊、刀が鍔ぜり合う。


「お前は、ただ、あの化け物に、犯され、泣きわめけば、良かったんだぁっっ」


 薄い湖水色の瞳に涙の膜が張られる。これ以上、これ以上、この人の本音を聞きたくはなかった。例えば自分が聞きたくないという理由で合っても、聞きたくなかった。


 ポタリと、血が滴り落ちた。腹を貫かれた尊。命は、泣いていた。


「もう、居なかったのですね……いえ……多分、最初から」


 遥か昔に視えていた、視えてしまっていた。尊が、人間界にはぐれ出た魔族の1人であることを。無意識に人間を見下し、そして、3年前の病、命の助言を聞かず薬を持たなかった1人であるはずの尊が、唯一生き延びた事すら、魔族の証で。さらさらと、光の粒になって消えていくその去り際も、人間界以外の者の特徴でしか無くて。


 カランと、刀が落ちた。そこにはもうなにも居なくなってしまった。亡骸も残らない。立ち尽くす命の元に、レイエルはやってきた。


「命」


 飛びつき、しがみついて命は涙した。兄だった人、兄だったのだ。たとえその正体が何であれ、彼は自分の兄だった。声を上げて泣く命の背をレイエルは擦る。涙は、きっと悲しさを洗い流してくれるだろう。泣けない自分が言うのもどうかと思うが、泣いてしまえとレイエルは思っていた。


 泣き止んだのはしばらく後の事。人々の声が近付いている。


「じゃあ、天界行き、良いな?」

「はいっあぁコレ持って行っても?」

「問題ない。深皇(しんおう)、聞こえているな?」

『うん、一部始終も鑑賞済み』

『意外としっかりお兄ちゃん出来ていたではありませんか』

『そうそうっ』

「あ、くっそ最後かよ。とりあえず上げてくれ」

『解りました。では、天界へ』


 ふわりとレイエルと命が浮かぶ。そして、その場には誰も居なくなった。残っているのは尊が使っていた刀だけ。それも、人々の声と共にさらさらと風化し、消えていった。




 その白い間に降り立つ。半年ぶりになるその白い間に、レイエルはなんとなく安堵した。対して命は刀を抱きしめながら、珍しそうに周りを見渡していいる。


「柊命さんだね」

「はっはいっ」

「第二階層天界階層主、最高神、深皇=アウィス・プラエタリタだ。詳細はレイエルから聞いているね?」

「はい、よろしくお願いいたします」

「やっぱり(けん)が脳筋なんじゃん」

「ホントそれ」

「煩いですね(かえで)まで」

「おう、何やった相棒殿」

「とりあえず人間界では死ぬって事しか伝えず此処に連れてきた」

「……それ了承で良いのか??」

「う~ん……まぁ、来たのは事実なので」


 わいわいと端に居た面々に、命は目を輝かせる。なぜなら、あの石牢で見た未来視に居た人が全員揃っているのだから。


「とりあえず図書館の2階、僕権限で拡張しておいたけど大丈夫だったかな?」

「元々バランス悪かったし問題ない。じゃあ預かりは家だな。っとスパスィエル」

「はい。武器ですね。お預かりいたします」

「あ、お願いします」

「……ほらぁっレイエルさん、ちゃんと説明してるぅっ」

「チッ……家の相棒意外とマメなの忘れていました」

「変わらんなぁ相棒殿。帰ってきた感あって何よりだ」

「あはは。とりあえず、3人が来た結果は後日。今日は解散で大丈夫です」

「とりあえず自己紹介は家でな」

「は~いっ」


 6人はレイエルの図書館に帰り着く。そして広いスペースで椅子に座った。


「とりあえず、じゃあ新規組、来た順で頼む」

「あ、私か。ティリア・リーベルト。一応18歳」

白雪(しらゆき)楓、数えで19よ」

「柊命です。数えで17になります」

「ん、ここの主で一応この面々の中心的役割を担わせてもらっている、レイエル・ラージレットだ」

「の、相棒の、玲鵬(れいほう)柑です。ティリアさんとしては違和感でしょうが柑が名前ですよ。楓さんと命さんも同じくですが」

「2人の親友のアスディル・ファーレットっ実は実年齢、40っ」

「えっ」

「えっ」

「えっ」

「……そんなに行ってたか?」

「えっアスディルっアンタ近衛隊に入る時18で入ったじゃないっ」

「仕方なかったんだよっ天界来る前の年齢の25で申請かけたけど信じてもらえなくてギリの18ってっ」

「……お前も大変だったんだな」

「しみじみ言うなレイ」


 懐かしくも感じる彼らとの会話。そして考えておかなくてはならないことは、1つ。


「柑、アス。楓とティリア。仲間にする実力に達したか?」

「まぁ、あと10年徹底的にたたけばアスに届くかと」

「ティリア同じく。命ちゃんは?」

「同意見。ただ術のセンスは命圧勝」

「あぁ……見ただけで足場固定の魔法陣使った……あれおれはんとしかかったのに」

「わたしにかげつ」

「大丈夫だ、皆似たようなもんだ」

「まぁ加速などはまだなので、そこは追々考えるとして、では」

「ん。3人に言っておきたいんだ。俺には望みが有るんだ。絶対叶えなきゃ行けなくて、その為なら命を懸けられる望みが……それはあともう9年半になるか?まぁ大体10年後、為さなきゃいけない」

「……レイエルさん……」

「その為に、俺は仲間を欲している。背中を預けても、その場を任せても平気な、仲間を」

「……お眼鏡には叶ったのかしら」

「一応、合格だそうだ」

「じゃあ、手伝うっなんかだいぶ深刻そうだし」

「私もっ」

「そうね。面白い事、増えるなら万々歳だし」


 新たな仲間を得て、レイエルは笑みを深める。きっと女性の仲間も梓翠(しすい)の為には必要だろう。身辺警護も必要だし、何より話し相手にもうってつけのようだ。


「そうだ、思い出した、命ちゃん、こっち」

「は、はい」


 楓に誘われ、命は2階へ赴く。平屋暮らしが2階に上がるのは新鮮で、見まわしていると部屋が開けられた。


「天界、東の服が基本らしくて、コレ、とりあえず日常着。着てみて」

「……はいっ」


 初めての服なのに初めてじゃない。楓とティリアに着方を教わりながら着替える。廊下に出ていた姿見に映せば、あの日文字通り夢見た、東の国の服を着た自分が居た。


「正装と戦闘服は?」

「正装はアナラエルさんにご依頼すればいつでもだそうです。戦闘服どうしましょうねぇ……楓も悩んでいるのですが」

「動けるっちゃ動けるけど袖捌く隙あるなら狙いたい」

「わかりますっ」

「それは俺も思った」

「ですね。まぁ色々考えましょう」


 そして、仲間たちの中、命は笑っていた。









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