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蒼零戦姫  作者: ジョンソン(P)
第一章
5/10

生徒会執行部

佐脇(サワキ) 莉子(リコ)

1月7日生まれ

年齢 15歳

身長・スリーサイズ 143cm B71 W48 H69

髪色・髪型 黄 ツーサイドアップ (短)

目の色 黄

趣味 オペラ観賞 ドールハウス

好きな食べ物 厚切りベーコンのチーズキッシュ

嫌いな食べ物 納豆


鬼屋敷(オニヤシキ) (シノブ)

7月6日生まれ

年齢 16歳

身長・スリーサイズ 145cm B72 W50 H73

髪色・髪型 黒 ロングストレート

目の色 琥珀

趣味 怪談 ホラーゲーム

好きな食べ物 アジの南蛮漬け

嫌いな食べ物 ピクルス

蒼雅「廊下も目が痛くなる煌びやかさね」


部屋を出て廊下を歩く。赤絨毯にシャンデリア、用途のわからない置物から壁泉まで。

まるで高級なホテルのような内装だ。


閃梨「役員は誰もいないな。それ以外の人間もほとんどいない」


部屋を一つ一つ開けていく御剣先生。


蒼雅「執行部会が開かれるって聞いたわ。役員はおそらく会議室にいるんじゃないかしら」


この建物はおそらく3階建て…1階に人の気配を感じないので、おそらく上の階に会議室があるのだろう。


閃梨「…もしかして、役員の連中に直接掃除のことを聞きに行くつもりじゃないだろうな?」


蒼雅「誰もいないなら、そうするしかないんじゃないかしら?」


閃梨「馬鹿か。あのな、奴らは一介の生徒じゃないんだ。学校の中でも勿論、世間的にもかなりの力を持つ…いわば上級国民というやつだ。そんなやつらに掃除のやり方を聞いてどうする?」


