麗しの君
アルト視点です。
『老若男女問わず銀の髪の者は殺す』
その台詞に心臓が鷲掴みにされた様な気がした。
……咲が、殺される。永遠に奪われる。
そう思うと、アルトは咲の手を掴み自分の方へと引き寄せていた。
そんなに儚げに笑わないで欲しい。
大丈夫、私が命に代えても貴方を守るから。
愛しい貴方を守って見せるから。
「……咲、やはり都を出ましょう。そして、二人で何処か遠くへ旅をしながら暮らしましょう。」
そう必死に言い募っても咲は首を縦には振ってくれない。
何がそんなにも彼女を縛るというのだろう。
自分の命の危険があるというのに。
……どうして?どうして!
アルトは激しい口調で咲に迫る。
「咲!お願いです!いずれこのままでは殺されてしまいます!」
それでも咲は頷いてくれない。
どうして、分かってくれない?
咲は私の全て。
私の命そのもの。
貴方がいない世界など何の価値も無い。
初めて咲を見たとき、天使かと思った。
陽の光によってキラキラと光る銀の髪はサラサラで、その麗しい美貌は自分ととても同じ人間とは思えなかった。
気がつくと惹きつけられるようにその銀髪に触れていた。
その後咲が起きてしまったから手を咄嗟に離してしまったけど、本当はもっと触っていたかった。
それから、咲は私に全てを与えてくれた。
産まれてから、何もかも諦めていた全てを。
自由……存在肯定……そして、愛。
もしかしたら、これは夢なんだろうかと思う時があったが、咲の温もりがこれは現実なんだと教えてくれた。
咲と一緒にいる時だけ、この世界が輝いて見えた。
初めて、産まれてきて良かったと思えた。
……咲が私を救ってくれた。
そんな咲に私が恋するのは必然だったと思う。
咲の優しく穏やかな心根も、天使の様な美しさも何もかも愛しくて堪らなかった。
咲を守りたいがために魔法も武術も必死に学んだ。
咲を振り向かせようと沢山触れたが、子供扱いされる事ばかりだった。
でも、それでもよかった。
……咲とずっと一緒に居られるなら、それだけで。
家に着いたら強引にでもこの都を出よう。
引きずってでも咲を連れて行く。
そうアルトは決意した。
「咲、家に帰りましょう。」
そう言って咲の手を引っ張って家路に着こうとしたアルトだったが、ふと見覚えのある少女を見かけた。
「……ルティア?」
その言葉に過剰に反応したのは咲だった。
咲はアルトの見ていた方向を見ると目を見開いていた。
そこには、アルトが武術でお世話になっている伯爵家の令嬢ルティアが正気の無い顔で一人ふらふらと歩いていた。
伯爵家の令嬢が一人で何をしているのだろう。
しかも平民の様な格好をして。
アルトはルティアと友達の様な関係を築いていた。
それを許した伯爵は寛大であると思う。
だが、咲はルティアと面識なんてない筈なのに何故、こんなに過剰に反応するのだろう。
気になったが問いかける前に、咲はルティアの方へ駆けていってしまった。
アルトもそれに続く。
近づいてくるアルトにルティアは気付くと、縋る様な今にも泣き出しそうな目で見つめ、アルトの服を掴んで叫んだ。
「お願い!アルト!ルジェ様を助けて!」
その言葉にアルトは目を見開く。
ルジェ様……ルジェオルア様はこの国の第二王子であり
……ルティアの想い人だ
次回もアルト視点です。
ネーミングセンスがなくてすみません。
次回も読んでくれると嬉しいです。




