31.パーティ②
「レオス、あのおじさん覚えてる?」
「あー……。顔は覚えてるぜ。ロスカと初めて会った日の道具屋にいたおっさんだろ?」
「そうそう。確か名前はえっと……」
ロスカとレオスの視線に気付いたのか、その男がロスカを見る。
すると驚いた顔をして、こちらに走ってくる。
「ロスカちゃん! また会えてうれしいよ!」
にこにこと微笑みながら、初老の男は言う。
真っ白なローブに身を包んで、ロスカのことを心配してくれた――。
「ダリオさんだ!」
やっとロスカは名前を思い出すと、ダリオはうんうんと頷いた。
どうやら名前を忘れていたことには、気付かれていないようだ。
「よかったよ……。やっぱり意地でも連れて行けばよかったかもって後悔してたんだ。本当にまた会えてうれしいよ」
ダリオの目尻には、うっすらと涙が光っていた。
あの時会っただけなのに、ここまで心配してくれていた。
優しい人なのだろう。
「えーと、心配してくれてありがとうございます?」
ロスカはどうしていいかわからずに、曖昧な返事をする。
「そういえば、前見せてくれた石は……」
「俺は石じゃなくてレオスだぜ、おっさん」
レオスが話すと、ダリオは体をビクッと跳ねさせた。
まだレオスの存在に慣れていないようだ。
「あぁそうだ。レオス君だ。……ところで、そのレオス君は、その位置でいいの?」
ダリオはなんとなく目をそらしながら、レオスを指さす。
ロスカには何を言いたいのかわからない。
「カカカ。おっさん、こんなガキの胸のことなんざ気にしなくていいんだよ」
レオスはダリオの言いたいことを理解したようで、大笑いしている。
ふと、視線を感じた。
ロスカは勢いよく振り返る。
すると、近衛兵たちがじっと値踏みするようにロスカを見ている。
なんだか嫌な予感がする。
そう思ったロスカに、誰かがぶつかる。
意図せずぶつかったわけではない。
これはわざとだろうとロスカはすぐに気がついた。
「あぁ、これはこれはすみません。見えなかったもので」
ぶつかってきた男が、嫌味な言い方で謝る。
見えなかったというが、ロスカと身長はそこまで差がない。
彼の方が、少し小さいくらいだ。
髪も瞳も燃えるような赤で、ロスカを睨んでいる。
だが顔が童顔なせいで、子供が睨んでいるだけのように見える。
歳もロスカとそう変わらないだろう。
「何か用?」
「おやおやおや、これはかの有名なロスカさんでは? 『小さき英雄』の?」
赤髪の男は、笑いをこらえるようにして言った。
どうにかしてロスカのことを馬鹿にしたいようだ。
「その小さきってやつは、勝手に誰かが言ってるだけだよ」
「へぇ。でもとても似合ってますよ」
「そう。ありがとう。他に何か用?」
ロスカがそう言うと、赤髪の男の拳がわなわなと震え始めた。
そばで見ているダリオが一番焦って、どうしていいかわからないようだ。
「お前、調子に乗るなよ。ちょっと腕に自信があるからって、いい気になってんじゃねぇぞ」
「調子にも乗ってないし、いい気にもなってない。ただ真面目に仕事してただけ」
「俺はな! お前より年上なんだよ! だから敬語使わない限り、お前は調子に乗ってるんだ!」
「そんなに変わらないように見えるけど」
「俺は十八だ! それに剣の腕だって知名度だって、俺の方が上だ」
赤髪は、胸を張って言う。
「私はあなた知らないけど」
「名前を聞いたらわかるはずだ。有名だからな」
「へぇそうなんだ」
「聞けよ! お名前はなんですかって!」
「オナマエハナンデスカ」
「ことごとくむかつく女だな! まあいい。聞いて驚け! 俺の名は……」
「諸君!」
その時、玉座の前からローブを着た男が声を張り上げた。
「まもなく王がおいでになる。全員跪け」
その言葉で、広間にいる男たちが片膝をつき始める。
ダリオが右膝をついて、頭を下げたのでロスカも真似をする。
赤髪の男はまた歳の変わらないような少女が、彼の首根っこを掴んでどこかに連れて行った。
どうやらパーティの仲間のようだ。
近衛兵たちが、玉座から扉までに一列に整列して、剣を抜く。
そして顔の前で剣をかかげた。敬礼だ。
ゆっくりと扉が開く音。
その後に、靴音と衣擦れの音が聞こえる。
王が歩いている。
ロスカは地面の赤い絨毯をぼーっと見ていた。
椅子のきしむ音が聞こえる。玉座に座ったようだ。
「顔を上げよ」
ここまで見てくださってありがとうございます。
楽しんでいただけますでしょうか?
もしよかったら感想などいただけるとうれしいです。
見てくれたあなたに、幸せが訪れますように。




