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薄紫の君と若草の王女様~君の為の30年~  作者: 颯待彗
03 君の為の30年 ‐2‐
18/21

018 泉の魔女

 ミュトロギア大陸中央に存在するトロイスト王国。四方を他国に囲まれていて、なおかつ周辺各国がフェーヤ帝国側に付く中、中立を保っている国。もちろんそれを支えるのは確かな軍事力だった。


 王室近衛隊第7番隊隊長ティリア・リーベルトは王城の廊下を歩いていた。視界に入るのは演練場、そこで黒色は舞っていた。


「はい、残念っと」

「だぁぁっ」

「あ、アスディル強すぎだろ……」

「イホティス総隊長ぐらいじゃねぇの?勝てるの」


 アスディル・ファーレット。幼い頃はフェーヤ帝国にて暮らし2ヶ月ほど前に中立のこの国に転がり込んできたよくいる移民。だが近衛隊に入った彼は第9番隊で怖ろしい勢いで実力を発揮、本気を出してしまえば確かに隊長クラスでも勝てるかどうかわからない、総隊長であるピスティ・イホティスすら勝てるかどうかわからない次元に居た。


「あ、リーベルト隊長~っ」

「お前達、程々にしておけよ?特にアスディル。隊員の心を折るな」

「は~い」

「まったく」


 自由人は自分の副官だけにして欲しいと願うティリア。そうして入った総隊長室、そこにその副官が居るのを見つけてしまい眉間の皺を深くした。


「イウニオス……何故、イホティス総隊長とお茶をしているのか説明願えるか?」

「え、だってピスティ忙しいから。ね?俺が来ないとお茶できない」

「そう言う理由ではないっっ」

「まぁまぁリーベルト隊長。イウニオスのサボり癖は子供の頃からだから、ね?」


 近衛隊総隊長ピスティ・イホティスはその金の髪を揺らしながら笑う。イウニオス・ディエースもカラカラと濃い茶色の髪を揺らしながら笑う。深いため息を何とか抑え、ティリアはイウニオスを叩き倒してその書類をピスティの元に渡した。


「ありがとう。文字を読めて書ける人材は貴重だからね」

「2人、よくそんな事出来るよなぁ」

「お前は近所の先生の授業をサボっていたからだろう」


 ピスティとイウニオスは幼馴染。揃って近衛隊に入隊し、真面目なピスティは総隊長に出世、不真面目なイウニオスは7番隊副隊長のままだった。


「これぐらいならばいくらでも。そうだ、イウニオス。演練場でアスディルがまた第9番隊の隊員の心を折って居たぞ?」

「マジ!?そう言うの早く言ってよリーベルト隊長っ」

「アスディルは凄いね。空きがあれば隊長格に欲しいぐらいだよ」

「今空きありませんからね」


 イウニオスが嬉々として演練場に向かう。ティリアとピスティはバルコニーからその様子を観察していた。


「おっ来たなイウニオスっ」

「今日こそ勝つからなアスディルっ」


 棒対棒の対戦がはじまる。次第に仕事の手を止めて演練場のバルコニーに出てくる人が増え始める。しまいには王族の方々もバルコニーから眺めはじめる。とんでもない求心力を持った武芸だなとティリアは笑う。


「見事な武芸なのはわかるけれども」

「まぁ、うん。仕方ない。現状アスディルと互角にやり合えるのはイウニオスかリーベルト隊長、そして俺だけだ……まぁ、その互角と言うのもとても手加減した状態での事を言うのだけれどもね」

「……ですね……」


 ティリアは眼下のアスディルを見る。ほんの断片的でしか見ることが出来ていない光景。それでも、彼は自分を助け、自分を殺してくれる存在だった。




 それは2ヶ月前の事。アスディルは架空の経歴で近衛隊に入隊。無事拠点と言う名の隊舎部屋を確保。対象となるティリア・リーベルトを確認した。とは言え6人部屋、水鏡の通信を行えたのは2週間後の事だった。


