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勇者の落としもの  作者: 永久福
第3章

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18.奥の手②

 

 ロスカは剣を構えて、地面に限りなく近くなるよう姿勢を低くした。


 スピード勝負だ。


 そのまま足に力を込めて突進。


 それを見て、すかざす赤いオーガが前に出た。


 首に向かって跳躍し、横一文字に振りぬく。


 ガキィン!


 まるで鋼鉄に当たったような音がして、剣が止まる。


 やはりどこを狙っても、剣は通らない。


 オーガもそれは理解しているようで、防いだりもしない。


 そこが好機だった。


 剣の表面には魔力を籠めてある。


 魔力の量にもよるが、今回のようにマグマを剣に通さないこともできる。


 ただ熱だけは、魔力に残る。


 オーガの首に当たった剣は、マグマの熱が残っている。


「ガアアアアア!」


 オーガの絶叫が響き渡る。


 そして、オーガの力が抜ける。


 剣はそのままオーガの首を斬り落とした。


 これで一対一になった。


 ヨマ婆の作戦は通用した。


 剣には強くても、熱さには弱い。


 ロスカはまた褐色のオーガと距離をとる。


 だが、褐色のオーガは赤いオーガに向かっていた。


 信じられないのか、数秒の間じっと首のない遺体を眺めている。


 これは不意打ちだから通じた作戦だ。


 それに、こうしている間にも熱は下がってしまう。


 またマグマに剣をつけようにも、それをオーガは許さないだろう。


 ここからが真の戦いだ。


 オーガはロスカを見た。


 その瞳は、怒りに満ちていた。


 もう今までのようなロスカを下に見た戦闘はしてくれないだろう。


 お互いにらみ合いが続く。


 一瞬も気を抜くことは許されない。


 口の中がカラカラに乾いている。


 ふうと一つ息を吐いた時、オーガが動いた。


 一瞬のうちに、オーガの蹴りがやってくる。


 その蹴りをロスカは、避けることなく剣で受けた。


 勢いを殺しきれず、ロスカはそのまま真横に吹き飛ばされる。


「ヴェント・リーヴァ!」


 ロスカが呪文を唱えると、複数の風の刃がオーガを襲った。


 だが、初級の魔法では歯が立たない。


 両腕と足に命中したが、何のダメージもないようだ。


 ロスカの顔に思わず笑みが浮かぶ。


 あまりにも実力が違いすぎる。


 もう笑うしかないのだ。


「あああああああ!」


 ロスカは気合の声を出して、斬りかかる。


 しかし、オーガはそのまま攻撃を体で受けず、全てをかわしている。


 そしてオーガは、最後には距離を取った。


 先ほどの攻撃で、剣を警戒しているようだ。


「まずいなぁ……」


 思わず声が漏れる。


 ヨマ婆から教わったのは、全部で二つ。


 可能なら熱さで不意をつき、一撃で仕留める。


 もしそれが無理なら、筋肉のない関節を狙って攻撃する。


 一撃で剣が入らなくても、何度も同じ場所を攻撃すればダメージは入る。


 そういう考えで動いていたのだ。


 だが相手はロスカを侮らなくなった。


 ただでさえ隙のない敵に、同じ個所に何度も攻撃を当てるのは至難の業だ。


 だが、どうにかしてこの作戦を遂行するしかない。


 ロスカは、またオーガに向かって行く。


 またオーガはロスカの攻撃をかわしていき、どんどん後ろに下がっていく。


 そのまま下がり続ければ、マグマの川に落ちる。


 オーガもそれには気付いていて、一度ロスカが吹き飛ぶような蹴りを繰り出した。


 ……これもだめだ。


 だがそこで足を止めずに、ロスカはまたオーガに攻撃をしかけた。


 今まで様子を見ていたオーガは、今度は避けるだけでなく攻撃も織り交ぜてきた。


 ロスカはどんどん押されてしまう。


「リゼル・テラ!」


 オーガの足元から、複数の鋭い岩が突き刺そうと現れる。


 全ての岩は先が折れて、オーガの体には貫通しない。


 だが、足を止めることには成功した。


 ロスカは、右手の肘を狙う。


 一度風魔法が命中したものの、やはりこの一撃では斬り落とすことはできない。


 だが、そこには一筋の血が流れていた。


 それを見たオーガは、ロスカをギロリと睨んだ。


「グオオオオオオ!」


 地の底を這うような雄たけびを上げるオーガ。


 そしてオーガはロスカの剣ごと殴った。


 ロスカは確実に防いだが、今までとは比べ物にならない威力だ。


 そのまま体ごと吹っ飛び、固い岩肌に背中をぶつけた。


 これでは以前と全く同じだ。


 すぐには動けそうにない。


 座り込んだロスカに、今回オーガは近寄ってくる。


 そして、右腕を振り上げた。


 ロスカは、赤土をオーガに投げつける。


 目に入り、オーガは片手で目を抑えた。


 痛みで震える体を無理やり起こし、オーガの右腕を狙う。


 一撃。


 その時、やっとオーガの右腕が吹き飛んだ。


 オーガの低いうめき声が聞こえる。


 その時、オーガの上空に黒い雲が渦巻き始めた。


 それを見たオーガの顔が恐怖に歪む。


 その黒い渦から、蜘蛛のような一本の腕が現れた。


 腕だけでオーガよりも大きい。


 何が起こったのか。


 ロスカにはただ見ていることしかできなかった。


 オーガは腕を見て、今までの戦いからは想像できないような怯えたように後退った。


 そして、背中を向けて走り出す。


 ロスカが一度は負けたあのオーガが、戦ってもいないのに敗走している。


 しかし、腕はそれを許してはくれない。


 紙のようにオーガの胸を貫いた。


 腕からはぽたぽたと血が滴る。


 ロスカの肌が粟だった。


 これは、自分には手に負えるものではない。


 一刻も早く気付かれないように、逃げるしかない。


ここまで読んでくださって、ありがとうございました。

もしよかったら、感想などよろしくお願いいたします。

みなさんに幸せが訪れますように。

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