蒼雅「つまり掃除機すら触ったことのないお姫様ってことね。確かに役に立たなそうね」


閃梨「そうじゃない!…いや、実際触ったことはないだろうが…まず、失礼だろう。ただでさえ役員会議中だというのに、わざわざそれを遮ってまで聞くことじゃないだろう」


蒼雅「情けないわねぇ。たかだか10代のガキにビビりすぎでしょ」


閃梨「ガキはお前もだろ。…あのな、連中の機嫌を損ねると、最悪私はクビに、お前は退学になる。冗談抜きでな」


蒼雅「だったら帰ればいいじゃない。勝手に付いてきたのはアンタでしょ」


閃梨「そ、それはそうなんだが…」


蒼雅「それに、生粋のお嬢様が、たかだか掃除のことを尋ねただけで機嫌損ねるほどケツの穴が小さいわけないじゃない」


閃梨「…それもそうか」


…まぁでも別に掃除なんか適当にやってもバレやしないんでしょうけど。そもそも掃除するのが目的じゃないし。

むしろ、直接話せる機会があるなら好都合。


蒼雅「とにかく上に向かいましょう」


閃梨「ああ」



――――――――――――――――――――――――



蒼雅「ここが会議室…いかにもボスが好みそうな意匠の扉ね」


西洋の古城を思わせる荘厳な大扉を前にそんな感想を述べる。


蒼雅「気配の数は…」


閃梨「4人だな…執行部の会議にしちゃ少ないな」


蒼雅「…」


閃梨「ん?なんだ?」


蒼雅「アンタも分かるのね」


閃梨「剣士として当然だ。私としては、一介の不良が何故気配を読み取れるのか不思議だがな」


蒼雅「色々とあんのよ。さ、行くわよ」


私はおもむろに扉を開けた。


閃梨「ノックくらいしろ」


蒼雅「うっさい」




「誰だ!」


扉を開けた先には、大聖堂のような広々とした空間が広がっていた。

正面には戦乙女の彫像と大きなステンドグラス。周囲には凝った意匠のランプが並び、薄っすらと光が灯っている。


蒼雅「あれは…」

少し離れたところに一人の生徒が立っている。そしてそいつの目の前に二人の生徒。

その二人の生徒の足元に座り込んでいる生徒がいた。


閃梨「ど、どういうことだこれは…!」


「あん?…誰だい、アンタたち?」


蒼雅「…」


座り込んでいる生徒を見る。

その生徒の顔は、赤く腫れ上がり、口と鼻から血を流している。

どうやら数発殴られたみたいだ。


「あ…ぅ…ぁ…」


「ここは執行部役員以外立ち入り禁止だぞ」

並んでいる二人の片割れ…細身でショートカットの生徒が言った。


蒼雅「すいませーん。今日清掃に入る予定だったんですが…聞いてませんか?」


「はぁ?そんなもの、勝手にやればいいだろう!」


蒼雅「私、今日が初めてのシフトで…道具の場所とかよく分からなくて」


「はぁ…?あんた一体…」


「待て」


離れていた一人が声を上げる。


「貴方…もしかして霧雨蒼雅さんかしら?」


「なに…?」


「へぇ…」


蒼雅「…」


三人がこちらに向き直す。


「助けっ…!!助けてっ!」


座り込んでいた生徒が叫ぶ。


「誰が喋っていいって言ったァ!?」

ドスッ!!


「あぐぅっ…!!」

長髪の生徒が座り込んでいた生徒に蹴りを入れる。


閃梨「やめろっ!!」


「あ~ん?…そっちにいるあんたは…」


「…なるほど。これは自己紹介が必要かしら」


離れたところにいた生徒がこちらに歩み寄る。


椿「初めまして、霧雨さん。私は多賀城(タガジョウ) 椿(ツバキ)。生徒会長をやらせていただいてます」

彼女は恭しく会釈した。


一部をまとめた長い髪と銀縁の眼鏡が特徴的な女性。清楚で真面目そうな出で立ちだが、どこか底知れなさを感じる。


蒼雅「知ってるわ。何度か見かけたことがある」


椿「光栄です。こうやって直接話せて」


閃梨「多賀城会長、これはどういうことだ。あの生徒はなんだ?明らかな暴力行為だぞ」


椿「貴方は、中等部の御剣先生ですか…やれやれ、貴方を歓迎したつもりは無かったんですが」


閃梨「答えろ!」


「教師風情が、会長に無礼だぞ!」


椿「レナ…黙りなさい」


「っ!…す、すいません」


椿「順を追って説明しますよ。まずは彼女たちの紹介を」


愛美「生徒会副会長、甲斐(カイ) 愛美(マナミ)だよ。よろしくねぇ、愚民ども」


レナ「…同じく、レナ・チェンバレン」


蒼雅「生徒会…いや、学園トップ3ね。他の執行部役員の姿が見えないようだけど…」


椿「ええ。今日は予定がないから帰しました」


…風間先輩の言伝には会議があると聞いていたが、あれは嘘なのか?


