5.出会い②
街に着くと、ロスカは驚いた。
もうこんなに夕方なのに、まだ活気がある。
村では夕方にはほとんどそれぞれの家で過ごしていた。
ロスカにとっては、初めての夜の世界だった。
昼にロープを買った店へ向かう。
ロープ以外にも、剣や鞄などの旅に必要な物も売っていた。
店の扉を開くと、昼の店員の他に一人の男がいた。
頭には白髪が混じり始めている背の高い初老の男だ。
真っ白い外套に身を包んでいる。
ロスカは、この男に見覚えがあった。
回収者の説明の際にいた。
集まった中で、真っ白い外套は相当浮いていたのだ。
男はロスカを見ると、心配そうな顔で話しかけてきた。
幸薄そうな顔がさらに強調されている。
「君は回収者の説明のときにいた子だね?」
ロスカはうなずいた。
「よかった……。君みたいな子供が、回収者だなんて……」
ロスカには、この男の言っている意味がわからなかった。
この男の言いたいことは何なのだろうと考えた。
「あ、ごめんね。僕はダリオっていうんだ。突然話しかけられても困るよね……。でも、僕の娘と年も近そうだし放っておけなかったんだ」
ダリオは一生懸命笑顔を作り言った。
しかしロスカは、俯いた。
この話にどう反応していいのかわからない。
「ロスカ、お前を心配してたんだってよ、このおっさんは」
ロスカが両手で持っていたレオスが言った。
てっきり、ダリオが金をせびったりする目的だろうと思っていた。
しかし実際には、心配されていた。ロスカは、心に小さな火がともったような気がした。
「うわ! 石がしゃべった! 何で!?」
ダリオは相当驚いたようで、後ろにぴょんと飛んでいた。
まるで野うさぎのようだ。
「よお、おっさん。俺はレオスってんだ。ロスカを心配してくれてありがとな」
レオスはダリオの質問を答えずに言った。
ロスカには、うまくごまかしたように見えた。
「石が子供の面倒を?」
ダリオは、レオスとずいぶん距離を取っている。
石が話すのは都会では普通なのかと受け入れていたロスカだったが、これは異常なことなのだと気付いた。
剣を教えてもらうなんて、更に信じられないだろう。
「あ、私はロスカです」
ロスカは深々と頭を下げる。
先ほどの慌てぶりから一転して、同じくダリオもぺこりと頭を下げた。
「この石のレオスが剣の師匠で、今剣を買いに来ました」
「剣の師匠!? 石なのに!?」
ダリオはずっと驚きっぱなしだった。
声が大きかったので、店員の女性がダリオをじろりとにらみつけた。
ダリオは肩をすくめて、声を落として続けた。
「ロスカちゃんは一人で大丈夫なのかな? 回収者って基本的に説明の時にパーティを作って活動するものだけど……」
説明が終わってすぐ、ロスカは城から出てしまっていたので知らなかった。
だが、そこに残っていたとしても、ロスカは孤独だっただろう。
「もしよかったら、僕と一緒にどうかなって思ってたんだ。一応これでも回復魔法士だから……」
「回復魔法士? そんなのレアじゃねえか。おっさん引っ張りだこだろ」
ダリオの言葉に、レオスは少し驚いたようだった。
「まあね。でも、さすがに子供を放置できなくて、返事は保留にしてあるよ」
「回復魔法士ってレアなものなの?」
「あぁ、そうだな。名前の通り回復の使い手だが、これが中々難しくてな。使える人間ってのは本当に一握りなんだ」
確かにロスカも、回復魔法は使えない。できるのは、基本的な初級魔法くらいだ。
「そうかぁ……。ベザクは確かに僕の行く方向とは真逆だね」
「レオス君、ロスカちゃんのこと絶対守ってね」
ダリオはそう言って、店から出て行った。
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