17.奥の手①
オルダナ火山。
魔物自体は元々出現するが、観光名所として有名な場所だった。
頂上から見る景色と、あちこちで流れるマグマが見どころだ。
空気が暑いので、登山するには水の魔法が使えることが条件となる。
火山の足元には、古書を主に取り扱う図書館がある。
今やそこは、魔物の巣窟になっていた。
図書館の門は破壊され、魔物は自由に楽しんでいる。
ロスカは遠くからその光景を見て、自分の奥底から炎が湧き上がるのを感じた。
レオスが目的としていたオルダナ図書館。
あともう少しで、自分の目的が叶いそうなところでこの魔物たちが邪魔をした。
ロスカは剣の柄を強く強く握りしめた。
だが兵士の話では、魔物の数は五十以上だ。
ここでそんな魔物を相手にしては、レオスのところに行くのが遅くなってしまう。
ロスカは歯を食いしばってこの場を離れた。自分の無力さに腹が立つ。
オルダナ火山の整備された道は、魔物たちも使っている。
その道を通れば、確実になにかしらの敵と戦うことになるだろう。
だがヨマ婆は、もう一本の街の人間しか知らない道を教えてくれた。
整備されてはいないので、体力は必要になる。しかし他に選択肢はない。
ロスカは険しい赤土の山道を登り始めた。
暑い。ロスカの顔を汗が流れていく。
本来は、水の魔法を使って登山するような山だ。
しかし、この後に戦闘が控えていることを考えると、魔力を消費するわけにはいかない。
これでは、何度も戦闘はしていられなかっただろう。
ロスカは、褐色のマントに感謝した。
この火山は、はげ山だ。
下から見て、魔物からばれたりでもしたら、もう逃げ場はないだろう。
ヨマ婆がそう言って、ベイルのマントを貸してくれた。
あげるのではなく、貸すのだから必ず帰ってこいという言葉とともに。
だがそんな心配も無駄だったのか、あっという間に山の中腹にたどり着いてしまった。
ここには、山頂から流れるマグマの大きな川がある。
この川を渡るには、水の魔法が必須になる。
「アクア・リズ」
ロスカが呪文を唱えると、空中に水滴が現れ始めた。
そしてそれが一つにまとまると、ロスカ一人を包み込めそうな大きさの水の塊へと変わった。
ロスカは恐る恐るその水の塊へと足を入れる。
冷たい。
息を止めて水の塊にすっぽり収まると、ふわふわと移動を始めた。
マグマの上空は、人の見では耐えられないほどに熱い。
そのため、ここは水の防御をはりながら進むしかない。
ゆっくりゆっくりとマグマの上を水の塊が漂っている。
その間、水の塊の中で表面の水がシュウシュウと音を立てて蒸発していく。
ここで焦って魔法のコントロールを失えば、マグマの川に沈んでしまう。
何とか渡り終えたロスカは、水の塊から頭を出して新鮮な空気を吸った。
「ヨマ婆の言ってた方法、やっておこうかな」
ロスカは水の塊の中に頭も入れると、剣に魔力を籠める。
物に魔力を籠めるのは、先ほどヨマ婆に教わったばかりのことだ。
うまくできるか不安になりつつも、そっと剣をマグマにつける。
うまくいかなければ、ここで剣は溶けてしまう。
そうなればここまでの道のりは、全て水の泡だ。
剣を引き上げると、しっかりと形を保ったままだった。
ほっと胸をなでおろす。
その時、ロスカの胸に嫌な予感がした。
咄嗟に後方へ飛びのく。
するとそこに、褐色のオーガが轟音を立てて現れた。
そのあとから赤いオーガも現れる。
あの時のオーガたちだ。
どうしてここにいることがわかったのだろう。
ロスカは、苦虫をかみつぶしたような顔をした。
オーガ二体を相手にロスカ一人だ。
ロスカには二体を相手取って戦う自信はなかった。
だからといって、ただ逃げるわけにもいかない。
一刻も早く一対一に持ち込むしかない。
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