011 俺の敵は
がしゃんと机の上の物が引っ繰り返される。怒りの感情の発露をした彼は、息を吐いた。
「……スパスィエル、武器を。こうなれば直談判だ」
「フォルエルさん……」
扉を開く。そこはフォルエルの私室。中枢4天使、そして怯えるアレクエルを従え、フォルエルは部屋を出た。
「もう彼を、俺達は最高神などと呼びはしない」
暗い瞳は邪魔をしそうなもう1人の親友の部屋の扉を見つめていた。
その日は平和だった。1600を超える魔物を倒し封印し、神殿に戻って泉に入り、さて報告と演練場に戻った時だった。
「っレイエル様っ」
走り込んできたのはコラキエル。震える足を叱咤し、コラキエルはレイエルの元に辿り着いた。
「どうしたコラキエル」
「いま、今すぐ、最高神様の元に、武器、まだそこに有るので」
そう言えば帰って来てスパスィエルが居なかったため武器は壁際に立てかけた居たのだと思いコラキエルを見る。尋常ではない事態が起こっている事だけはレイエルにも感じ取れた。
「柑、念のためあのブレスレット取って来てくれ。お前なら場所わかるだろ」
「はい」
「取り敢えずコラキエルはここに居ろよ」
「すまない……アスディル」
「取ってきましたっ」
3人が3人、武器をブレスレットに収納する。そして着替えることもせず最高神の間に入ろうとする。そこへ反対側から紫色が駆け込んできた。
「レイエルっ」
「ティミエル?何が」
「わかんねぇ、わかんねぇけどフォルエルが俺の事部屋に閉じ込めたんだ。今無理やり出てきた所」
「っ」
親友が、何かとんでもない事をやらかした事だけ理解したレイエル。思いきりドアを開けた。
そこにフォルエル、リスエル、スパスィエル、ビアへエル、アナラエルは居た。それぞれが慣れないであろう武器を持ち、最高神アルトの座る玉座へ続く階段の下、そのアルトに武器を向けていた。対するアルトはどこ吹く風、それでも、滅多に持ち出さない黒壇の鞘の自分の剣を玉座に立てかけている。
「ぁ……ぁっ」
「アレクエル!?」
「落ち着いてアレクエルさん」
端に居たアレクエルは震えていた。柑が何とか落ち着かせ、レイエルとティミエルは状況を把握する。
「フォルエルっ」
「バカっ何してんだフォルエルっ」
「……馬鹿って言うぐらいなら部屋から出て来なきゃよかったのに。馬鹿ティミエル」
「おまっ」
「……とりあえず、俺等にもこの状況を詳しく説明して欲しいものだな?」
「アルト様が、最高神の必要最低限の仕事すらしていない件についてだ」
「いやアルト様が仕事しないのは今更」
「そっちじゃない。権能の話だ」
最高神アルトの権能、『瘴気を抑える』。何だそんな事かとレイエルは思った。レイエルは、それを身近に感じている存在なのだから。
「レイエル、そんな事かって思ったでしょ。でもね、重大な事なんだよ?もし市街地に瘴気が噴出したら?外周コロニーに瘴気が噴出したら?取り返しのつかない事態に陥る」
「案ずるな、コロニー、及び市街地には噴出させない。そうなるように、権能は使っているからな」
「……認めるのですね、それ以外の場所の権能を、外したことを」
「あぁ。それが何だと言うのだ?」
なんでもない事のようにアルトは言ってのける。アルトはただただレイエルの反応を楽しんでいるだけ。その為ならば瘴気を1点に集中させ大規模に噴出させるのも厭わない考えだった。
「レイエルを、レイエルを本当に、貴方は使い潰すお積りかっ」
「まさか。レイエルにはいずれ私のように10万の魔物にも対応できるように成ってもらわねばならない。まぁ、既に成って居そうなのだがな」
「っレイエルは、貴方の玩具ではないっ」
「暗い場所から、拾い上げたのはこの私だ。ならば観察対象にして何が悪い?」
「っ」
激高しかけるフォルエル。だがその方をリスエルとスパスィエルが叩く。今はまだ斬りかかる時ではない。
「フォルエル、落ち着け……ではアルト様。この10年ほど、天界軍の出陣が無いのはご存じですよね?」