「やっぱりあれ男装、それも魔力ふんだんに使った認識阻害のか」

『うん。彼女がどうしてそんな状態で此処に居るのか。それを調べることが彼女を天界に上げるために必要な承諾と言う名の条件になる』

「了解っとまぁ俺は(けん)みたいに厳しくもないしレイみたいに優しくも無いから其処はご了承をっと」

『解っている。頼むよ』


 軽く言ってのけたはいいものの、アスディルは第9番隊、ティリアは第7番隊隊長。接点を持つところから始めなくてはならず、その糸口が全く見えなかった。


「どうしたもんかなぁ……」


 思わず城壁でたそがれてしまうアスディル。自分の故郷から西へ少し行った場所にあるトロイスト王国の夕日は当たり前だが故郷と同じだった。


「アスディル?」


 振りかえればそこに居たのはティリア。返事を仕掛け、マズいと認識した。城壁は高く、足場もない。柑に叩き込まれた足場固定の魔法陣を使って登っている自分は不審者に見えるのではないか。とは言え、返事をしない訳にもいかなかった。


「リーベルト隊長、どうも」

「そこ、どうやって登った??」

「色々経由して、ちょこっと」


 降りるときにも足場固定の魔法陣を使うため降りるところを見られるのも避けたい。どうしようと思っているとティリアの笑い声が聞こえてきた。


「猫じゃあるまいし……まったくお前は本当に変わった奴だよ」

「それはどうも。俺より、俺の師匠の方が変わってますけどね」

「師匠?居るのか?」

「えぇ。師匠にビシバシやられた結果がコレですよ」

「その師匠には物申したいな……どんな人なんだ?」

「その前にやっぱり降りますねっと」


 最終手段。本当は使いたくなかったが減速魔法を使い降り立つ。アスディルが使える魔法は柑の作った術のように新たに生産されたものでない限り魔法界妖精族の魔法属性となる。出自が好きでないアスディルはなるべく柑の作った魔法を使うようにしているのだが当たり前に柑が許さず、一通りの妖精族の魔法を覚えさせられていた。


「……やはり猫なんじゃ」

「海の生き物の方が好きです。っと俺の師匠の話ですよね?」

「君のような馬鹿みたいに強い隊員を育てられる人がどんな人物か興味はある」

「2人居まして。1人は優しい方。優しくて、優しくて、それが故厳しい人。武芸の腕は多分俺じゃ一生かかってもたどり着けない領域に居る人で……でも、どでかい隠し事をしていて、その為に本当に命を懸けかねない、そんな危なっかしい人。ですね」


 アスディルから見たレイエル・ラージレットと言う存在。彼の優しさは隠れたところにしか出てこない。その解り辛い優しさであってもアスディルは感じ取ることが出来ていた。対人の感情把握にたけているのはアスディルだった。この手が苦手なのはもちろんそのレイエルである。


「もう1人はめちゃくちゃ厳しい方。自分と同じ領域に居るのがさも当然ですねと言わんばかりに課題を出してきて……めちゃくちゃこわかった」

「君がそう言うとは、心中お察しするよ」

「でも、ちょっとだけ愉快犯と言うか、子供っぽい所あるんだよな。結構重要な戦闘で悪戯じみた戦略立てたり」


 ずっと思っていた。柑は仙道、3000年の時を生きる長命の者。それにいつなったかまでアスディルは知らない。だがもしかしたらかなり幼いころになってしまったのではないかと感じていた。幼い時に時間が止まり、そこから青年へ成長はするものの中身は幼いまま。時折にじみ出る愉快犯じみた性格はそこから来ているのではないかとアスディルは思っていた。


「そうか……良い師匠に巡り合ったのだな。その方々は?」

「フェーヤ帝国を出たまでは一緒。厳しい方が華国行きたいって駄々こねてたから多分華国に行ってるんじゃないかな?」

「……随分遠いな。ミュトロギア大陸西の果てだぞ?」

「決めたら一直線の人だから。優しい方はまぁコイツだから仕方が無いの一言で付き合っちゃうという」

「本当にその人は優しいのだな」

「うん……リーベルト隊長は?」

「え?」

「そう言う師匠、みたいな人、居ないんですか?」

「そう、だな」


 ティリアのわずかな動揺に当たりを引いたとアスディルは思った。妖精の関連かどうかはわからないがアスディルは剛運の持ち主である。


「……その、師匠と言うか……祖母が色々教えてくれた」

「もしかしてリーベルト隊長の武器が弓矢なのって」

「あぁ、祖母でも教えることのできる武器だからな。それ以外の武器は祖母に見てもらいながら手探り、だな」

「へぇ……なんか良いですねそう言うのっ」

「アスディルには……家族は?」

「居ないんですよ。訳有って拾われて。んで師匠にひょいっと」

「そうか……すまない」

「良いですって。でも、良いお祖母ちゃんなんでしょうね」

「……あぁ。自慢の祖母だ」

「あら。そう言う楽しそうなお話、是非混ぜて欲しいものだわ?」


 2人で振り返る。そこに居たのはこの王城の主の1人娘、つまり、姫であるプリムラ・R・トロイスト。金の髪は夕焼けを反射し輝いていた。流石の人物の登場にアスディルもティリアも慌てる。