椿「貴方は…風間さんの導きでここに来たのでしょう?」


蒼雅「なに…?」


椿「今日清掃があることを伝えてくれたのは、生徒会会計の鬼屋敷さんなんです」


彼女はゆっくりとソファーに腰掛ける。


椿「彼女は風間派の一人。そして、この生徒会サロンに入るための鍵を持っているのは、風間派にはただ一人。会計の鬼屋敷さんだけ」

このカードキーのことね…。


椿「でも事なかれ主義の彼女が仲間でもない者に鍵を渡すとは考えられない。…ならば彼女は自分の主…風間さんに預けたと考えられる」


椿「そして風間さんはそれを、貴方に渡した。でしょう?」


閃梨「な、なんだと…?」


蒼雅「…その通りよ」


一瞬、心を読まれたのかと思ったが…なるほど、頭が切れるようね。


椿「でも、そうね…。恐らく鬼屋敷さんの性格的に貴方に協力するつもりで託したとは思えません」


蒼雅「何が言いたいのかしら?」


椿「鍵を渡されたんじゃなく、風間さんが借りた、ということですよ」


蒼雅「…なに?」


椿「風間さんは狙いがあって貴方をここに導いたんじゃないかしら?」


蒼雅「…」

それならば合点は行く。だが何故…。私は馬鹿な遊びをやめさせたいだけだというのに。


閃梨「待て」


蒼雅「御剣先生…」


閃梨「話に付いていけてはないが…口を挟ませてもらう」


閃梨「霧雨、お前私に嘘をついたのか?…いや、最初から怪しくはあったが」

忘れかけていたが、彼女には奉仕活動の一環であると誤魔化していた。


閃梨「それに、どんな理由があろうとも、暴力行為を見過ごす訳にはいかない。たとえ生徒会であってもな」

前に出て、生徒会長を睨みつける閃梨。


椿「…そう。まぁ、貴方もここにいる以上、説明は必要ね」


生徒会長は、倒れた生徒に近づき、腰を落とす。


椿「この子は風間派の生徒で。執行部と風間さんが管理する総務部との間の連絡役でして」


「ぅぁ…」


椿「しかし、二学期も終わろうというこのタイミングで、風間さんがなにやら不穏な動きを見せていたのです」


閃梨「それがどうした」


愛美「だーからぁ、こいつを尋問してんだ。風間の馬鹿が何しようとしてるのかを聞き出すためにねぇ」


閃梨「…」


レナ「くだらないと思うだろうが、我々にとっては重要なことだ」


閃梨「何を言われたところで、お前たちがやっていることは看過できない」


椿「そう…貴方らしい答えですね。生徒ひとりひとりを重んじる、良き教育者です」



椿「…分かりました。ではあなたに免じて彼女は解放しましょう。…レナ」


レナ「はっ」


椿「彼女を外へ…医務室への手配も」


レナ「よろしいのですか?」


椿「構わないさ…どうせ彼女も、ここにいる二人も、ここで起きたことを触れ回ったとして…聞く耳を持つ者はいないわ」

レナは携帯で誰かに連絡した後、生徒を解放する。


閃梨「くっ…」

御剣先生の顔が険しくなる。これがイチ教師では踏み込めない領域ってことね…


椿「これでよろしいですね、御剣先生?」


閃梨「ちっ…」


蒼雅「…そっちの話が終わったのなら、次は私の話を聞いてもらえるかしら?」


椿「なんでしょう?」


蒼雅「分かってるんでしょう?今日生徒会から一部の生徒へ発布されたもの…私を倒し、捕らえた者に褒美を与えるといった内容の通知について」


閃梨「なに…?」


椿「ふむ…」


蒼雅「私に何の恨みがあってそんな嫌がらせをしてきたのかは分からないけど、私は平穏に日常を謳歌することが望みなの」


蒼雅「朝のように刺客を差し向けられると迷惑なのよ。だからやめさせてくれないかしら?」


椿「嫌がらせなんて、人聞きの悪い…一応善意でやっているつもりですよ」


蒼雅「あん?」


椿「規律や家柄に縛られているこの学園は、どうも刺激が少なく、退屈で息が詰まりそうになる」


椿「お嬢様といえど、皆清楚で優雅で品行方正に生きたいわけではない…。中には身を焦がすほどのスリルを、血が滾るほどの闘争を求める者もいる。それも大勢」


椿「それに、家柄や能力においてどう逆立ちしても上に届かず、悔しい思いをして燻っている生徒も多いのですよ」


蒼雅「…それと、この話になんの関係が?」


椿「だから私はそういった彼女らにチャンスを与えた。…バイオレンスという形で」

多賀城は手を広げ、堂々とした態度で高らかに言い放つ。


椿「刺激を求める者、闘争を求める者、チャンスを掴み取りたい者…そういった者たちのために、私は今回のイベントを企画したのです」


椿「最強との呼び声が高い貴方と戦い、褒美を勝ち取るという旨の…ね」


蒼雅「こっちの意思は無視かしら?私はやめろって言ってるのよ」


椿「おやおや…それは貴方の本心なのかしら?」


蒼雅「なに…?」


椿「聞くところによれば貴方はあの…"ヘルヘイム"から這い上がったとか…」


蒼雅「っ…!!!」

体に電流が走るような感覚を覚える。…何故お前が?


