贖い
楽しんでくれると嬉しいです。
咲の傾いだ体をアルトは支えた。
「大丈夫ですか!咲!」
咲はぽろぽろと涙を零しながらアルトにしがみついた。
多くの人々の運命を変えてしまった事に、咲は胸が張り裂けそうだった。
辛くて、辛くて堪らなかった。
咲はアルトの胸で声を上げて泣いた。
アルトはそんな咲をいつまでも優しく抱きしめていた。
落ち着いた咲はアルトから詳しく話を聞く事にした。
咲は決めたのだ。
変わってしまったこの世界から目を背けないと。
アルトは気遣わしげに咲を見ていたが、やがて語り始めた。
「王位の簒奪によって、都は今混乱しています。魔持ちに対する反発は強いですから、反乱も起こる事でしょう。だからーー」
そこで言葉を切るとアルトは真っ直ぐ咲を見つめた。
「この都から去りませんか?そして、旅をしながら一緒に暮らしませんか?」
その言葉に咲は目を見開いた。
愛しい人と旅をする。
きっと楽しい事だろう。
だが……
「……アルト、それは出来ない。」
見届けなければならない、この世界の行く末を。
それが私に出来るたった一つの贖いだ。
逃げる事はしない。
アルトは縋るような目で咲を見ていたが、決意が固いことを悟ったのだろう。
ため息を着くと咲の手を握った。
「……分かりました。私が咲を守ります。命に変えても貴方だけは守る。」
その言葉に咲は儚げな笑みを浮かべた。
咲とアルトは翌日王都の中心部に来ていた。
詳しく状況を知る為だ。
勿論、色彩の認識阻害魔法を掛けてだ。
王都の人々は口々に王位の簒奪の事を話していた。
咲は暗い気持ちになったが、ある会話が耳に飛び込んで来て思わず目を見開いた。
「王族は皆、処刑されるらしい。」
「おっかねぇなぁ……」
「それだけじゃなくってな。どうやら高位貴族の証である銀の髪を持つものは老若男女問わず殺されるらしいぞ。」
アルトも初めて聞いたのか目を見開いていた。
咲はただ呆然とその場に立っていた。
大勢の人の血が流れる。
歴史が変わったせいで。
……私のせいで
そして、ぼんやりとした頭で咲は思う。
……私も殺されるのだろうか。
貴族ではないけれど銀の髪を持っている。
ならばきっと殺されるのだろう。
咲は今にも消えてしまいそうな儚げな微笑みを浮かべた。
次回も読んでくれると嬉しいです。