「ぷ、プリムラ様!?なぜこのような場所に」

「この子がね、最近気付くと塀の上で夕陽を見ているから気になって。ねぇっどうやって登ったのかしらっ」

「えっと、木とか、少しだけあるでっぱりとか、色々経由して」

「それよりプリムラ様っこちらに居る事誰かに」

「言ってないわよ?」


 更に慌てる2人。そこへ救いの方の金の髪が舞いこんだ。


「っ居たっ」

「あら、ピスティ」

「あらじゃないですあらじゃっいきなり居なくならないでくださいっっ侍女と護衛が大騒ぎでっ」

「良いじゃない」

「助かったリーベルト隊長、アスディル」

「あ、いえ」

「……とりあえず塀の上でたそがれるのは自重します……」

「え~」

「え~じゃないですよ、さ、帰りますからねっ」

「そうだピスティっ今度の舞踏会、第3番部隊が護衛班ってどういうこと?」

「第1番部隊は王族方の警護、第2番部隊は国境警備が仕事だからです」

「そうじゃなくてぇっ」

「はいもう行きますよっ」

「ちょっとぉっ」


 ピスティに引きずられるようにプリムラは連れて行かれる。どっと脱力するアスディルとティリア。


「それにしても、舞踏会嫌なのかな?」

「多分、第3番部隊が護衛に行くって言う事は貴族の屋敷のどこかでやる舞踏会なんだろう。そうしたら、プリムラ様のご年齢を考えて婚約者候補が群がるのは目に見えている」

「プリムラ様お幾つだっけ」

「15だ。この国の貴族の大半は10で婚約者を決める。残っているのは王家に自分の息子を送り出したい貴族の子息だけだろうな」

「は~……貴族大変」

「そうだな」


 夕日に照らされたティリアの横顔が、少しだけ女性的に見えた。柑とレイエルの鬼特訓には魔法の事も含まれている。妖精魔法は当たり前として天使が使う魔法、そして柑が開発し続けている魔法、その時代背景から基礎理論までみっちりこの10年間に行われた。あまりの詰め込み過ぎに程々にねと深皇(しんおう)が苦言を呈する程度にはみっちり行われた。その鬼特訓の結果かどうかは判らないが、アスディルには黄昏時に効きにくくなる魔術が存在しているという知識が浮かび上がった。確かそう、薬草を扱い、魔法界の中でも少数派の光魔法を使う、白魔女とか。


「っし……帰ろうか」

「は~い」


 10年間の鬼特訓は無駄ではなかったのだなとしみじみ感じながら、アスディルは隊舎へ戻っていった。




 ティリアと接点を持って2ケ月後、アスディルは非番。何か他に手掛りが無いか確認しておきたくて、アスディルは街に繰り出した。するとどこもかしこも白い花で飾られていて、白い布で軒先が照らされていた。


「結婚式でもあるのか??」

「アスディル~」

「あ。イウニオス。休み?」

「そ。それにそろそろ魔女祭の期間だからね」

「魔女祭……?」

「そっか、アスディルこの前この国に来たばっかりだっけ。こっち」


 案内されたのは城門前広場。そこに花は飾られていた。高いその塔の先端にはつぼみの百合の花が刺さっている。他に飾られている花も全て白。何もかもが白い祭だった。


「家の国にはな、伝承があるんだ」

「伝承」

「その昔、この国にはたくさんの魔女が居た。でも1人、また1人と消えていった。そして最後に残った泉の魔女。彼女は巻き起こった国の危機から民と王を助け、感謝される存在となった。泉の魔女はこう言い残した。『百合の花の咲くとき、私は貴方達を守りましょう』ってな。んで、アレがその百合。実際毎年3ヶ月後の魔女祭の日、ふわって咲くんだ」

