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勇者の落としもの  作者: 永久福
第4章

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27.日常

 

「ロスカ! ロスカ!」


 ヨマ婆の声が聞こえる。


 だが、体を起こす気が起きない。


 眠気がロスカをベッドに縛り付ける。


 階段を上がる音が聞こえる。


「ロスカ! 起きな!」


 扉が大きな音を立てて開けられる。


 そこには、険しい顔のヨマ婆が立っていた。


 ロスカは慌てて毛布に頭を突っ込んだ。


 だが、すぐに強い力で毛布を剥ぎ取られる。


 日差しが目にしみる。


「あんた、いつまで寝てんだい!」


「うーん……まだ寝かせてよー……」


「ラシードがお呼びだよ」


 その言葉に、ロスカは慌てて飛び起きた。


「え! ラシード?」


 ロスカの頬が紅く染まる。ベッドから飛び出すと、鏡の前に立ちブラシで念入りに髪をとかす。


 髪は最近、下ろすようにしている。


「髪の前に顔洗って来な」


 ヨマ婆が呆れたような声で言うと、ロスカは慌てて階段を駆け下りる。


 一階に下りると、わいわいと賑やかな声が聞こえる。


 銀鹿の角亭は今日も大繁盛のようだ。


 身支度を終えると、店の扉を開ける。


 そこでは街の住民から旅人までが、楽しそうに食事をしていた。


 その中のカウンターの端だ。


 そこに、金髪の音が座っている。


 左手で頬杖をついている。


 その左手には、人差し指と中指がない。


 それに、右のシャツの袖が、開け放した扉からの風で揺れている。


 ロスカは改めて髪を手櫛で整えると、その青年に声をかけた。


「ラシード!」


 そう声をかけると、ラシードは青い瞳がロスカに向けられる。


 それだけで、ロスカの心は踊った。


「おはよう。もうお昼だけどね」


 ラシードは、にこにこと笑いながら話す。


 ロスカはその姿に目を離せなくなる。


「けっ! 色ぼけが……」


 そんなロスカに、テーブルからレオスが悪態をついていた。


 ロスカはむんずとレオスを掴むと、ぎろりと睨んだ。


「うるさい。人のこと言えないでしょ、この本ボケ」


「言うじゃねーか、師匠に向かって」


 ロスカとレオスのやりとりに、ラシードはあははと笑う。


「ラシード、いつもレオスのために図書館行くの大変じゃない?」


「いやいや、全然大丈夫だよ。むしろロスカも大変だろ? 遠慮せずに僕に頼ってくれていいんだからね」


「ラシードは優しいね。レオスとは大違い……」


「なんか今日特に当たりきつくないか?」


「ラシード、今回も徹夜だったんでしょ? レオスはまた私が連れて行くからもう家に帰って」


「じゃあせっかくだし、一緒に図書館に向かおうか」


 ラシードは立ち上がると、ロスカと店から出た。


 二人で並ぶと、ロスカの頭がラシードの肩と並ぶ。


 当時は、頭が胸の位置だったのにと感慨深くなる。


「ずいぶん街も復興したよね」


 店の外に出ると、街に人が歩いている。


 人々は笑顔で、楽しく過ごせている。ベザクに人が戻ってきた。


 未だにボロボロになった建物や、道もある。


 完全に復興するには、あと数年はかかるだろう。


 それでも、人が安心して暮らせる暖かい街になった。


「そうだね。それもこれもロスカのおかげだなぁ」


「いつも言ってるけど、私の力じゃないよ」


 ロスカはラシードと恒例になっている言葉を返す。


 火山での戦い以降、ラシードはことあるごとに、ロスカに感謝を伝えてくるのだ。


「あれからもう三年も経ったんだね」


 ラシードは、気持ちが良いくらい晴れた空を見て言った。


 弟のラシルのことを考えているのかもしれない。


 ロスカも、オルダナ火山の戦いのことを思い出していた。


ここまで見てくださってありがとうございます。

楽しんでいただけますでしょうか?

もしよかったら感想などいただけるとうれしいです。

見てくれたあなたに、幸せが訪れますように。

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