4.出会い①
少しかすれたような男の大声が聞こえて、ロスカはキョロキョロと辺りを見回す。
だが、見回しても辺りには誰もいない。
この期に及んで、死にたくない気持ちでも出てきて幻聴でも聞いたのだろうか。
ロスカは自分を軽蔑した。
そして、もう一度魔法を解除しようとした時――
「おい! 聞こえてないのか? ちょっと待て!」
これは幻聴ではないと気付いたロスカは、一度ロープから離れた。
人影はない。
少なくともロスカの目の届く範囲には。
「こっちに来てくれ」
声は、隆起した地面の根元から聞こえるようだ。
ロスカはそっと降りる。
やはり人影はない。
「ここだ!」
先ほどよりはっきりとロスカの耳に届いた。
その方角を見ると、鮮やかな緑の石が転がっている。
ロスカの握りこぶしほどの大きさだが、高価な鉱石かもしれない。
「お! やっと目が合ったな」
また男の声。
少し微笑んだような響きを含んでいる。
だがそんなことよりも。
目が合ったということに、ロスカは違和感を覚えた。
彼女が見ているのは、緑の石だ。
「もしかして、この石が話してるの……?」
恐る恐る問いかける。
石が話すなど聞いたことはない。
信じられない。
そんなわけがない。
たくさんの否定の感情が、ロスカの頭の中をぐるぐると回っていた。
「正解だぜ、お嬢ちゃん」
だが、その考えを打ち消す言葉が聞こえた。
どうやら話す以外にも、ロスカのことがしっかり見えている。
石の存在を認めるしかなさそうだ。
「俺はレオス。お嬢ちゃんは?」
「私はロスカ」
寂しくて村の牛に話しかけたことはあるが、石と自己紹介するのは初めての経験だった。
「ロスカか。いい名前だな」
ロスカには、石のレオスが今微笑んでいるのがわかった。
声の響きでここまで感情がわかる。
ロスカには、知らないことだった。
そして、誰かに微笑まれたのも初めての経験だった。
でも、勘違いかもしれない。
ロスカは、胸の中の期待をすぐに追い出した。
そして、次に現れた感情は怒りだった。
やっと死ねるところだったのに。
やっと楽になれるところだったのに。
やっとやっとやっと。
それをこの石が邪魔をした。
ロスカの心にここまでの感情が溢れたのは、初めてのことだった。
そして、ロスカの頬に一筋の涙が伝う。
一度溢れてしまえば止まらない。
その後は、洪水のように涙が溢れた。
「涙が……止まらないし、止められない」
しゃくり上げながら、何度も繰り返す。
また初めての経験だった。
ロスカがこんなに泣いたことはない。
そんなロスカにレオスは驚いたりせずに、ずっと優しい言葉をかけ続けていた。
今までの傷に染み渡るように、その言葉はロスカの心の奥底に染み渡っていった。
ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます。
絶対幸せが訪れますように。