閃梨「…?」


椿「生物は本能には逆らえない…魂に刻まれたものは深く根強いものです」


椿「貴方は渇望しているはず…命を、魂を燃やし尽くすほどの闘争を」


椿「だから貴方にとっても悪い話ではないはず。力を発散するには丁度いいでしょう」


蒼雅「誰も望んでないわよ。決めつけで勝手なことをしないで」


椿「…ならば、証明してさしあげましょうか」


多賀城が指をパチンと鳴らす。



「…」



すると…扉からわらわらと何人もの生徒が現れる。


蒼雅「…」


閃梨「なんだ!?」


椿「御剣先生は聞いたことあるんじゃないですか?執行部が抱える護衛集団を」


閃梨「親衛隊か…!!」


御剣先生がハッとした様子で答える。


蒼雅「なにそれ?…あ、そういや昨日佐脇が連れていた気がする」


椿「ああ…彼女も執行部ですから。ただ、いま君たちの後ろにいるのは私の直属です。佐脇の私兵とは比べ物にならないかと」


蒼雅「すごい小物っぽい発言ね…」


「貴様!会長に対してなんてことを!」


「そうだそうだ!!」


後ろの連中が騒ぎ始める。


蒼雅「で?私の闘争本能とやらを証明させるってことは…こいつらに私を襲わせるってことかしら?」


椿「それが手っ取り早いかと」


蒼雅「護衛とはいえ一介の生徒に私の相手が務まるのかしら…?」


閃梨「霧雨、侮らない方がいい。親衛隊はレム女創設から存在するプロの戦闘集団だ。彼女たちも相当の訓練を受けているだろう」


蒼雅「ふぅん・・・」

目の前の集団を見る。


蒼雅「・・・なるほどね。こいつら、"生徒じゃない"のか」


椿「ほう・・・」


閃梨「・・・気付いたのか?」


蒼雅「ええ。年齢こそそれ相当だけど、こいつらは制服を身に着けているだけで、おそらく籍はない」


蒼雅「察するに生徒数の多さを利用して、潜り込ませたどこぞの兵士・・・それこそ、レム女と懇意にしている何らかの組織が管理している連中でしょう」


閃梨「そうだ・・・どこの組織かは私も知らないが、そうやってこの学園の要人を守ってきた存在らしい」


椿「いやはや流石ですね・・・彼女達の出で立ちだけでそこまで見破るとは。武の理に至った者が使えるという、観の眼というやつかしら?」


蒼雅「そんな大層なものじゃないわ。ただ知ってる匂いだったってだけよ」


椿「匂い?」


蒼雅「ええ・・・昔遊んだつまらない遊具の匂いがね」


椿「ふぅん・・・?」


閃梨「どうする霧雨?」


蒼雅「アホな挑発に乗る必要はない・・・けど」



蒼雅「平穏を脅かされるというのなら、止めるしかないわ」


軽く踏み込み、集団の先頭に刹那で近づく。


「え」



ドゴォ!!!


先頭にいる相手を掌打で吹き飛ばし、後ろにいる連中ごとまとめて吹き飛ばす


「なぁ!?」


「なんだこいつ!?」


閃梨「っ!?何が起きた!?」


レナ「!?」


愛美「狼狽えるな!まとめてかかれ!!」


「は、はい!」


残りの連中が、一斉にかかってくる。


剣、拳、槍、棍等・・・あらゆる得物による攻撃が迫る。


「もらった!」


蒼雅「フー・・・軽閃!」


シュッ


「消えた?」


蒼雅「後ろよ」


「なっ!?いつの間・・・に・・・」



バタバタバタ!!!!!


襲いかかってきた集団をまとめて、気絶させる



閃梨(速い・・・!今の技、ほとんど視えなかったぞ!)



