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勇者の落としもの  作者: 永久福
第4章

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31.パーティ②

 

「レオス、あのおじさん覚えてる?」


「あー……。顔は覚えてるぜ。ロスカと初めて会った日の道具屋にいたおっさんだろ?」


「そうそう。確か名前はえっと……」


 ロスカとレオスの視線に気付いたのか、その男がロスカを見る。


 すると驚いた顔をして、こちらに走ってくる。


「ロスカちゃん! また会えてうれしいよ!」


 にこにこと微笑みながら、初老の男は言う。


 真っ白なローブに身を包んで、ロスカのことを心配してくれた――。


「ダリオさんだ!」


 やっとロスカは名前を思い出すと、ダリオはうんうんと頷いた。


 どうやら名前を忘れていたことには、気付かれていないようだ。


「よかったよ……。やっぱり意地でも連れて行けばよかったかもって後悔してたんだ。本当にまた会えてうれしいよ」


 ダリオの目尻には、うっすらと涙が光っていた。


 あの時会っただけなのに、ここまで心配してくれていた。


 優しい人なのだろう。


「えーと、心配してくれてありがとうございます?」


 ロスカはどうしていいかわからずに、曖昧な返事をする。


「そういえば、前見せてくれた石は……」


「俺は石じゃなくてレオスだぜ、おっさん」


 レオスが話すと、ダリオは体をビクッと跳ねさせた。


 まだレオスの存在に慣れていないようだ。


「あぁそうだ。レオス君だ。……ところで、そのレオス君は、その位置でいいの?」


 ダリオはなんとなく目をそらしながら、レオスを指さす。


 ロスカには何を言いたいのかわからない。


「カカカ。おっさん、こんなガキの胸のことなんざ気にしなくていいんだよ」


 レオスはダリオの言いたいことを理解したようで、大笑いしている。


 ふと、視線を感じた。


 ロスカは勢いよく振り返る。


 すると、近衛兵たちがじっと値踏みするようにロスカを見ている。


 なんだか嫌な予感がする。


 そう思ったロスカに、誰かがぶつかる。


 意図せずぶつかったわけではない。


 これはわざとだろうとロスカはすぐに気がついた。


「あぁ、これはこれはすみません。見えなかったもので」


 ぶつかってきた男が、嫌味な言い方で謝る。


 見えなかったというが、ロスカと身長はそこまで差がない。


 彼の方が、少し小さいくらいだ。


 髪も瞳も燃えるような赤で、ロスカを睨んでいる。


 だが顔が童顔なせいで、子供が睨んでいるだけのように見える。


 歳もロスカとそう変わらないだろう。


「何か用?」


「おやおやおや、これはかの有名なロスカさんでは? 『小さき英雄』の?」


 赤髪の男は、笑いをこらえるようにして言った。


 どうにかしてロスカのことを馬鹿にしたいようだ。


「その小さきってやつは、勝手に誰かが言ってるだけだよ」


「へぇ。でもとても似合ってますよ」


「そう。ありがとう。他に何か用?」


 ロスカがそう言うと、赤髪の男の拳がわなわなと震え始めた。


 そばで見ているダリオが一番焦って、どうしていいかわからないようだ。


「お前、調子に乗るなよ。ちょっと腕に自信があるからって、いい気になってんじゃねぇぞ」


「調子にも乗ってないし、いい気にもなってない。ただ真面目に仕事してただけ」


「俺はな! お前より年上なんだよ! だから敬語使わない限り、お前は調子に乗ってるんだ!」


「そんなに変わらないように見えるけど」


「俺は十八だ! それに剣の腕だって知名度だって、俺の方が上だ」


 赤髪は、胸を張って言う。


「私はあなた知らないけど」


「名前を聞いたらわかるはずだ。有名だからな」


「へぇそうなんだ」


「聞けよ! お名前はなんですかって!」


「オナマエハナンデスカ」


「ことごとくむかつく女だな! まあいい。聞いて驚け! 俺の名は……」


「諸君!」


 その時、玉座の前からローブを着た男が声を張り上げた。


「まもなく王がおいでになる。全員跪け」


 その言葉で、広間にいる男たちが片膝をつき始める。


 ダリオが右膝をついて、頭を下げたのでロスカも真似をする。


 赤髪の男はまた歳の変わらないような少女が、彼の首根っこを掴んでどこかに連れて行った。


 どうやらパーティの仲間のようだ。


 近衛兵たちが、玉座から扉までに一列に整列して、剣を抜く。


 そして顔の前で剣をかかげた。敬礼だ。


 ゆっくりと扉が開く音。


 その後に、靴音と衣擦れの音が聞こえる。


 王が歩いている。


 ロスカは地面の赤い絨毯をぼーっと見ていた。


 椅子のきしむ音が聞こえる。玉座に座ったようだ。


「顔を上げよ」


ここまで見てくださってありがとうございます。

楽しんでいただけますでしょうか?

もしよかったら感想などいただけるとうれしいです。

見てくれたあなたに、幸せが訪れますように。

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