「あぁ。出撃のそのすべてをレイエルと、柑、アスディルに宛がっているからな。せいぜい見回り任務程度だろう」
「……自覚はおありですか?天界軍を弱体化させているという、自覚が」
「天界軍など私にとっては邪魔な存在。居ても居なくてもどうとでも」
「……こっ」
「まだ落ち着いてリスエルっ」
「……では、アルト様。私からも問を」
「許そう、ビアへエル」
「魔界に通じる穴、アルト様ならご存じのはず」
ピクリと、初めてアルトの指先が動いた。ビアへエルは人間界だけではなく天界も見渡す存在。それの変化を一番理解できていた。
「本来。そこから噴き出し自然に消えているはずの瘴気が噴き出す前に消えている。果たして、魔界から放っておいても漏れだす瘴気、どこに行ってしまったのでしょうかね?」
「アルト様……まさかっ」
「その、まさか、だろうな」
瘴気の噴出が人工的、かつ犯人は最高神と言う事実に耐え切れずティミエルは膝を付く。レイエルだけは冷静にその状況を見ていた。柑とアスディルは震えが止まらないアレクエルを抱えながらこの騒動を見守る。ある種、2人は部外者、ならば全てレイエルにゆだねようと考えていた。
「アルト様、貴方は、貴方自身の身勝手な望みの為、天界を危機に晒しているっそんな存在を最高神として認めるなど、到底できはしないっ」
「……そうだな。私は己の望みの為、感情を観察したいという望みの為、お前達全員を利用しているに他ならない」
「っ」
「だが、それはそこに居るレイエルも同じこと」
「ぇ?」
「そうだろう?レイエル・ラージレット。お前には望みが出来た。その為に友人を欲し、背を預けられる存在を欲している」
気付かれていたかとレイエルは思った。仕方が無いとおもむろに両者の間に移動し、槍を出現させる。きっとそれが自分の役割なのだから。
「……あぁ。俺には望みが、願いが出来た。だから必要なモノを集めて、必要と感じる感情も取り戻して、今ここで立っている」
「レイエル……っそれは知ってるっでも、でもレイエル、欲しかった仲間も見つかって」
「まだ足りないんだよ。その為に誰をも、最高神サマすら、俺は踏み台にして、進む。全ては未来に行くためだ」
「みらい、に」
「……今この場の騒動が、俺の未来への道筋を邪魔すると言うのならば、どちらが敵でも俺は構わない」
発言に1人を除き、息をのむ一同。真実レイエルはアルトに付いたのならばフォルエルたちを殺し、フォルエルたちに付いたならばアルトに対するだろう。それを知っている柑だけが冷静にレイエルを見ていた。
「ぁ……駄目ですレイエル様……っ」
「アレクエル、大丈夫だから。落ち着け」
「でも、でもレイエル様は」
「柑……」
「……僕達は、レイエルをその未来に連れて行くと、未来の先で為すことを手伝うと約束した身です。ならばここで彼らを見守るのが筋です」
「……わかった」
フォルエルの手が震える。親友は、アルトに付くかもしれない。だって彼はアルトに恩義があるのだから。親友だからと言う理由で、彼はこちらに付いてはくれないだろう。
「れい、える。ぁ、俺は」
「さて。どうしたモノかな……最高神失格と言うのならば、何か証が欲しいものだな」
静寂。そこに響いたのは鳥の鳴き声。だがその鳴き声は綺麗な鳴き声ではなくカチカチと言うしわがれた不思議な鳴き声。そもそも天界に鳥は居ない。その黒い胴体に白の模様が入った鳥は天井にいきなり現れ、すっとフォルエルのオレンジ色の頭の上に着地した。
「え、なに、コレ何?!」
「えっ鳥?コレ鳥??声変だけど」
「鳥、だなぁ」
数少ないその鳥の記述を読んでいるレイエル、柑、アスディル、ビアへエル、そしてアレクエルだけがその鳥の種類を特定してみせる。天界の書物は2つの図書館を合わせたのならばほぼほぼ人間界を網羅できるのだから。
「……カササギ……ですよね?西に住む」
「えぇ。西に伝わる伝承にも出てくる鳥です。でも何故こんなところに」
ククッと笑い声が響く。レイエルは笑っていた。愉快そうに、腹を抱えそうな状態で。