「へぇ……なぁ、伝承って口伝だけ?」

「貸本屋行けば本ぐらいあると思うけど……アスディル本読めるのか?」

「人並みに」


 大陸東側全土共通言語を読み書きできるアスディルは大嘘を付いて貸本屋に入る。店主は祭りの時期だからと並べていた泉の魔女に関する本を案内してくれた。


「…………あぁでも…………よっし、理解」

「早っ!?」


 レイエルの図書館と特級図書館で本を読むのも慣れたアスディルにとって速読は慣れたもの。と言うか早く読まないとレイエルからの次早く寄こせの圧に耐え切れない。


「ありがとおじさんっ」

「またおいで」


 実家に行くというイウニオスと別れてアスディルはもう一度城門前広場にある塔を見た。おそらく、ティリアは泉の魔女の末裔だろう。沢山居た魔女が白魔女である可能性は十分にある。消えた理由も、なんとなくわかってしまう。そして彼女が城に潜入しているという事は、泉の魔女が救ったとされる危機が、近付いていることに他ならない。


「……急ぐか」


 誰かが危険に晒される可能性があるならばそれをなるべく排除しようと奔走する。アスディルはそう言う人間だった。




 ティリアは、その日王城の端に存在する暗き森と呼ばれる森を抜け深い泉、その畔に立つ小屋へ帰った。彼が休みの度にここに来ている事は知っていた。だが、彼と自分の休みが合う日がなかなかなく、1ヶ月も掛かってしまった。


「おっそいぜ?ティリア」


 咎める者は誰も居ない。なぜならここは何重にも張った人避けの結界の中。ならばと、彼女は認識阻害を解いた。


「ごめんね、アスディル。でも隊長職と隊員の休みが合うなんて滅多にないんだから」

「まぁ、それはそう」


 泉の湖畔に並ぶ。青緑の湖水は静かにその水面を晒している。ティリアのピアスと同じ色だった。


「耳の、泉の魔女の証とか?」

「うん。お祖母ちゃんがくれた、大事なモノ」

「……そっか」

「……聞かないの?」

「何が?」

「泉の魔女の事とか、私が何をするんだとか」

「ティリアが話したい所からで良いよ。俺、聞き出すとかは苦手だし」

「そっか……うん……まずここは正真正銘本物の泉の魔女の暮らす泉と小屋。先代、私のお祖母ちゃんはもう亡くなっていて、当代は私のみ」

「……お母さんは?」

「たぶん、アスディルと一緒。私、この森の奥に捨てられていたんだって。だからお祖母ちゃんは本物のお祖母ちゃんではない」

「……続けて」

「泉の魔女の伝承はね、本当は少しだけ違うの」


 この国には泉の魔女と同じように白魔女が沢山居た。だが、魔女と言う響きを恐れ、人々は魔女を迫害していった。最後に残ったのは一番力の強かった泉の魔女。偶然王国に危機が迫り泉の魔女は人々を救った。『百合の花の咲くとき、私は貴方達をあと一度だけ守りましょう』そう言い残した泉の魔女はどこかへ消え、人々は魔女への信仰だけを残した。