蒼雅「残るは5人・・・」



「会長!増援に来ました!」


「ここは私達が!!!」


更に大量の増援が現れる。おそらく外で人払いしていた連中が総動員されている。あの三人の誰かが連絡を取っていたのか・・・



レナ「・・・会長、今のうちに」


椿「ええ」


愛美「じゃあね、ご両人」



いつの間にか、裏口の方から出ようとしている三人を見やる。


蒼雅「御剣先生・・・あいつらを追って」


閃梨「え?」


蒼雅「付き添いで来ただけの貴方を巻き込むのは気が引けるけど、教師としては見過ごせないでしょ?」


蒼雅「ま、後のことが怖いってんなら無理強いはしないけど」


閃梨「・・・ふん。見くびるなよ」


御剣先生はどこに隠し持っていたか刀を取り出す。


閃梨「誰であろうが集団リンチを見過ごすわけにはいかん。私はあいつらを追う」


閃梨「お前はそいつらの足止めをしろ。折った刀の分、しっかり働けよ!!」


そう言って御剣先生は駆け出していった。



蒼雅「良い速さね・・・流石は『剣閃』」


蒼雅「さて、こっちもさっさと片しましょうか」




---------------------------



多賀城たちを追い階段を降りていく。


既に目の前にはいないが、気配を探り、追いかける。


閃梨「やはり外の連中は全員霧雨のところにいる・・・このまま追えば確実に!」


階段を降りきり、ロビーに差し掛かる。


閃梨「外への出口・・・他に通路はない。よし・・・っ!」


刹那、強い殺気を感じた


閃梨「上か!」


咄嗟に横へ飛び退く。


ドゴォ!!!


