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勇者の落としもの  作者: 永久福
第3章

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23.反撃

 

 スカルネの言葉に、ロスカは理不尽思いでいっぱいだった。


 ここまでの強さを持ちながら、卑怯と感じるような能力まで持っている。


 これでは勝ち目がない。


 足を怪我したロスカは、このまま魔法で攻めるしかない。


 ロスカが熟練の魔法使いであれば、スカルネを倒すことができたかもしれない。


 だが今のロスカは、魔力がもう残り少ない。


 魔法を使えるのは、あと三回ほどだろうか。


 この行動を繰り返していても、何の解決にもならない。


 考えろ。


 何か作戦を思いつけ。


 ロスカのは魔法を放ちながらも、必死に頭を働かせる。


 その時、ロスカは先ほどの動きに違和感を覚えた。


「随分考えてるネ~。時間引き延ばしたいトカ?」


 スカルネは、ロスカの出した土の棘に着地した。


 辺り一面に砂埃が舞う。


 強い風が吹いて、砂はすぐに消えた。


 そこには、無傷のスカルネが立っていた。


「そんなことさせないヨ。そもそもこんなテイゾクな魔法なんかで、僕を倒せると思ったノ?」


 もうスカルネの顔には、今までの笑顔はなかった。


 冷たい氷のような顔で、ロスカを見ている。


 かつての村人たちの姿と重なる。


 ロスカに興味のない目。


 ロスカの体が、石のように固まる。


 呼吸も速くなって、喉からはヒューヒューと音が鳴る。


「もう君に付き合うのはやめたヨ。何も楽しくナイ」


 スカルネは、ゆっくりゆっくりとロスカに近づいてくる。


 何かしなければならない。


 わかっていても、それは膜の向こうで騒いでいるような感覚だった。


 ロスカは、剣先の向こうのスカルネから目を離せない。


 このままでは、死んでしまう。


 また膜の向こうで自分が叫んでいる。


 頬に暖かいものが流れた。


 そっと触れてみると、それは涙だった。


 ロスカ自身にも、これは何の涙なのかわからなかった。


 足下に巨大な蜘蛛の影が現れる。


 もう目の前に来てしまったのか。


「おいしそうな感情ダネ。そんなに僕がコワイ?」


 そう言うと、ロスカの右肩にスカルネの足が突き刺さった。


 口から意図せず絶叫が放たれる。


 痛みが体中を駆け巡っていく。


「痛い? ねえ痛い?」


 ロスカは、そのままスカルネの足に持ち上げられた。


 肩の傷口に体重の全てが乗って、さらに激痛が襲ってくる。 


 その時、今までの記憶が頭の中に流れた。


 村での嫌な記憶ではない。


 レオスとの出会いや、厳しい修行。


 楽しい会話。フォスコとの三人旅。


 ヨマ婆の優しさ。


 十三年生きてきた内のたった一年。


 だがロスカにとって、この一年は、宝物だった。


 レオスとの旅が終われば、この思い出を胸に死のうと思っていた。


 だがロスカは、もう自分の気持ちに嘘がつけなくなっていた。


 死を目の前にして、やっと自分の本当の気持ちに気付くことができた。


 この楽しい日々を捨てたくない。


 まだ続けたい。


 まだ生きていたい。


 ロスカは気付いた。


 とてつもなく怖い。


 死ぬのが怖いということを。


 ロスカの瞳に、力が戻った。


 スカルネを力強く睨み付ける。


「あれ? まだ僕と戦うつもりナノ?」


 スカルネは、心底うんざりしたような口調で言った。


「さっきので十分理解シタデショ? 僕には勝てないヨ」


「人の感情がわかるんでしょ?」


 ロスカはスカルネに吊されながらも、気丈に振る舞った。


 本当は、痛みで冷や汗も止まらない。


 血を流しすぎて、寒気も止まらない。


「でもその能力、完全じゃないよね。精度が低いのかな? 私がどうしたいのかまではわかってないよね?」


「生意気言うネ。だけどそれがワカッタからって、今の君に何ができるノ?」


 スカルネの言葉の通りだった。


 わかったところで、ロスカがスカルネから逃れるわけではない。


 しかし状況は変わった。


 スカルネは、たくさんの弱点を教えてくれた。


 それならば――


「ヴェント・リーヴァ!」


 ロスカの呪文で、風の刃が一斉にスカルネに向かう。


 全てスカルネの体は弾かれて、あらぬ方向へと飛んでいく。


「ヴェント・リーヴァ! ヴェント・リーヴァ!」


 しかしロスカは止まらない。風の刃を無数に出す。


 それはスカルネの体に当たって、不規則に弾かれる。


 一つの風の刃は、弾かれてからロスカの頬と耳をかすめて血を流していた。


「何をしてるノ? それはさっき無理だってわかったデショ?」


 スカルネは明らかに困惑していた。


 普通なら、やけを起こしているとでも思っただろう。


 だが、スカルネには感情が読める。


 ロスカの心の火がまだ燃えていることに気付いている。


 そのせいで、この行動を不気味がっている。


 そしてスカルネのその発言で、先ほどのロスカの考えは確証に変わった。


「ほら。私が何を考えているのか、わかってない」


 ロスカの顔ににやりと不適な笑みが浮かぶ。


 すると、ロスカとスカルネの間に防御魔法が現れた。


 大きな防御魔法は、ロスカの方もスカルネの方も向いていない。


 全く別の方向を守っている。


「は? コレ何の意味ガ……」


 それは一瞬のことだった。


 スカルネの顔が防御魔法の青い光で照らされた瞬間、体が吹っ飛んだ。


 岩肌に激突し、地面に崩れ落ちる。


 ダメージはなさそうだが、体勢は崩せている。


 防御魔法は、発動すると中心から順番に鋼鉄のように固くなる。


 元のスカルネのいた位置に防御魔法を発動すれば、そのまま押し出される。


 そして、そんなことができるのは――


「レオス!」


「人遣いの荒い弟子だぜ」


ここまで見てくださってありがとうございます。

楽しんでいただけますでしょうか?

もしよかったら感想などいただけるとうれしいです。

見てくれたあなたに、幸せが訪れますように。

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