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勇者の落としもの  作者: 永久福
第2章

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4.出会い①

 少しかすれたような男の大声が聞こえて、ロスカはキョロキョロと辺りを見回す。


 だが、見回しても辺りには誰もいない。


 この期に及んで、死にたくない気持ちでも出てきて幻聴でも聞いたのだろうか。


 ロスカは自分を軽蔑した。


 そして、もう一度魔法を解除しようとした時――


「おい! 聞こえてないのか? ちょっと待て!」


 これは幻聴ではないと気付いたロスカは、一度ロープから離れた。


 人影はない。


 少なくともロスカの目の届く範囲には。


「こっちに来てくれ」


 声は、隆起した地面の根元から聞こえるようだ。


 ロスカはそっと降りる。


 やはり人影はない。


「ここだ!」


 先ほどよりはっきりとロスカの耳に届いた。


 その方角を見ると、鮮やかな緑の石が転がっている。


 ロスカの握りこぶしほどの大きさだが、高価な鉱石かもしれない。


「お! やっと目が合ったな」


 また男の声。


 少し微笑んだような響きを含んでいる。


 だがそんなことよりも。


 目が合ったということに、ロスカは違和感を覚えた。


 彼女が見ているのは、緑の石だ。


「もしかして、この石が話してるの……?」


 恐る恐る問いかける。


 石が話すなど聞いたことはない。


 信じられない。


 そんなわけがない。


 たくさんの否定の感情が、ロスカの頭の中をぐるぐると回っていた。


「正解だぜ、お嬢ちゃん」


 だが、その考えを打ち消す言葉が聞こえた。


 どうやら話す以外にも、ロスカのことがしっかり見えている。


 石の存在を認めるしかなさそうだ。


「俺はレオス。お嬢ちゃんは?」


「私はロスカ」


 寂しくて村の牛に話しかけたことはあるが、石と自己紹介するのは初めての経験だった。


「ロスカか。いい名前だな」


 ロスカには、石のレオスが今微笑んでいるのがわかった。


 声の響きでここまで感情がわかる。


 ロスカには、知らないことだった。


 そして、誰かに微笑まれたのも初めての経験だった。


 でも、勘違いかもしれない。


 ロスカは、胸の中の期待をすぐに追い出した。


 そして、次に現れた感情は怒りだった。


 やっと死ねるところだったのに。


 やっと楽になれるところだったのに。


 やっとやっとやっと。


 それをこの石が邪魔をした。


 ロスカの心にここまでの感情が溢れたのは、初めてのことだった。


 そして、ロスカの頬に一筋の涙が伝う。


 一度溢れてしまえば止まらない。


 その後は、洪水のように涙が溢れた。


「涙が……止まらないし、止められない」


 しゃくり上げながら、何度も繰り返す。


 また初めての経験だった。


 ロスカがこんなに泣いたことはない。


 そんなロスカにレオスは驚いたりせずに、ずっと優しい言葉をかけ続けていた。


 今までの傷に染み渡るように、その言葉はロスカの心の奥底に染み渡っていった。



ここまで読んでくれて、本当にありがとうございます。

絶対幸せが訪れますように。

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