「なぁ、最高神サマや、知ってたか?お前さんを作って放置した原初の神。その原初の神の漢字名には色か動物の名前が付いて居るんだ」
もちろんレイエルは巻き戻った後原初の神について調べていた。『ヴォラス=玄武』、『パノ=胡狼』、『アナトリ=青龍』、『ピソ=霄狐』、『ノトス=朱雀』、『カト=淵鯱』、『ズィスィ=白虎』、『ブロスタ=煌鵲』。計8柱の原初の神。その中で自分とかかわりの深いのはピソ=霄狐、そして未来に行くためのキーである、ブロスタ=煌鵲。
「良い事を教えてやる。原初の神、ブロスタ=煌鵲の動物部分は、カササギなんだよ」
「……何?」
「そして、ブロスタ=煌鵲は『未来』を主る神だ」
もしかしたらあの人をおちょくった面の方の原初の神が微力ながら手伝ったのかもしれない。それでも、敵が定まるならば、レイエルにとって僥倖だった。脳筋と言われようが、考えなくて良い戦い程嫌いではない。
「もう分かるな?未来を主る神を冠する鳥が、フォルエルの元に舞い降りた。つまり」
タンッと音が響く。玉座から立ち上がり、黒壇の鞘から水晶の剣を抜き放ったアルトのその剣に、青い槍が撃ち合わさった。
「俺の敵は、アンタだよ、史真=アルト・エーラ」
「……それは、残念な事だ」
はじき返され階段を滑るレイエル。避難を指示する前に柑の手でフォルエル達は端に寄せられていた。流石相棒と思いながらアルトの剣を捌いていく。
「レイエルっ」
「今は下がってくださいフォルエルさん」
「でもっ」
2人は打ち合う。何か、何かないかとフォルエルは考え続ける。頭の上のカササギはのん気にしわがれた鳴き声を吐き出し続けている。
「流石だなレイエル。5000年前とは見違えたぞ?」
「そりゃどうもっこう育てたのはアンタだからなっ」
誰も、柑すら割って入れない戦闘。互角の戦闘は長く続いたように思えた。
「っ……本当に原初の神の使いだと言うのならば、俺に、俺にレイエルを守る力をっ」
カササギにフォルエルは願う。答えるかのように、カササギは、鳴いた。
まず溢れ出したのは光だった。カササギは近くに居たアレクエルの頭に移り、カチカチと鳴く。レイエルとアルトも距離を取り状況を見守る。光に続いたのは彼を囲む文字。その文字の奔流の中、彼の衣装が変わった。白の衣装、縁取りは銅色。アルトとは似て非なる衣装に変わったところで光は納まり、文字の奔流だけが残った。
「■■■■■?……は、今の」
「……清晃=エオノス・ノイ……?」
文字はそう読めた。誰かが呼んだのならば良いだろうとばかりに文字の奔流も消える。なるほどとアルトは納得した。つまりは、そう言う事なのだ。
「喜べ。それが原初の神の意思、お前たちの糾弾の結果だ」
「……なんだ、クビに成ったのか」
「そのようだ」
「……え?」
「つまりだ、今この瞬間から、最高神はお前だってことだよ。■■■■■……じゃなくて、エオノス」
「………………えぇ?!」
「さて。どうしたモノか……あぁ、良い事を思いついた」
黒壇の鞘に水晶の剣を戻し、アルトはマントを翻した。
「正式に、お前たちの敵となろう。魔王の座を簒奪してな」
そして彼はレイエルの横をすり抜け、最高神の間から出ていこうとする。それを阻む影が存在した。
「アルト様、駄目です……最高神は、アルト様じゃないと」
「だが、ティミエル。原初の神の意思は変えられぬぞ?」
「ならっなら俺を、俺を連れて行ってくださいっ」
泣いていた。ティミエルは震える手で、アルトのマントを掴むと、泣いていた。
「貴方以外を主として仰ぐことなど俺には出来ない。だから、連れて行ってください。どこまでも、お供いたします。俺は何があろうとも決して貴方様の手を、離さない」
「……そうか。空虚に過ぎた最高神の座であっても、得難きものは得たのだな」
そういってティミエルをアルトは小脇に抱える。そして転移魔法を発動させた。向かうのはおそらく、瘴気噴き出す魔界直通の穴。
「では、儚き治世を謳歌すると良い」
「っティミエルっっ」
