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勇者の落としもの  作者: 永久福
第3章

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17.奥の手①

 オルダナ火山。


 魔物自体は元々出現するが、観光名所として有名な場所だった。


 頂上から見る景色と、あちこちで流れるマグマが見どころだ。


 空気が暑いので、登山するには水の魔法が使えることが条件となる。


 火山の足元には、古書を主に取り扱う図書館がある。


 今やそこは、魔物の巣窟になっていた。


 図書館の門は破壊され、魔物は自由に楽しんでいる。


 ロスカは遠くからその光景を見て、自分の奥底から炎が湧き上がるのを感じた。


 レオスが目的としていたオルダナ図書館。


 あともう少しで、自分の目的が叶いそうなところでこの魔物たちが邪魔をした。


 ロスカは剣の柄を強く強く握りしめた。


 だが兵士の話では、魔物の数は五十以上だ。


 ここでそんな魔物を相手にしては、レオスのところに行くのが遅くなってしまう。


 ロスカは歯を食いしばってこの場を離れた。自分の無力さに腹が立つ。


 オルダナ火山の整備された道は、魔物たちも使っている。


 その道を通れば、確実になにかしらの敵と戦うことになるだろう。


 だがヨマ婆は、もう一本の街の人間しか知らない道を教えてくれた。


 整備されてはいないので、体力は必要になる。しかし他に選択肢はない。


 ロスカは険しい赤土の山道を登り始めた。


 暑い。ロスカの顔を汗が流れていく。


 本来は、水の魔法を使って登山するような山だ。


 しかし、この後に戦闘が控えていることを考えると、魔力を消費するわけにはいかない。


 これでは、何度も戦闘はしていられなかっただろう。


 ロスカは、褐色のマントに感謝した。


 この火山は、はげ山だ。


 下から見て、魔物からばれたりでもしたら、もう逃げ場はないだろう。


 ヨマ婆がそう言って、ベイルのマントを貸してくれた。


 あげるのではなく、貸すのだから必ず帰ってこいという言葉とともに。


 だがそんな心配も無駄だったのか、あっという間に山の中腹にたどり着いてしまった。


 ここには、山頂から流れるマグマの大きな川がある。


 この川を渡るには、水の魔法が必須になる。


「アクア・リズ」


 ロスカが呪文を唱えると、空中に水滴が現れ始めた。


 そしてそれが一つにまとまると、ロスカ一人を包み込めそうな大きさの水の塊へと変わった。


 ロスカは恐る恐るその水の塊へと足を入れる。


 冷たい。


 息を止めて水の塊にすっぽり収まると、ふわふわと移動を始めた。


 マグマの上空は、人の見では耐えられないほどに熱い。


 そのため、ここは水の防御をはりながら進むしかない。


 ゆっくりゆっくりとマグマの上を水の塊が漂っている。


 その間、水の塊の中で表面の水がシュウシュウと音を立てて蒸発していく。


 ここで焦って魔法のコントロールを失えば、マグマの川に沈んでしまう。


 何とか渡り終えたロスカは、水の塊から頭を出して新鮮な空気を吸った。


「ヨマ婆の言ってた方法、やっておこうかな」


 ロスカは水の塊の中に頭も入れると、剣に魔力を籠める。


 物に魔力を籠めるのは、先ほどヨマ婆に教わったばかりのことだ。


 うまくできるか不安になりつつも、そっと剣をマグマにつける。


 うまくいかなければ、ここで剣は溶けてしまう。


 そうなればここまでの道のりは、全て水の泡だ。


 剣を引き上げると、しっかりと形を保ったままだった。


 ほっと胸をなでおろす。


 その時、ロスカの胸に嫌な予感がした。


 咄嗟に後方へ飛びのく。


 するとそこに、褐色のオーガが轟音を立てて現れた。


 そのあとから赤いオーガも現れる。


 あの時のオーガたちだ。


 どうしてここにいることがわかったのだろう。


 ロスカは、苦虫をかみつぶしたような顔をした。


 オーガ二体を相手にロスカ一人だ。


 ロスカには二体を相手取って戦う自信はなかった。


 だからといって、ただ逃げるわけにもいかない。


 一刻も早く一対一に持ち込むしかない。


ここまで読んでくださって、ありがとうございます。

もしよかったら、感想などよろしくお願いいたします。

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