「多分、本物の伝承を知っているのは王族ぐらい。庶民や貴族も泉の魔女の伝承を正しく知らないの」

「本屋もそんな感じだったな」

「でね、泉の魔女はここで脈々と血を繋いでいた。もちろん私みたいな拾われてと言う魔女も居たはず。ううん、そっちの方が多いに決まっている」

「なんでだ?」

「百合の花が咲くときって、どういう意味か分かる?」

「わかんね」

「お祖母ちゃん曰く、処女の魔女が降り立つときって意味なんだって」

「……まぁ、その信仰あるって聞いてはいた」

「白魔女の白は純潔の白~ってお祖母ちゃんから散々言わてる」

「へぇ……続きどぞ」

「うん。で、血を繋いで、術を繋いで、ようやくやってきたその一度限りのお役目、それを担うのが35代目の私、ティリア・リーベルト」

「なんでティリアだってわかるんだ?」

「……沢山使える魔法の内、泉の魔女に限定して使える魔法が、未来視。もっともこの泉でしか見られないけれどもね」

「未来視……お役目に関してだけ見る感じ?」

「うん」


 杖が現れる。木をそのまま使った古ぼけた杖。それをティリアはそっと泉に乗せる。


『はぁぁっ』


 ティリアが何かに矢を射ていた。アスディルがたそがれた塀の上、そこでひたすらにティリアは何かに矢を射ていた。ふっと画面が消える。


「……最も……私の魔力、めちゃくちゃ芳醇らしいんだけれども泉の魔女の先視の魔法には向かないらしくて……今の映像がギリ」

「あ~……見えるだけ良いんじゃね?」

「でも、それでも役目を果たさなきゃならないのは私。だからその為に城に入っている。異変が分かるの、城が一番だもの」

「そっか……で、その芳醇な魔力をふんだんに使って認識阻害で王城に居る。と」

「そう言う事。でさ、聞いていい?アスディル」

「良いけど?」

「アスディルがさ、私を助けてくれて、私を殺してくれる人、で合ってるのかな?」

「……なんて??」


 助ける人まではまだ良かった。だが、殺してくれる人とはと思いはたと気付く。自分はティリアを天界に連れて行く為にここに居るのだと。ならば、確かにティリアと言う存在を人間界から殺す存在ではあると認識できた。


「いや、お祖母ちゃんの先視で『黒い人が貴女に死をもたらします。そこで、泉の魔女は終わりになさい』って言うから。黒髪、今の所アスディルだけだし」

「……まぁ……うん、降って湧かない限りは俺だな、うん」


 一瞬よぎったのは天魔大戦の際ちらりと見た魔王の姿。黒い人と言えば全身黒い上に瞳も黒の彼だろう。湧いて出るなよと祈りながらその漆黒の人物と戦いきったもう1人の黒い人を思った。そちらは遥か彼方西の端。何をやっているやらと思いながら考えをまとめた。


「……一応さ、俺多分その為に来てる。ティリアを助け、ティリアを殺して……天界に連れて行く為に」

「てんかい?」

「人間界の上に合って、天使や最高神が暮らす階層。俺、15年前、そこに連れてこられたんだ。もちろん自分の意思で」

「……聞いていい?」

「ティリアが魔力芳醇だって言うのと俺は似ている。俺、天界とはまた別の階層、魔法界に暮らす妖精の子供だったらしいんだ」

「妖精?って言うと、たまに飛んでる。意識すれば見えるけど基本的にはほとんど見えない」

「多分たまに見えている奴は相当おっちょこちょいな妖精。でも、俺にはそのほとんど見えないはずの妖精が見えて、話も聞けて、触れもして、さらには使役までできた。流石に変だよな」

「……たし、かに……」

「んで、その変なのを調べに来たのがこの前話した俺の師匠2人。調査に来るってことは妖精たちに知らせてもらっていたから、招き入れて、調べてもらった。ら、妖精の子供ですよ」

「それは……中々に辛いね」

「うん、辛かった。しかも両親と思われる妖精が、呪いあれ~って俺を送り出したもんだから……まぁ、人間界に居ちゃいけないってなったわけ。んで、師匠2人と一緒に天界行き」

「……その時の、アスディルって言う存在は?」

「痕跡全部消して、忘却薬ばら撒いて、俺と言う存在を人間界から自ら消して、上がった。そこまで、あの2人にさせられないと思ったから」

「……そっか」


 そう言えば、忘却薬が撒かれない離れた街や人までも自分を忘れているのは当時の最高神のオマケなのかとビアへエルに広げてもらった水鏡で見ながら思っていた。その間アスディルの言葉に、ティリアは考えた。つまり推察は合っていた。ならば、取る道は1つ。


「お願い、天界でも何でも行くから、手伝ってっ」

「良いけど」

「やったぁっ」

「はいはい。んじゃ、詳細よろしくお願いしますよっと」

「うんっ」


 ティリアの素は随分と幼いのだなとアスディルは感じていた。無理をして大人びて認識阻害で年齢を引き上げているのだろうと理解できた。自分とは逆だなと思った。


「魔物が来るらしいの。王都に湧く、魔物」

「……魔物」

「先の映像、魔物を射る映像らしくてどれくらいの規模かもわからないし1人で射るにも限界があるから」

「期待しすぎるなよ?」

「頼りにはしている」

「はいはい。時期は?」

「魔女祭のその日。あと2ヶ月だね」

「……なら、ティリア」

「なに?」

「俺と、特訓しようか」

「……え」


 そして、ティリアとアスディルの特訓は始まった。









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