届かぬ想い
アルト視点です。
それは暗闇の中に沈んでいく様な感覚。
どれだけ足掻いても光に辿りつく事は出来無い。
『醜い、汚い、穢らわしい。』
そんな言葉はとうの昔に聞き飽きた。
否定され、拒絶される事ばかりで、認められる事は決して無い。
どうして産まれてきたんだろう、いつもそんな事ばかり考えていた。
だが、ある日天使が現れた。
その人は私に愛をくれた。
私を認めてくれ、自由にしてくれた。
初めて、人の善意に触れた。
その時私は初めて、光が当たる場所に辿りつく事が出来たと思った。
『王族は皆処刑される』
その言葉を思い出し、アルトは顔を歪めた。
ルティアは私の友人だ。
出来る事なら望みは叶えてあげたい。
だが……
アルトはルティアを引き離すと顔を背けた。
「……それは出来ない。」
「どうして!どうして助けてくれないの!あの人は私の全てなのよ!ねぇ、アルト!もう貴方しかいないの!お父様もみんな、もう諦めているの……もう貴方しか頼る人がいないのよ……ねぇ、アルト……貴方ならこの気持ち、分かってくれるでしょう?お願い……アルト……」
そう言うとルティアは意識を失った。
アルトはルティアが地面に倒れ込まないように支えていたのだが、その時突然咲が駆け出した。
「咲!」
アルトは咲を追いかけようとしたが、この状態のルティアを放っておく事は当然出来ない。
もの凄く咲が心配だが、アルトはルティアを抱き上げると伯爵邸へと急いだ。
伯爵邸に着くと顔見知りの門番が気付いてくれた。
「あれ?お前、アルトじゃ無いか!黒髪じゃないから驚いたぞ……それでその人は……お嬢様!お嬢様じゃないか!」
アルトは焦りで苛つきながらも、冷静に門番に話す。
「街中で偶然見つけたんだ。今は意識を失っている。早く中へ……」
そうして門番にルティアを渡し、急いで咲を探そうと来た道を戻ろうとした時、聞き慣れた声が聞こえた。
「アルトではないか……どうして此処に?」
声の方へ顔を向けるとそこにはルティアの父、伯爵がいた。
アルトは舌打ちしたいのを抑えて、何とか伯爵に対して作り笑いを浮かべた。
「偶然、お嬢様を街中で見かけまして、此方に連れてきたのです。怪我はありませんが、気を失っております。」
そのアルトの言葉に伯爵は安堵したようだ。
どうやら、伯爵は必死でルティアを探して居たらしい。
「では、これで……」
「……待て。」
再度引き留められ、アルトは思わず眉間にしわを寄せてしまった。
そのアルトの表情に伯爵は苦笑するも、真剣な表情を浮かべた。
「……守りなさい、あの人を。」
あの人、それが誰を示しているのかアルトははっきりと理解した。
「……はい、我が命に代えても。」
そうしてアルトは急ぎ、来た道をを戻っていった。
咲を探すために、再び先程まで居た場所にやってきたアルトだったが、やけに人々の騒めきが大きい事に違和感を覚えた。
そして、アルトは衝撃の光景を目にした。
そこには縛られて、黒髪の男と一緒の馬に乗せられ、王城へと連行される咲の姿があった。
次回から咲視点に戻ります。
次回も読んでくれると嬉しいです。




