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勇者の落としもの  作者: 永久福
第4章

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36.レオスの過去③

 

 それからすぐに、レオスは騎士団長から呼び出された。


 半壊した城の応接室に入ると、そこには二人の少女がいた。


 一人は、紺色のローブに身を包んだ少女だ。


 ゆるくカールした黒髪が、束ねられている。


 じろりと赤い瞳が、値踏みするようにレオスを見ている。


 この少女は、明らかに魔法使いだろう。


 首や指に、魔道具と思われるアクセサリーがついている。


 それに腰のベルトには、虹色に光る石の杖が刺さっていた。


 もう一人の少女は、真っ白なローブを着ている。


 この色は間違いなく回復魔法士だ。


 顎のラインにきっちり切られた金髪は、芸術品のように美しかった。


 先ほどの魔法使いとは違い、紫の瞳は不安げに揺れている。


 魔法使いの杖とは違い、回復魔法士の杖は少女の身長ほどもあった。


 それを右手に携えている。


 華奢な体には、不釣り合いな杖だ。


「おお、レオス。来てくれたか」


 団長が、レオスを見てほんの少し口の端を上げる。


 団長も、この戦争が起こってからすっかり老け込んでしまった。


 顔のしわが増えて、真っ黒い髪にはたくさんの白が混じっている。


「どうして私は呼ばれたのでしょうか」


 レオスは団長に尋ねる。


「まあ、もう少し待ってくれ。もう一人来るんだ。説明はそのあとにしよう」


 団長が言い終わらないうちに、扉がノックされる。


「入りたまえ」


 扉が開くと、そこにはセリオンが立っていた。


 彼に会うのは久しぶりだが、ずいぶんと精悍な顔つきになっていた。


 あの頃のやわらかい雰囲気は、すっかり消え去っていた。


 セリオンがレオスの隣に並ぶと、見習い騎士のことを思い出した。


 セリオンは今も、レオスより小さい。


 しかし、それはわずかな差になっていた。


 未だに細身ではあるが、見ただけで圧倒されるような気配を漂わせている。


「よし。全員そろったな」


 団長は椅子から立ち上がって、話し始めた。


「実は諸君には、極秘任務を行ってもらいたい」


「極秘任務ですか?」


 回復魔法士が、不安げな表情で聞き返す。


 団長はうなずくと、そのまま話を続けた。


「そうだ。この四人で行うのは魔王の討伐だ」


 二人の少女が息をのむのがわかった。


 先ほどの雲に隠れた大魔法の使いが、脳裏にちらつく。


「所詮、相手は魔物だ。率いている頭さえ潰してしまえば、この戦争も終わるだろう」


「たった四人でですか……?」


 回復魔法士の少女が不安げに尋ねる。


 その不安はもっともだ。


 危険な魔物だと、最低でも分隊で相手をするのが普通だ。


 たった四人で魔物討伐をするなんて聞いたことがない。


「そうだ。君たちは、我が国の中でも抜きん出て才能のある者たちだ。これほどの人材が一度に集まることも、金輪際ないだろう。私は君たちならできると思っている」


 団長は、レオスたち四人の顔を見ながら話す。


 今ここでどれだけ褒められても、国のために死んでくれと言われているようにしか感じられない。


 レオスたちが何も言わないのを確認すると、団長はまた話を続けた。


「君たちは基本的に隠密行動をとってほしい。あくまで魔王の討伐だけを考えるのだ。相手は所詮魔物だ。頭さえ叩けばこの戦争は終わるだろう」


 確かに攻めてくる魔物たちは、統率がとれているだけで、魔物自体の知能が変わっただけではない。


 操られているか、単純な命令を聞いているかの二択だろう。


「承知しました」


 セリオンが、何の躊躇もなく答えた。


 全員の視線が、一瞬でセリオンに向かう。


 指先まで揃えた右手を胸に当てて、敬礼もしている。


 レオスもセリオンに習って敬礼した。


 所詮、レオスは騎士だ。


 上長に死ねと言われたら、死ななければならない。


 そこに自分の意思はないのだ。


 少女二人も、おずおずと敬礼した。


 ローブで隠れていたが、彼女たちの装備にはザルディアの国紋が刻まれている。


 彼女たちにも、断る権利などない。


 団長は満足げに四人を見ると、大きなテーブルに地図を広げた。


「先ほど、魔王を追跡していった者から情報が入った」


 団長は、一つの場所を指さす。


「ベザクにあるオルダナ火山。そこまで行ったところで情報が途絶えた。諸君には、ベザクまで向かってもらおうと思う」


 団長はまた全員の目を見た。


「これは人類の存亡をかけた戦いだ。頼んだぞ」


「承知しました」


 そこから、レオスたち四人の魔王討伐の旅が始まった。


ここまで見てくださってありがとうございます。

楽しんでいただけますでしょうか?

もしよかったら感想などいただけるとうれしいです。

見てくれたあなたに、幸せが訪れますように。

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