「……さよならだな。■■■■■」
最高神になり新たな名前を得たことにより呼べなくなった前の名をティミエルは最後に呼んだ。たちまちに2人は消え、そこでようやく全員が息を吐いた。
「……ど、どうしよう」
「あ、カササギ消えてる」
「ま、なったモノは仕方ないんじゃねぇの?空位にしておくわけにもいかないし」
「レイエル」
「とりあえず、あの席座っとけエオノス」
「う、うん」
恐る恐るエオノスは最高神の玉座に座る。清浄な空気が最高神の間を越え、天界全てに行きわたる。そして最高神の玉座の位置もアルトの見上げるほど高かった位置からその半分にまで縮んでいた。
「……うん。多分いけ……いけ……いける」
「おうもっと自信持ってくれや最高神サマ」
「レイエル~っ」
「とりあえずアレクエル、は、まだ無理か。リスエル、スパスィエル、ビアへエル、アナラエル。神殿の特級天使に最高神の代替わりの通達を」
「上級は?」
「神殿付じゃない限りそのままで。最高神の代替わりなんていう前代未聞の事態だ。どれだけ影響が出るのか判らない」
「わかったわ」
「てぃ……は、もう居ないんだったな。柑、アス。アレクエルを連れて書類整理頼む。しばらくここに座って魔力の流れとか見なきゃならんし」
「わかりました」
「担ぐぞ~」
「うわぁ?!あ、アスディル様、力ありますよね」
「特訓中」
レイエルの指示通り中枢4天使と柑とアス、アレクエルは仕事に向かう。最高神の玉座に座ったままだったエオノスの元にレイエルは近寄った。
「……う~ん……魔力、若干心許ないな」
「うぇぇ……大体なぜに俺が最高神?それこそレイエルとか」
「謀反の中心人物なんだから責任取れって原初の神のご判断じゃねぇの?」
「そうかもしれないけれども……そう言えば、レイエル、原初の神になんで詳しいの?」
「ちょっと興味が出て調べたんだよ。色の入る原初の神は東西南北を主り、動物の入る原初の神は天と地、過去と未来を主る」
「へぇ……そう言えば俺にも漢字名付いたよね。清晃、だっけ」
ピクリと、レイエルは反応する。今その一瞬、違和感を覚えたのだ。
「エオノス、もう1回、漢字名」
「え?清晃」
「……やっぱりだ。漢字名は魔力の増幅に役立つ」
「えっ」
「まぁ、そう言う事なんじゃがな」
声に見る。そこに居たのは香鏡=フォティゾ・イリョス。新たな最高神の為レイエルは玉座から離れ、エオノスは玉座から立ち上がろうとした。
「そのままでかまわないよ。新たな最高神殿」
「あ、えっと、清晃=エオノス・ノイです」
「そうかそうか」
「フォティゾ様。そう言う事とは?」
「香鏡で構わんよレイエル。あぁ、階層主の、そして原初の神の漢字と呼ばれる文字で記された名前は権能を正しく行使するための鍵なのじゃよ。もちろん魔力も増幅させる」
「なら、先代は」
「あぁ。レイエルの感情を見る為だけに、さも禁忌であるかのように振舞った。それに乗ったわしらも悪かったとは思うがの」
「そうでしたか……時に、香鏡様。権能とはどこで誰がどうやって見るモノなのか教えて行ってから魔界行ってくださいませんかね??」
「ほほっバレておるか。うむ。権能は階層主同士で見れば一目瞭然。清晃殿の権能は『心を鎮める』力じゃな」
「……び……微妙に使えない……」
同意の言葉を何とか飲み込んでレイエルは凹む清晃の元に立つ。だが、本当にこの位置に立つつもりはなかった。
「まぁ、そこは原初の神に言ってくれ。煌鵲殿がいらっしゃったと?」
「……霄狐様の方か俺には判断が付きませんでしたが、カササギを使いにしたので煌鵲様と判断しました」
「そうかそうか……あの方々は律義じゃからな。史真殿だけでは心もとないとわしを作り、どこかへ行ってしまわれた」
「そうだったのですね……」
「あぁ……おそらくあの2柱はまだこの世界に留まっておいでのはずじゃ」
「会えたらお礼を言いませんとね」
「……そうだな」
その煌鵲を見つけることを目標にしているレイエルは笑う。見つけたら是非連絡をと言いたいぐらいだった。
