25.決着①
ロスカは慌てて距離を取る。
何か攻撃が来る。
警戒していたが、何もしてこない。
今までのスカルネの行動から考えると、攻撃してこないわけがないのに。
「死人のクセににににニにに、邪魔スルするスルスルナ!」
スカルネが喚いている。
足元もおぼつかない様子で、ふらふらと動き回っている。
まるで酔っ払いだ。
ロスカは迷った。
今が好機なのか、はたまた罠なのか。
そんなロスカの横に、兵士は並んで叫んだ。
「ラシル! 負けるな!」
その言葉で、余計にスカルネの背中の兵士の体が大きく崩れた。
今はもうただの黒い液体が、大きく波打っている。
ラシルとは一体誰なのか。
この兵士は、一体誰に声をかけているのか。
ロスカにはわからなかったが、そのラシルという存在がスカルネに苦しみを与えているのだけは理解していた。
散々暴れていた波が突然収まる。
一瞬の静寂。
かと思うと、今度はベイルの姿が背中に現れた。
思わずロスカは奥歯を噛みしめる。
「ニンゲン風情が……この僕に……」
ベイルの姿でぶつぶつと呪詛を吐いている。
下を向いていたベイルの視線が、ロスカに止まる。
するとまた、スカルネは固まった。
背中のベイルは呆けて、口を開けたままだ。
気味が悪かったが、レオスの教え通りロスカはベイルから眼を逸らさなかった。
そこから数瞬ののち、スカルネの体が動いたのをロスカは見逃さなかった。
前足だけが、ゆっくりゆっくりと上がっている。
後ろ足だけで立ち上がるように。
二足歩行にでもなるつもりだろうか。
「おい! ふざけるナ! 僕を誰だと思ってイル! 今すぐヤメロ!」
スカルネは大声で喚いている。
その言葉とは裏腹に、足はどんどん上がっていく。
もがく足の隙間から、スカルネの腹が見え始めた。
暴れているからか、スカルネの体ががくんがくんと揺れている。
今にも倒れてしまいそうだ。
それを封じるように、尻から糸が吐き出され、スカルネの体をぐるぐると拘束し始める。
背中には、ベイルと先ほどラシルと呼ばれた兵士が二人並んでいた。
憎しみのこもった眼で、スカルネのことを見下ろしている。
「あの魔物は、アブリスライムです。食べたものの力をそのまま自分のものにできる魔物です。かつて魔王との戦いで、勇者さまご一行も、苦戦を強いられた相手だったようです」
兵士がロスカに言った。
彼は既にこの状況を理解しているようで、落ち着き払った態度だ。
「私の双子の弟ラシルが今、魂となってもあの魔物の中で一緒に戦っています」
双子の弟と言う言葉で、ロスカは背中の兵士が別の人間の姿なのだと理解した。
そして、ラシルもベイルももう戻らない存在なのだということも、ロスカの心に重くのしかかった。
スカルネはもう足が使えないように糸で巻かれて、ロスカたちに腹を見せている。
まるで懐いた動物のようだ。
「さあ、とどめを」
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