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勇者の落としもの  作者: 永久福
第3章

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24.協力

 

 先ほどの風魔法で糸を解かれたレオスが、やれやれと言っている。


 あの風魔法は、わざとスカルネの体に当てて弾かせてからレオスの拘束を解くのが目的だった。


 もしもスカルネが感情を事細かに読めるのならば、この作戦もお見通しだっただろう。


 だが、それについてずっと理解できずに困惑していた。


 魔法でのやりとりでも、確かに魔法を発動する前に糸を出したりしていた。


 それでも、どの糸を切られるかまではわかっていないようだった。


 ロスカは、その違和感を見逃さなかった。


 転がったレオスはロスカの意図を汲み、その背中を防御魔法で吹き飛ばす。


 スカルネは腹を見せて転がっている。


 今しかない。


 ロスカは矢のように向かっていく。


 風切り音が鳴る。


 速く速く。


 スカルネは体勢を起こそうとしている。


 間に合え。


 ロスカは、剣を突きの形に構える。


 一瞬、ロスカとスカルネの目が合う。


 だが、スカルネの防御は間に合わず、腹にロスカの突きが入った。


 だがその時――


「そんな……」


 高い金属音がして、ロスカの剣が真っ二つに折れた。


 からん。


 そんな音を立てて、剣先が地面に落ちる。


 スカルネの腹には、小さなヒビが入っている。


 剣さえ問題がなければ倒せていたはずだった。


 今まで技術がないまま、オーガやスカルネとの戦闘で無理な使い方をしてしまった。


 そのツケが、今この瞬間に回ってきた。


 スカルネはロスカが地面に着地をする前に、蜘蛛の足で蹴り飛ばした。


 ロスカは受け身もとれず、吹き飛ばされる。


 何度が地面に叩き付けられ、レオスの元へと転がる。


 呼吸が苦しい。


 今の蹴りで、何本かの骨が折れたのがロスカにはわかった。


「ロスカ!」


 レオスの声が近いのに、遠い。


 ロスカは自分の意識が途切れそうなことに気付いた。


 まずい。


 気絶してはいけない。


「僕、本当に怒ったヨ。お前らは許さナイ。ギタギタに引き裂いて、ぶっ殺してヤル!」


 スカルネが怒りに満ちているのがわかる。


 立ち上がらないといけないのに、力が入らない。


 指先すらも動かせない。


 スカルネが近付いてくる。


 足音が聞こえる。


「ロスカ! しっかりしろ!」


 レオスの声が聞こえる。


 防御魔法で、スカルネがこちらに来るのを止めようとしている。


 そんなもので止められるわけない、ロスカはそう言いたかった。


 案の定、防御魔法は紙のように破られた。


 こんな時に、ロスカの視界は暗くなり始める。


 ここで死ぬのか。


 でもここでロスカが死ねば、レオスも無残に殺されることになるだろう。


 ロスカは痛む体を気力だけで起こした。


 視界もかすむ。


 スカルネはもう近くに来ている。


 だが、もう身を守るものは何もない。


 レオスがまた防御魔法で吹き飛ばそうとしているが、スカルネはあっさりと横に逸れてかわした。


「もう通用しないヨ。君たちはもうオワリダヨ」


 スカルネは無情にも言い放つ。その通りだ。


 なんとか立ち上がれたが、もう何も手立てはない。


 剣を失い、攻撃をすることも守ることもできない。


 ふとスカルネの背後に、何かが動くのをロスカは見た。


 人影だ。


 目を凝らすとそこには、ヨマ婆が治療した兵士がいた。


 岩壁に隠れている。


 スカルネはまだ気付いていない。


 ロスカは気付かれないように兵士を見る。


 左手に剣を持っている。


 あの剣を借りれば、まだ戦える。


 兵士は姿勢を低くして、ロスカの方に向かってきている。


 だが、スカルネはもう目の前にいる。


 このままでは間に合わない。


 スカルネは足を振り上げて、ロスカに振り下ろす。


 その瞬間、ロスカは前転して攻撃をかわす。


 そのまま、兵士の元へ向かった。


 左足は引きずっているので、走ることはできない。


「剣を!」


 ロスカは叫んだ。


 兵士は、きっとスカルネと戦うために来たのだろう。


 もしかしたら、自らの手で戦いたいと思っているかもしれない。


 だが、ロスカの叫びに彼は応えた。


 兵士は助走をつけてから、ロスカに剣を投げた。


 弧を描いて、ロスカの元へ近付いてくる。


 だがロスカに影が降りかかる。


 振り返ると、スカルネがまたロスカに足を振り上げている。


 咄嗟に右足に力をためて跳ぶ。


 すさまじい轟音が響き、砂埃と共にロスカは飛ばされた。


 地面に投げ出されるが、すぐに剣を探す。


 ズキズキと痛みがあるが、今はそんなことを気にしている場合ではない。


 もうもうと砂埃が舞う中、兵士の投げた剣はあった。


 真っ赤な剣のおかげで、見つけやすい。


 だが、手を伸ばしても、届かない距離にある。


 ロスカは大急ぎで転がっていくと、剣を掴んで構えた。


 次の攻撃が来ると身構えていたが、スカルネはある一点を見て固まっている。


 その視線を辿ると、そこには兵士が立っていた。


 スカルネの背中の兵士と瓜二つ。


 改めて見ると、スカルネは本当にこの兵士を精密に作り出している。


 まるで、そのまま本人が背中にいるかのようだ。


 これがただの芸術家であれば、ロスカは感動していたかもしれない。


 すると、スカルネの背中の兵士の輪郭がぐらぐらと揺らぎ始めた。



ここまで見てくださってありがとうございます。

楽しんでいただけますでしょうか?

もしよかったら感想などいただけるとうれしいです。

見てくれたあなたに、幸せが訪れますように。

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