さっきまで私がいたところに、誰かが降ってきた


閃梨「!?」


間髪入れず、またもや殺気が迫る。


冷静に刀を一振りし、何かを叩き落とした。



「避けられましたか・・・流石です」


「えー!?今の防ぐ!?」


閃梨「誰だ!?」


目の前に二人の人間・・・身に付けているのは制服。


閃梨「親衛隊か?・・・いや違う、お前らは生徒会か!」


「半分正解。あたしは生徒会じゃないけど、こっちはそう」

二人組の片割れ、赤い長髪の生徒が答える。


「はい。先輩方に足止めを頼まれまして」

もう一人の、緑髪の生徒が淡々と答える。


閃梨「お前ら・・・中等部か?」

ネクタイの色で高等部でないことを確認する。



「はい。私は中等部1年の片桐(カタギリ) 慧音(ケイネ)と申します。中等部生徒会執行部の庶務を担当しております」


「同じく1年の(クレナイ) (ユエ)。あたしは生徒会じゃないけど、まぁ、傭兵みたいなことしてる」


1年・・・担当したことはないから、生徒のことはあまり把握していないが、こんな連中がいるとは。

拳を構える片桐、そして、拳銃を構える紅。二人共、それなりの実力者だろう。


閃梨「紅と言ったか。それは本物じゃないだろう?」


月「あー、そりゃね。まぁ実銃も扱えるけど、こいつは特殊ゴム弾を使ったただのモデルガンさ」


さっき二撃目に飛んできたのはゴム弾か・・・実弾じゃなくて助かったな。


月「そっちこそ、真剣じゃないね。模造刀ってやつか」


閃梨「流石に真剣は持ち歩けないからな」


慧音「お喋りはそこまでにしましょう。・・・すぐに終わらせたいので」


慧音「コォォォ・・・仙剄!!!」


片桐は悠然と構え、闘気開放する


閃梨「この特殊な呼吸法・・・中華系の拳法か」


慧音「おそらく私と貴方の実力は五分・・・そしてこちらには強力な助っ人もいます。降参したほうが身のためですよ?」


閃梨「・・・そうか。だがこちらも教師として引けない。どんな立場だろうと生徒である限り、私はお前たちを指導する義務があるのでな」


閃梨「言っておくが、多人数での戦い方はそれなりに心得ている。・・・覚悟しておけ」


月「・・・来る!」


紅が銃口をこちらに向ける


静かに踏み込み、目の前に迫る



月「なっ!」


一振り。銃を弾き飛ばし、二振り目で紅の足を払う


月「くっ!」


紅の体が宙を舞うが、手をついて、曲芸の如く後ろに飛び退く。


慧音「ふっ!」


ワンテンポ遅れて背後から片桐の蹴りが飛んでくる


それを見切り、体を屈めつつ翻し、カウンター気味に刀を振るう


慧音「速いっ!・・だが!」


片桐は後ろに少し体を反らし避け、切り終わりを狙い拳を突き出してくる。


閃梨「くっ!」


一瞬の判断で攻撃を防ぐ。刀身で受けるが、凄まじいパワーで、後ろに吹き飛ばされる。


月「喰らえ!!」


紅は壁まで吹き飛ばされる私に、隠し持っていた2丁めで銃弾を浴びせる


刀で防ぎつつ壁を蹴り、再び二人に向かっていく。


慧音「正面・・・いや、上か!」


素早く蹴りを繰り出す片桐・・・だが!


閃梨「甘い!」


姿勢を限界まで下げ、相手の蹴りをかわしつつ一振り、薙ぐ。


閃梨「"林の型《影葉(かげのは)》"」


慧音「ぐぁ!」


ワンテンポ遅れて、顔を歪める片桐。だがすかさず拳を振り下ろしてくる。


閃梨「っ!」


後ろに飛び退き再び距離を取る。


月「ケイちゃん!」


紅が銃を構えこちらを狙う


閃梨「遅い!」


引き金を引くよりも早く、紅に斬りかかる


月「しまっ・・・!」


刃を突き出し、切っ先が紅の肩に触れようとした


瞬間


閃梨「がっ…はぁ!!?」


横腹に鋭い痛みと、衝撃が走る。


まるで鉄骨が飛んできたかの如く。あまりの衝撃に呼吸が出来なくなる。


ドゴォ!!!


閃梨「あぐぁあ!!!」


更に追い打ちをかけるように、反対側に強い衝撃…。

恐らく吹き飛ばされて、壁に叩きつけられたのだろう。


慧音「ユエさん、油断しすぎですよ。彼女は"B級"ですよ」


月「分かってるよ…ったく、そもそも得意な距離じゃないってのに…」


慧音「それでもやってもらわないと。そういう契約でしょ?」


月「はいはい…しかしまぁ流石だねぇケイちゃん。一撃で形勢逆転じゃん。これあたし要らなかったんじゃ?」


慧音「いえ、貴方が気を逸らしてくれたおかげで、スキを突くことが出来ました。正面から戦っていたら、速さで負けていたかもしれない…」


閃梨「ぐぁ…」


軋む体をゆっくりと上げる。


慧音「…起き上がらない方がよろしいかと。明日からの授業に響きますよ、体育教師殿」


閃梨「だ…まれ…!私は…!」


慧音「会長達は既に敷地を出ました。もう追うことはできませんよ?」


閃梨「…くそが…」


慧音「ちなみに明日以降は登校も控えて、授業や生徒会もリモートで行うそうです。…あの三人以外は知らない場所で」



閃梨「なん…だ…と?」


月「流石特権階級サマだ。なんでもありだねぇ」


慧音「そもそも、霧雨蒼雅が我々に目をつけた時点で彼女たちの次の一手は決まっていました。なので私たちがここで貴方がたを足止めすることは予定通りだったのです」


閃梨「なら…今日この時間に…霧雨が来ることも…?」


慧音「さぁ…?ただ、いつ来ても丁重にもてなす準備は、していたと思います」


閃梨「ふざ…けるな…お前らは…何がしたいんだ…?」


慧音「私は会長の意向に従っているまで。それが私の役目。目的を問う気などさらさらありません」


月「あたしも、貰った報酬分仕事してるだけ〜」


閃梨「話が…通じない…」


意識が徐々に薄れる。

…クソ!一撃貰っただけで、こんな…


「まったく…情けないわね」


慧音「!」


月「誰!?」


閃梨「…お前…」


薄れゆく意識の中、目に映ったのは、蒼い眼の不良生徒。


蒼雅「多賀城たちは逃がすし、こんな生意気なガキ共にやられるなんて、大人の威厳ゼロね」


閃梨「うる…さ……い」


蒼雅「…しばらく寝てなさい。一年坊は私が躾けておくから」


閃梨「ちっ…生意気な奴め…」


私の意識は、そこで途切れた。



―――――――――――――――


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