「っと、そろそろ頃合いかの」
「魔界に……?」
「言ってただろ先代殿。魔王の地位を簒奪するって。つまりカエルム様、秋央様を排除するつもりなんだよ」
「え」
「まぁ、完全排除はさせぬでな。安心しなされ」
「は、はい」
「どうするつもりですか?」
「冥界か幽界の王に納まって貰おうと思ってな。特に冥界は魂で溢れすぎている。何らかの策を講じねばと史真殿と秋央殿で話し合っていたのだ」
「……仕事していたのですね先代殿」
「まぁ、それ位はしてもらわんとな」
香鏡は扉から出ていこうとして、レイエルを振り返る。
「レイエルや」
「何でしょう、香鏡様」
「お前さんが歩く道は、茨道も可愛く見えるほどの険しい道だ。決して仲間の手を離すのではないぞ?」
「……えぇ。今の所、仲間は手を離そうとするとぶん殴ってくる過激な仲間ばかりなので」
「悪かったですね過激で」
ドアが開き、柑が入ってくる。入れ替わりで香鏡はひらひらと手を振り、その場から消えた。相変わらず自由な階層主だなと思いながら清晃の元に戻ると柑も共に上ってきた。
「エオノス様、一応コレ、期限が近すぎてお願いですからあの席で良いのでやってくださいとアレクエルさんに泣きつかれた書類になります」
「……ふぁい」
「柑、漢字名解禁。どうも力の引き金だったっぽい」
「おや。先代殿は其処もサボっていらっしゃったと」
「そう言う事だ」
「では清晃様?」
「サマ、いらない、せめてさんでいい」
「……まぁ、それでよろしいならそうしますが、清晃さん」
「アレクエルは多分泣いちゃうから無理だけどアスディルと4天使も同じく」
「伝えておきます」
とりあえずとレイエルは伸びをする。しゃらんとブレスレットが鳴ったのを見た清晃は少しだけ思案し、レイエルを見た。
「レイエル。ちょっとだけ最高神っぽい事やって良い?」
「これからどうぞいくらでも」
「最高神命令で、レイエル・ラージレット、柑・玲鵬、アスディル・ファーレットの3名に常時武器携帯を指示します」
「……良いのか?」
「魔王になった先代殿が市街地に瘴気を噴出さないとは限らない。何せあの方の権能は『瘴気を抑える』力。全土抑えて一点集中させれば思いのままに瘴気を噴出させることが出来る筈だ。その時いちいち神殿に来てってやって居たら手遅れになる」
「……承知いたしましたっと。柑も良いな?」
「えぇ、多分アスは喜ぶと思いますよ?アレ使うの楽しみにしていたので」
「一応手合わせとかは今まで通り演練場でね」
「わかってるよ。あと、お前さんの補佐っぽい事やるの今日限りだからな」
「え!?」
泣きそうになりながら清晃はレイエルを見る。そんな彼に笑いをこらえきれないレイエル、柑も書類で顔を隠し震えていた。
「書類は自分でできるんだし、アレクエルも居る。落ち着いたら側近見繕え。俺以外で」
「れいえる……」
「俺は却下。先代殿がどれだけ魔物噴き出してくるかわからないし、討伐は交代で行くようにする」
「えぇ。離れている時に市街地にとなった場合も考えませんとね」
「と言う訳で俺は魔物の討伐の仕事で忙しい」
「うぅ……」
「……俺を側近にするか、大親友にするか、どっちかなら?」
「大親友」
「はい、決まり」
「……レイエル?」
どんな経緯であれ、カササギが決めた最高神に納まった親友なのだ。格上げしても罰は当たらないだろうとレイエルは思っていた。そんなレイエルの思惑露知らず、清晃は目を輝かせた。
「やったぁっ」
「と言う訳で今日はやってくから。執務室どこだっけ」
「こっちです。じゃあ清晃さん、それ、やっておいてくださいね」
「う、うん」
何とも言えない不条理感に身を任せながら、清晃は書類を片付けていった。
ティミエルの眼前に大きく口を開いているその場所。常に瘴気が噴き出す魔界直通の穴。アルトとティミエルは揃ってその場所に立っていた。
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